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第18話 故障する機械

「超機動伝説ダイナギガ」が今年(2023年)なんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

「結菜、そっちの検査結果はどう出てる?」

 遠野あかりは、少し離れたところで何かのオペレーション作業中の野沢結菜に声をかけた。ここは調査船ハーフムーン情報システム部のラボだ。結菜はあかりの右腕とも言える部下の一人である。

「えーと……ちょっと待ってくださいね」

 結菜は今までやっていたオペレーションから離れ、隣の検査機へと移動する。後ろで結わえた髪が、馬の尻尾のようにフラフラと揺れている。

「う〜ん……SATでも、特に異常は見られませんね」

 少しがっかりしたような口調で言う。

 SAT、超音波探傷検査は超音波の反射を利用して、半導体や電子部品等の内部の傷や損傷、欠落などを検出する非破壊検査だ。放射線検査より格段に安全で扱いが楽なだけでなく、より奥底のトラブルにまで到達できる。

「そうかぁ……」

 あかりは深いため息をついた。

 数日前のことだ。あかり達もいつも利用しているカフェテリアの全自動調理機が故障した。突然動かなくなったのだ。この万能とも言える調理機のおかげで、この船の乗組員たちは実にバラエティ豊かな食事を楽しめている。もちろん予備機があるので、食事が途絶えるようなことは無いのだが。

 カフェテリアからの連絡を受け、すぐさま修理班が駆けつけた。そしてその場で修理しようとしたのだが、どこをどう分解しても機械的故障は全く見つからなかった。そうなると原因は部品や回路の故障に違いない。ということで、情報システム部にお鉢が回ってきたのである。

「EMS、FCD、IDDQテスト、そしてSAT、どんな検査をしても、何も出てきませんね……」

 あかりのもうひとりの部下、田中正明はちょっと疲れたような声音だ。目の下にはうっすらとクマのようなものが浮かんでいる。

「主任、どう思います?」

 結菜に問いかけられて、あかりはモニター画面から目を離し結菜の方を見た。

「どうって?」

「今回の故障、何かおかしくないですか?」

 その声に正明も興味深そうにあかりを見ている。

「だって、最初は調理機の故障でしたけど、その後いろんな機械や装置がどんどん故障って……しかもその全部が原因不明なんですよ!」

 結菜は少し混乱しているようだ。そんな結菜を見つめて、あかりは言った。

「普通なら偶然よね。回線がつながっていない機械たちが次々に故障しても、関連性があるはずはない」

「そうなんですけど……」

 はっと気づいたように正明が顔を上げた。

「もしかして、人為的なもの?」

 結菜は正明に向き直る。

「誰がこんなことするのよ?」

 それはサッパリ分からないというように、正明は肩をすくめた。結菜は再びあかりを見つめる。

「これだけ調べても原因不明ってのも謎なんですけど、最初の調理機から段々広がるみたいに故障して行ってるじゃないですか……」

 結菜は、何か言ってはいけないことに気づいているかのように言った。

 正明がまたはっとする。

「もしかして……ウィルス?」

「そう思えませんか?まるで……インフルエンザとか、ウィルス性の感染症みたいだって」

 結菜の言葉に、あかりはかぶりを振った。

「2人とも落ち着いて。コンピュータウィルスならともかく、無生物の機械に感染するウィルスなんて存在しないわ。それに、ケーブルやWi-Fiもつながっていない機械から機械へ、コンピュータウィルスだとしても、どうやって感染するの?」

「……空気感染?」

 正明の声が暗く、ラボに響いた。

 重い沈黙がラボを支配して数秒、来客を告げる電子音がドアの方から鳴った。

「はい、どうぞ入ってください」

 あかりの声に、入口のドアがスッとスライドした。そこには、フライトサージャンの竹田君人ドクターが立っていた。フライトサージャンとは、宇宙へ出る乗組員の健康管理や医学運用、航空宇宙医学に関連する研究開発を行う専門医である。予想外の訪問者に、あかりだけでなく、結菜も正明も少し驚いた表情を見せていた。

「ドクター、私達に何かご用ですか?」

 またもや正明がハッとする。

「あっ!ボク、健康診断行ってないです!」

 結菜は呆れ顔で正明の方を向いた。

「あなたまたなの?先週もそんなこと言ってたじゃない」

「いやぁ、毎週健康診断するなんて、地球じゃ考えられないから、つい」

 漫画のようにポリポリと頭をかく。

「ドクター、すいません。すぐに行かせますから……」

 そうあかりが言いかけた時、竹田は右手を上げてその言葉を制止した。

「いえ、その件でうかがったんじゃないんです」

 正明がホッと胸をなでおろす。そんな彼を結菜がニラんでいる。

「では、どうして……」

 竹田はあかりを見つめて、少し暗い顔をした。

「実は、みなさんにお話したいことがあるのです」

「ラボの全員にですか?」

「そうです、多分その方が話が早いと思うので」

 ラボの皆が顔を見合わせる。

「実は……この船の任務について、あなた方が知らないことがありまして……」

 そんな竹田の言葉に、疑問の表情の皆。でもその真実は三人にとって、想像すらできない驚くべきことであった。

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