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第196話 校外学習

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

「それで、どんなことを聞き出せたんだ?」

 白谷の問いに、後藤が肩をすくめる。

 大柄で筋肉質の彼は、肩をすくめるだけでも迫力がある。

「あいつら末端すぎて、大したことは知らねぇみたいだ」

 誘拐未遂の容疑者三人の尋問を終え、後藤と花巻はトクボ部の会議室に戻っていた。

 後藤はいつも通りのひょうひょうとした態度。花巻も普段と変わらない表情だ。

「そうですね。分かったのは、彼らがマトハルの信者であることぐらいです」

 花巻が後藤の言葉に追加する。

「マトハルと言うことは、やはり黒き殉教者のメンバーってことですか?」

 夕梨花が花巻に視線を向ける。

「まぁ、メンバーとさえ言えない下っ端、てところです」

 今度は花巻が肩をすくめた。

 夕梨花にとってマトハル教の印象は、先日の奥多摩事案で目撃した信者たちの行動だ。乱暴だが結束力は強く、信仰心も厚い。あのスーツ男に注がれる眼差しは、まさに神を見る目だった。おそらく、彼らの口は固いに違いない。

「どうやって口を割らせたの? ゴッド、まさか乱暴なことしてないわよね?」

 ここは日本警察の建物内だ。機動隊の、しかもトクボ部の一室で尋問という名の拷問が行なわれたとしたら大問題である。

 夕梨花の責めるような視線に、ゴッドがやれやれと言った風にまた肩をすくめた。

「人聞きの悪い事言うねぇ、お嬢ちゃん。俺ぁなんにもしてねぇよ。あいつら、俺がアラビア何とかの名前を出したらもう、ペラペラとしゃべりやがったぜ」

「アヴァターラです」

 花巻が訂正した。

 またあの男か。

 夕梨花の中で、煮えたぎるような思いが蘇る。スーツ男は奥多摩で、夕梨花との戦闘を捨てて逃げ去ったのだ。夕梨花の心に残ったのは、仮面を貼り付けたような薄笑いだけである。

「ゴッドさん、いいかげん覚えましょうよ」

 花巻が苦笑する。

「アラビア何とかをか? あんなやつ、パスタで十分だぜ」

 アヴァターラはサンスクリット語で「降下」を意味する言葉で「神が地上に降りること、この世に現れること」を表わす。特にヒンドゥー教の神であるヴィシュヌがこの世でとるさまざまな姿、すなわち「化身」という意味で用いられることが多い。実はヴィシュヌの化身9番目には「ブッダ」の名も挙げられている。仏教の開祖であるブッダをヴィシュヌのアヴァターラとみなすことで、仏教をヒンドゥー教の中に取り込んでしまおうというわけだ。仏教の側からの反発は免れないところだが、当の仏教も、梵天や帝釈天などのように、ヒンドゥーの神を仏教側の庇護者として取り込んでしまっているので、お互い様なのかもしれない。

「なんだけどよぉ、ちょっと気なることがあるんだよなぁ」

 後藤がトボケた口調でそう言った。

「マトハルと言えば、あいつら忍者じゃねぇかよ。でも、聞いた所じゃあの三人はそんな体術は使わなかったんだろ?」

「そうだ。生徒たちだけで撃退したと言うから間違いないだろう」

 白谷がうなづいた。

 奥多摩のアジトで出会った時、スーツ男はこう言った。

『マトハルは昔、忍者の隠れ里だったのです』

 そしてスーツ男本人も、彼に付き従う巫女たちも、まるで忍者の如き体術で夕梨花と後藤を翻弄した。あの身のこなしや短刀の使い方、手裏剣などから、それがウソであるとは一概に言えないのが事実である。

「それは……よっぽど末端に過ぎない、ということか?」

「多分そうかもなぁ」

 夕梨花の問いに、後藤が苦笑する。

「現在公安が、彼らの身元から身辺調査を始めています。何か出れば連絡を入れさせていただきます」

「よろしく頼む」

 白谷の言葉に、花巻がうなづいた。


「明日はいよいよ楽しい校外学習や!」

 南郷の声がひかりたちの教室に響いた。

「名付けて、第一回チキチキロボットバトルロイヤル飛んで走って底抜け脱線栄光のゴールへまっしぐら〜校外学習じゃー!」

 センセ、その名前好きやなぁ。

 両津は呆れ顔だ。

「遠足!遠足!」

「ひかり、遠足じゃなくて社会科見学よ」

 奈々の突っ込みはある意味正しいが、正解ではない。

 社会見学、現地学習とも言われる社会科見学は、簡単に言うと学校が主催する校外活動だ。以前はレクリエーションのための遠足がほとんどだったが、最近では何かの学習を目的とすることが多くなっている。そのため「見学遠足」と言う言葉も生まれているほどだ。

「どこへ行くと思う?」

 生徒たちがザワザワとし始める。

 突然決まった社会科見学だ。その行き先はまだ発表されていなかった。

「正解者には、おやつ500円以上持ってきてもいい権利あげちゃうでぇ!」

 やっぱり遠足やん。

 両津は呆れ顔だ。

「秋葉原がいいですわ」

「それに賛成ですぅ!」

「プラモも山ほど売ってるぜ!」

「それ、何の勉強になるのよ?!」

 奈々の問いに、正雄の笑顔が輝いた。

「英語だ!」

「どうしてよ?」

「秋葉原には外国人がいっぱいだぜ!道を聞かれたら英語で答えるのさ、ベイビー!」

 奈々の大きなため息が聞こえた。

「誰も分からへんみたいやな。ほんなら発表するで!」

 一同が息を飲む。

「明日の校外学習は、ビッグサイトで開催されてる東京ロボットショーへ行くんや〜!」

 生徒たちから大きな歓声が上がった。

 東京ロボットショーはジャパンモビリティショーの姉妹イベントだ。新型やコンセプトモデル、他にも様々な自家用ロボットが1000台以上も展示される予定となっている。

 生徒たちにとって東京ロボットショーは、憧れのイベントなのである。

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