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第179話 顕微鏡の調整

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】

 袴田研究室の面々は、東郷大学の同研究室にこもっていた。

 UNH国連宇宙軍総合病院感染症隔離病室で眠っているアイが、いつ目をさますのかは全く分からない。その間に、できるだけ研究を進めておこうというのがその主旨である。そして掴んだ事実を、目覚めたアイに確認したい。そんな思いから、締切の分からない作業を続けていた。

 袴田伸行教授は、ドイツの宇宙学者ユルゲン・ハーネストワルフとの共同研究で、宇宙病の原因である袴田素粒子を発見した宇宙物理学の権威である。そして数年前に、北大阪医科大学のウィルス学の権威・吉川雄三教授と共同で、ウィルス学+素粒子物理学という画期的な学問「ネオ素粒子物理学」を提唱し、ここで研究を続けている。ウイルス学は、ウイルスやウイロイドなどの非細胞性生物群を取り扱う生物学の一つだ。その見地は、必ず袴田素粒子の研究に役立つと、袴田は考えていた。

「もう少しフォーカスを絞って、あれを特定できませんかね」

 袴田の助手・遠野拓也は袴田顕微鏡からの画面を見つめている。

 彼は現在22歳の大学4年生。ひかりの5歳上の兄だ。卒業後は大学院へ進み、この研究室に残るつもりらしい。サッパリとした髪型の好青年だ。

「中央飛跡検出器とかTOPカウンターをいじれば、なんとかなるかも」

 拓也の隣の席でやはりディスプレイに見入っているのは、彼と同じ袴田の助手・小野寺舞だ。拓也と同学年である。少し長めの髪を後ろでまとめている。

「そうだな。やってみてくれ」

 袴田の言葉に、舞がコンソールを操作する。

 袴田顕微鏡は検出した素粒子を、人が認識しやすい形や色に変換して可視化する能力を持っている。今彼らの前のディスプレイには、シールドで隔離した袴田素粒子の一群が表示されていた。そこには、ごちゃごちゃとうごめいているX型の素粒子の中に、たったひとつY型の何かが見えている。

「これでどうだ!」

 舞がいくつものセンサーを微調整していく。

 次第に画像がハッキリしてくる。

 気持ち悪くうごめいているX型の素粒子の姿が、全体的に薄まって来た。

「うまくフィルター出来たかもしれません」

 そんな舞の言葉と同時に、X型の全てが見えなくなり、そこにはY型の素粒子だけが映されている。

「やったな!」

 声を上げた拓也と舞が、座ったままハイタッチした。

「よし。では、こいつがいつものヤツと何が違うのか、色々と試してみよう」

「はい!」

 袴田の言葉に、拓也と舞が同時に返事をした。


「山下さんが目を覚まします」

 UNH国連宇宙軍総合病院感染症隔離病棟のチーフドクター・牧村陽子の声が、病室のコントロールルームに響いた。彼女がずっとモニターを続けていた、山下美咲のバイタルサインがそう語っているのだ。

 美咲が眠りについてから数日が経過している。その間、アイは何を試みていたのか。

 彼女はベッドからゆっくりとカラダを起こす。ちょっと眠そうに、右手で目をこする。腕から伸びている点滴のチューブが、ほんの少し引っ張られて揺れた。

「山下さん、おはようございます」

 陽子の明るい、そして優しげな声が美咲を迎えた。

「あ、アイくんに変わってもいいですか?」

「もちろんです」

 やけに急いでいる?

 陽子の胸に、少しだが不安がよぎる。

 目を閉じて数秒、ゆっくりと目を開いた彼女はアイの表情を見せていた。

「何か変わったことはありましたか?」

 アイの問いに、陽子はちょっと考えを巡らすと答えた。

「暴走ロボット事案は、とりあえず解決して落ち着きを見せています」

 そして、何かを思い出したようにハッとした。

「袴田研究室で何か見つかったようです」

「何か?」

「私にはあまりよくわからないのですけど、袴田素粒子とは違った素粒子が見つかったとか」

「ほう」

「詳しくは袴田教授から説明があると思います。後でリモートで研究室とつなぎますね」

「よろしくお願いします。しかし……もうそんなところまでたどり着きましたか」

 アイが珍しく微笑んでいた。

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