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第188話 メイド喫茶

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

 いつもの学食が、いつもの風景とは違って見えていた。

「ここっていつからメイド喫茶になったのよ?」

「僕に聞かれてもなぁ」

 心音と大和が驚くのも無理はない。ロボット部の活動のため今日も学食へとやって来た二人だったが、そこにはメイドがいたのである。

「こっちこっち!」

 ひかりが二人に手を振る。どうやら他の部員はすでに揃っているようだ。そして彼らにプラスして、集まっているテーブルの横に一人のメイドが立っていた。

 テレビなどでよく目にする秋葉原のメイドとは少し違っている。一番異なるのは、くるぶしまである深緑色の長いスカートだ。まさに伝統的メイドのいでたちと言えた。

「お二人にもご紹介いたしますわ」

 奈央が立ち上がり、メイドのそばに立った。

「こちらは、わたくし付きのメイドです」

「三井です」

「わたくしが生まれてからずっと、世話をしてくれているメイドさんです」

 メイドがゆっくりと、そして上品に頭を下げる。

 伸びた背筋のまま、45度ほど傾いた感じだ。

「わ、私は野沢心音、ココって呼んでくれてもいいのよ、て言うか呼んでください」

「僕は館山大和です。普通免許コースで学んでいます」

「よろしくお願いします」

 三井と名乗った女は、優しげな笑顔を心音と大和に向けた。

「実はですね……」

 奈央は二人に、つい今しがたひかりたちにした説明を繰り返す。

 先日の誘拐未遂事件に大変驚いた奈央の父・公造は、すぐに合宿を中止して戻って来るように、と奈央に伝えてきた。だが、すでに三分の一ほどのカリキュラムを終了しているというのに、それを諦められる奈央ではない。どうしても帰らないと、頑なに拒否する奈央に、公造はある条件を出したのだ。

「三井さんをここに常駐させて、私の護衛をしてもらう、それが条件になりました」

 学食にメイドがいることも驚きだが、心音と大和にとってもっと驚きなのは、その役目が護衛だと言うことだ。

「実は三井さん、こう見えてとても強いのですわ」

 奈央が当たり前のようにそんなことを言う。

 三井良子は沖縄出身だ。

 実は、空手発祥の地は沖縄だと言われている。琉球王国の士族たち(サムレー)の護身術が「ティー」と呼ばれる武術となり、その後中国拳法を取り入れて進化したものだが空手だと言う説が有力だ。その後空手は首里、那覇、泊の3つの地域を中心に発展した後、多くの流派が生まれていく。ちなみに現在も沖縄では中学校の90%以上で、空手の授業が行なわれている。まさに郷土武術なのだ。

 良子の生まれは那覇西町である。那覇は海外への玄関口として古くから開けた商業都市だった。中国福建省の省都である港湾都市「福州フッチュ」との関係も深く、那覇の久米村クニンダは福州を中心とした中国系渡来人の居住区として栄えた歴史がある。そんな那覇で生まれたのが沖縄空手の一派である「那覇手ナーファディー」である。良子は物心付く前から那覇手を学び、現在では六段の猛者となっていた。その合格率は約20%以下とも言われる狭き門で、30歳以上にしか与えられないその称号は、長きにわたる鍛錬の証ともとらえられる。もちろん黒帯だ。

「お嬢様、あまりホメないでください」

「三井、ここではお嬢様はやめて欲しいですわ」

「それでは……」

 良子は少し考えると、奈央におじぎをした。

「では、奈央さんで」

「それでいいですわ」

 奈央がにっこりと良子に微笑みかける。

「すごい!奈央ちゃんて、モノホンのお嬢様だったんだ!」

 ひかりが目を丸くしている。

「世界に冠たる宇奈月グループの偉いさんの娘やもんなぁ」

「かんたるって何ですかぁ?」

 ひかりの目がキラリと光る。

「それはね愛理ちゃん、歯医者さんのことだよ」

「それはデンタル!」

「心折れるわぁ〜」

「メンタル!」

「DVD借りて来よ!」

「レンタル!」

「チキン南蛮に」

「タルタル!全然違うじゃない!」

「なんたることかーっ!」

 ひかりも奈々も、ハァハァと肩で息をしている。

「そろそろ終わったかな?」

 今度は正雄の目がギラリと輝いた。

「そんなに強いのなら、ぜひ俺とお手合わせ願ぇねぇかな?ベイビー」

 良子が奈央に視線を向ける。

 奈央が微笑みながら、小さくうんとうなづいた。

「分かりました。ですが、お怪我なさるといけませんので、素手の勝負で寸止めでよろしいでしょうか?」

「寸止めって……」

「髪をとめる……」

「ピン留め!」

 奈々の瞬殺突っ込みが炸裂した。

「なんでもいいぜ!」

 正雄は立ち上がり、すでにボクシングのような構えをとっていた。

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