第191話 ロボットの歴史を語ろう
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
南郷の「最初のロボットは?」と言う質問に、ひかりは自信たっぷりに「鉄腕アトムです!」と答えた。
「それは、日本のTVアニメにおける最初のロボットですわ」
奈央の突っ込みは的確である。
「宇奈月、よぉ知っとるな」
「はい。オタクですので」
南郷の問いに、奈央はニッコリと笑顔でそう答えた。
奈央のロボット好きは、アニメや特撮の影響によるものだ。しかもそれは、祖父の代から続いている宇奈月家の伝統だった。奈央の祖父・宇奈月茂は、宇奈月工業の会長だ。宇奈月工業は彼女の父が総帥の巨大企業体「宇奈月グループ」を、宇奈月銀行と共に支える巨大企業である。重化学工業をビジネスとし、特に機械工業が得意分野だ。そしてそれは創業者の茂が、大のロボット好きだったことから始まった。
奈央が小さな頃に、茂はよくこんなことを言っていた。
「若い頃にテレビで鉄腕アトムを見たんだよ。それでおじぃちゃんはロボットを作りたくなったんだ。それでこの会社を立ち上げたのさ」
もちろんそんな嗜好は、奈央の父・公造にも受け継がれている。そして奈央だ。そんな家に生まれた彼女は、小さな頃から祖父や父に、ロボットアニメやロボット特撮のビデオやDVDを見せられて育ってきた。つまり、筋金入りのロボットオタクなのである。
「ほんなら宇奈月、アニメでええからロボットの歴史を説明してくれへんか?」
「お安い御用ですわ。まず、アニメに初めてロボットが登場したのは、鉄腕アトムを遡ることほぼ10年、1952年のことです。フランスのアニメ『やぶにらみの暴君』に出てくる搭乗型の巨大ロボットがそうだと言えるでしょう」
奈央が突然早口になった。
好きなことを語らせると人は早口になる、そのいい見本だ。
「日本では遠野さんの言う通り、1963年の『鉄腕アトム』が最初と言ってもいいでしょう」
「すっごく詳しいですぅ」
愛理が憧れのアイドルを見るような目で奈央を見ている。
「アトムと同じ年にちょっと遅れて『鉄人28号』も放送がスタートされます。アトムは等身大で意志をもつロボット、つまり自律型です。一方の鉄人は巨大でリモコンにより制御される操縦型です。この2つのスタイルは、日本の工業界を見れば分かると思いますが、ロボット産業の現在の基本にもなっています」
これは祖父・茂の受け売りでもある。今のロボットはプログラム通りに、もしくはAIを内蔵して自動で動く自立型と、乗用ロボットや工事用重機ロボのように操縦型に分けられる。
「お!アニメから現実のロボットの話に、うまいことつなげたな」
南郷が感心の目を奈央に向けた。
「宇奈月くん、ごいすーだな。俺はアニメのことはあまり知らないぜ、ベイビー」
正雄が首をかしげる。
「ジョニー、あんなにロボットマニアなのに、アニメは見ないの?」
「ロボットなら何でも好きだと思ってた」
ひかりとマリエが不思議そうな顔をした。
「ロボットは現実に限るぜ!格闘できるしな!」
「あんたそればっかりじゃない」
「また勝負するかい?ハニー」
奈々の突っ込みに、正雄がマイトガイスマイルを見せた。
「もういいわよ」
「じゃあ棚倉、現実のロボットの歴史なら分かるんか?」
南郷の問いに、正雄がニヒルに笑う。
「昔のことはもう忘れたのさ。海風が目に染みるぜ」
「窓、閉まってるから!」
二人がそんな会話をしている時、教室には海風ではなく雑談の風が吹き荒れていた。
奈央と愛理は、昔の特撮に出てきたロボットについて。
「宇奈月先輩って、昔のロボットだと何が好きですかぁ?」
「そうですわね……ジャイアントロボがカッコいいと思いますわ」
心音と大和は、昔一緒に見たテレビのロボットアニメについて。
「鉄人28号ってそんなに昔のアニメなの? 私たちがちっちゃい頃にやってなかった?」
「あれって『鉄人28号ガオ!』ってタイトルだったし、昔のやつのリメイクだったのかもね」
ひかりとマリエは……
「マリエちゃん、この後学食でアイス食べよ!」
「うん、食べたい」
「バニラと抹茶、どっちにする?」
「うーんと……両方」
「じゃあ二人であーんしよ!」
「うん」
ロボットの話ですら無かった。
「センセ、みんなセンセの話聞いてまへんで」
「ほんまやなぁ。こりゃアカンわ」
大阪弁コンビは二人で肩をすくめた。




