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第197話 東京ロボットショー

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

 春である。

 東京ビッグサイトの庭園には、いくつかの桜並木が整備されている。

 シンボルプロムナード公園内の花の広場。そして有明イーストプロムナード広場は、最寄り駅から東京ビッグサイトまで、一直線に繋がる桜並木である。

 ひと晩の雨を経験したとはいえ、力強く咲く桃色の花たちは、まだまだ満開と言ってもいい美しさを見せていた。同時に、散り落ちた花びらがピンク色の雪のように地面を染めている。視界のほとんどが淡いピンクで、まるで夢の中を歩いているようだ。

「桜モチ食べたいなぁ」

「うんうん」

 気の抜けた感想を漏らしたひかりに、マリエが全力でうなづいている。

 今日は都営第6ロボット教習所の校外学習だ。生徒全員で、東京ロボットショーへ向かっている最中である。引率は南郷教官だ。

「みんな、ちゃんと追いて来るんやで!迷子になっても知らんど!」

「ボクら、そこまで子供やないんやけどなぁ」

 両津の苦言に、正雄がニヤリと笑った。

「でも遠野くんとか、迷子になりそうだと思わないかい?ベイビー」

「それ、言えてますわね」

 奈央の言葉に、皆が笑顔になる。

「ならないよ〜」

 ひかりの否定は、誰の耳にも届いていない。皆はしゃいでいるのだ。

 今回ひかりたちは、東京湾のド真ん中にある教習所から、チャーター船に乗ってやって来た。着いたのは東京港の有明客船ターミナルだ。海上バスにより、日の出桟橋と臨海副都心を結ぶ輸送システムの基地とも言えるこの場所は、東京ビッグサイトに隣接している。船を降りてたったの5分ほどで展示場にたどり着く、最高に便利な移動手段なのだ。

「宇奈月先輩!あれすごいですぅ!」

「本物を見るのは、わたくしも初めてですわ!」

 興奮のあまり、愛理と奈央の声がはずんでいる。

 今まさに見えて来たのは、ロボットショーのシンボルとも言える巨大な立像だ。ビッグサイトの入り口で、来場者を迎えている。

 実物大ダンガム、ユニコーンダンガム、Vダンガムの三機の勇姿が、舞い散る桜吹雪の中に映えていた。

「僕も生で見たんは初めてや!」

「HeTubeの動画は見まくったが、これがモノホンなんだな!ベイビー!」

 両津と正雄も興奮気味だ。

「ダンガムって何味なのかなぁ?」

「そのガムじゃないわよ!」

 ひかりと奈々は通常運転である。

「あれって動くの?」

「どうだろ、アニメを正確に再現した立像なんじゃないかな?」

 心音と大和は、首をかしげている。

 そんな二人に、奈央がオタクらしい早口で勢いよく答えた。

「いいえ、動きますわ!しかもすごいのは、ちゃんと操縦できるってことですわ!」

「すごいですぅ!」

 この三体のダンガムは、大型乗用ロボットのシャーシを利用し、外部装甲の工夫によってアニメでの姿を再現している。ある意味「本物」と言ってもいい代物だ。

「いつか操縦してみたいですわ」

 そうこう言っているうちに、ひかりたちはダンガム像のすぐ足元までたどり着いていた。約20メートルを超える三機を下から見上げると、予想以上に大迫力だ。通常の普通車型乗用ロボットの倍近い高さがある。

「ダンガムもええけど、会場には新型やコンセプトモデルとか、山ほどロボットが展示されとる。早よ行くで〜」

「は〜い!」

 一同元気に入り口へと向かう。

 東京ビッグサイトは愛称である。正式な名称は東京国際展示場だ。晴海にあった東京国際見本市会場の後継として、1996年にオープンした。会議棟、東展示棟、西展示棟からなる複合施設で、ピラミッドを逆さにしたような会議棟のデザインは、ひと目でそれをビッグサイトだと認識させる。年間約1,400万人が訪れる日本最大の展示場で「JAPAN MOBILITY SHOW」や「コミックマーケット」が開催される場所として有名である。

「私、ビッグサイトに来たの初めてだよ」

「ひかりも? 私も初めてよ」

「私も」

 ひかり、奈々、マリエ、初体験の三人はそのドキドキが伝わってくるような、はずんだ声で会話している。

「宇奈月先輩は、ビッグサイトに来たことありますかぁ?」

「もちろんです!」

 愛理の問いに、奈央がまた勢いよく答えた。

「毎年二回、夏と冬に来てますわ」

「もしかして……コミケですかぁ?!」

「正解ですわ。この場所こそ、わたくしたちオタクの聖地なのですわ!」

 奈々に比べれば少しはある胸を自慢気に張る奈央。

 愛理は羨ましいような、崇拝するような目を奈央に向けている。

「コミケってなぁに?」

「アムステルダムから来たばかりのマリエちゃんは知らないかもね」

 マリエのつぶやきに奈々が視線を向けた。

「それはねマリエちゃん、こうやってはさむんだよ」

 そう言ってひかりが、右耳の後ろに右の手のひらを当てた。

「えーと……それは小耳!分かりにくいわ!」

「バチボコであれ!」

「三四郎の小宮さん!」

「ごろにゃ〜ん」

「それはミケ!」

「コミックマーケット、略してコミケですわ」

「私も行ってみたいですぅ」

 そんな会話を繰り広げているうちに、一同はビッグサイトの入り口に到着した。

「さぁ、いよいよ入場やで!心の準備はええか?!」

「は〜い!」

 ついに、東京ロボットショーに突入である。

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