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第201話 ダンガム、動く

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

『皆さま、お待たせいたしました!』

 東京ビッグサイトの正面広場に、女性のはじけた声が響いた。

 イベントロゴの旗がひらめく金属ポールに取り付けられた、大きなスピーカーからの音声だ。その元気な声に、広場でのどかに過ごしていた鳩の群れが一斉に飛び立った。晴れ渡る澄み切った青空に飛ぶそれは、さながら平和の象徴のようだ。

『只今より、今年のロボットショーのシンボル、実物大ダンガムによる運転デモンストレーションを行ないます!』

 スピーカーから流れるファンファーレ。

 来場者たちから、大きな拍手が巻き起こる。

「間に合ったぜ!」

 多くの観客の輪の一番外側に、ひかりたちがどうにかたどり着いていた。

「棚倉くん、先に時間言うてくれんとアカンやん」

「すまねぇ、新型を見るのに夢中で、すっかり忘れていたのさ、ベイビー」

「まぁいいじゃない。間に合ったんだし」

 奈々の言葉に、全員がうなづいた。

 皆の目の前に、三機の巨大なロボットが立っている。

 アニメで大人気の、ダンガム、ユニコーンダンガム、Vダンガムの実物大モデルだ。

 うららかな春の日差しが、ボディの金属部分にキラキラと反射している。

「奈々ちゃん、カッチョイイよ〜!」

「そうね。アニメのまんまね」

 ひかりも奈々も興奮気味だ。

 ひかりはぴょんびょんしており、奈々は腕組みをしてうなっている。

「よくここまで正確に再現できましたわね」

「すごいですぅ〜」

 奈央も愛理も、オタク眼をキラキラさせている。

「マリエちゃんの故郷でも、ダンガムは見れたの?」

 ひかりが視線を、巨大なロボットからマリエに下ろした。

「うん。あっちでも大人気だよ」

「うへ〜、やっぱりダンガムってすごいんだね」

「おい!動くで!」

 両津の声に、ダンガムに目を戻すひかり。

 真ん中に立つユニコーンダンガムの右腕が、ゆっくりと上がって行く。その手には、ビームライフルがしっかりと握られている。

 観客から口々に『おお!』のような声が上がった。

「すごいですわ。肘や肩の関節も、アニメとほとんど変わりませんわ」

「感激ですぅ」

「まるで巨大なプラモだぜ、興奮するぜベイビー!」

 ユニコーンダンガムはまるで何かに狙いをつけるように、ビームライフルを握った右腕をまっすぐ水平に伸ばした。

『只今からご覧にいれますのは、ビームライフルによる射撃です!』

 こんな所で銃を撃つ?

 観客の間から、少し不安そうな声が響く。

『ご心配には及びません。もちろんビームは出ませんし、込められているのは実弾ではなく模擬弾です』

 アニメやSF映画では当たり前のように登場するビーム兵器だが、いまだ実用化はされていない。もちろん研究室レベルでは成功しているが、実戦で使うまでにはまだ数年が必要だと言える。

『そして、ダンガムが狙うのは……会議棟屋上のあの的です!』

 皆の視線が会議棟へ向く。その屋上には弓道の的のような看板が掲げられていた。

「奈々ちゃん、あれ縁日で見たことある!」

「縁日?」

「うん、パーンて撃って、ポーンて景品に当たって、ドーンて棚から落ちるやつ」

「ああ、射的ね」

「そう!そのテキ!」

「でもひかり、景品に当てたことないでしょ」

「てへへ〜」

「大和はよく景品取ってくれるよ」

 心音がちょっと自慢そうに胸を張る。

「取らないと、後でうるさいからね」

「うるさくなんかないわよ!」

「あのクマしゃん欲しかったなぁ、とか3日ぐらい言ってたよね?」

 大和がフフッと笑う。心音の頬が赤くなった。

「アッチッチですぅ」

「ココちゃんもクマしゃん好きなの?!」

 ひかりが勢いよく心音に詰め寄った。

 驚いた心音が一歩退き、左右の三つ編みが大きく揺れた。

「え、ええ」

「私もクマしゃん大好きなの!クマしゃん同盟だね!」

「どんな同盟よ」

 奈々が笑顔でそう言った。

「私、ウサギさんが好き」

「マリエちゃん、私ウサギしゃんも大好きだよ!」

「じゃあひかりと私、ウサしゃん同盟」

 ダンガム見に来て何の話や?

 両津は心中でニヤニヤしていた。

『ではUCダンガムさん、お願いします!』

 女性司会者の声をきっかけに、UCダンガムは会議棟屋上の的にビームライフルを向ける。だが、UCダンガムは突然きびすを返すと、ライフルの狙いを変えて連射した。

 ズガガガガ!

 轟音を響かせて金属ポールのスピーカーに命中、それを粉々に破壊した。

 途切れる女性司会者の声。

 ぷしゅ〜、っとライフルから排気音が聞こえた。

 模擬弾と言えど、硬質プラスチックの弾丸は射出速度によってはかなりの破壊力を発揮する。それを連射で命中させられたのだ。装甲板の無いただのスピーカーが粉々になるのも当然だ。

 何が起こったのか分からず、立ち尽くす観客たち。この場を、数秒の沈黙が支配する。

 構えていたライフルを下ろし、観客に向き直るUCダンガム。

 キーンと、ハウリングのようなノイズが広場に響いた。

『お騒がせして申し訳ありません』

 UCダンガムの外部スピーカーから男の声がした。

『皆さん、その場を動かないでください。少しでも動かれると、このライフルで撃たせていただきます』

 皆の間にざわめきが広がる。

 これ、ショーの一部じゃないの?

 ドッキリじゃない?

 避難訓練とか?

「これきっと楽しいショーやで。多分もうすぐ、隣の初代ダンガムかVダンガムが動いて、UCをやっつけるってヤツや!」

「それにしても、あのスピーカー完全に破壊されましたわ?」

 奈央の指摘に両津が首をひねる。

「まさか……これって、テロだったりしない?」

 奈々の言葉に、ロボット部一同が息を呑んだ。

『残念ですが、これはショーでも訓練でもありません』

 UCダンガムのスピーカーから、大きなため息が聞こえた。

『私どもは黒き殉教者。皆さんは人質です』

 広場に、男の冷たい声が響いた。

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