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第205話 逃げろ〜!

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

『残念ですが、これはショーでも訓練でもありません。私どもは黒き殉教者。皆さんは人質です』

 UCダンガムの外部スピーカーから、男の冷たい声が東京ビッグサイトの入口前広場に響いた。

「遠野先輩、ひとじちって何ですかぁ?」

「それはね愛理ちゃん、したち、」

「ひかり!」

「ほえ?」

「人間の尊厳!」

「てへぺろ」

 意味が分からなくても、奈々のそのセリフで自分が何かマズいことを言いかけたのだと気づくひかりであった。

「泉崎さん」

 その時、奈央が小声で奈々を呼んだ。

「分かってる。ひかり、こっそり逃げる準備をして」

「へ?」

「いいから、私と奈央が飛び出したら、一緒に走るのよ、分かった?」

「愛理ちゃんもですわよ」

 首をかしげるひかりと愛理だったが、奈々と奈央の真剣な表情に無言でうなづいた。


 UCダンガムはビームライフル射撃のために、初代ダンガムの一歩前に出ていた。ロボットに死角は無い。なぜなら、機体の四方どころか上下に至る360度全てに向けて、何台ものカメラが向いているからだ。だが、パイロットは人間である。その全てに同時に注意を向けることは不可能だ。今UCは、周りの来場客にライフルを見せることで威嚇している。恐らく斜め後方に位置する初代への注意はおろそかになっているに違いない。今こそがチャンスなのだ。

「棚倉くん、今や!」

「了解!」

 正雄は左右の操縦レバーをグッと前に移動させる。右は左の倍ほどに押し込む。それと同時に、右のペダルを思い切り踏み込んだ。その司令通り、初代ダンガムは体を左にひねりながら右足を前に出す。そして操縦レバーの握り部分の操作で、UCダンガムに掴みかかった。

 ガコン!

 轟音を響かせて初代ダンガムが、UCが右腕に持っているライフルにしがみつく。

『な、なに?!』

 意表を突かれたのか、クールだった男の声が驚きに変わった。

「今よひかり、全力で走って!」

 奈々がひかりの手を取り、会場内へ走り出す。

 同時に奈央も、愛理と共にダッシュだ。

 それが合図たった。玄関前の来場客たちが、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。

 だが、UCはそれにかまっている余裕は無かった。初代がビームライフルを奪おうと、それにしがみついたまま暴れているのだ。

「棚倉くん!暴走みたいに暴れとるやん!」

「いざとなったら格好なんて気にしないのさ!てやぁぁぁっ!」

 左手でUCのライフルを掴み、右の手刀をUCの手首に思い切り叩きこむ。

 ガイ〜ン!

 よし!ライフルを奪い取った!

 正雄は数歩分を後方にジャンプ、着地と同時にライフルを構える。その動作の間じゅう、両津はビームライフルの照準をUCの胸辺り、コクピットの位置からズレないように調整し続けていた。

「撃ってー!」

 両津の叫びに正雄が操縦レバーのトリガーを絞る。

 ズガガガガ!

 連射だ。多数の模擬弾がUCを襲う。

 両腕をコクピット前にクロスさせるUC。

 ガインガインガイン!

 腕に当たり、はじき飛ばされる模擬弾。

 もちろんそれでUCを破壊することはできない。だがその強烈な衝撃に、UCは数歩あとずさった。

「よし!棚倉キ〜ック!」

 正雄自慢の必殺技だ。

 初代はヒザのバネを使って空中に飛翔、UCめがけて飛び蹴りをくらわそうとする。

「え?」

 両津が間の抜けた声を上げた。

 キックが炸裂する寸前だったUCが、スクリーンから消えたのだ。

 空振りしてズン!と着地する初代ダンガム。

 何が起こった?

「後ろよ!」

 初代のコクピットに、索敵役の心音の声が響いた。

 正雄も両津も、とっさに自分の前面ディスプレイにワイプで表示されている後方カメラの映像に目をやった。

「なんで後ろにいるんや?!」

「こいつ、忍者スレイヤーさんか?!」

 両津と正雄がそう思った瞬間、UCの前蹴りが初代の背中を襲った。前蹴りは、相手の腹の位置に対してつま先を突き刺すように蹴る蹴り技だ。それをまともにくらい、初代は前のめりに吹っ飛んだ。だが、ロホット運動神経バツグンの正雄である。数回の前転の後にすっくと立ち上がり、腰を低くしてUCに向かって構えた。

「やるじゃねぇか、ベイビー」

 正雄の顔に、不敵な笑いが浮かぶ。

『なかなかの身のこなしですね。いったいどなたでしょう?』

 男の声が問いかける。

 正雄は外部スピーカーをオンにした。

「俺は棚倉正雄、ミネソタからやって来たカウボーイさ!」

『ほう』

「俺のことは、ジョニーと呼んでくれ」

『棚倉正雄ではないのですか?』

「それはあだ名だ!」

『あだ名はカウボーイなのでは?』

「それは本名さ!」

『それはジョニーなのでは?』

「ジョニーはマイトガイさ!」

「あー!その会話、ややこしくて頭おかしなるわ!」

 初代のコクピットで両津が叫び声を上げた。心音と大和も、目がぐるぐるしている。

『結局あなたは誰なのです?』

「細かいことを気にしていたら、大きな人物にはなれないゼ」

『まぁ、別に大きな人物になんてなりたくもありませんが』

 UCが、器用にも肩をすくめる動作を見せた。

『いいでしょう。では、わたくしが本気でお相手してさしあげましょう』

 それまで静かでクールだった男の声が、邪悪な笑みを含んだものに変わった。

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