第173話 部活への勧誘
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
【この作品は原作者による「超機動伝説ダイナギガ」25周年記念企画です】
「君らもロボット部に入らへんか?」
ひかりたちロボット部の7人は、例によって学食に集まっていた。特にクラブ活動のシステムが無いこの都営第6ロボット教習所には、部活動専用の部室が無い。そこで勢い、学食がまるで部室になっていた。
「それって何をする部活なの?」
今日の学食には、いつもの7人の他にもう二人の生徒が集まっている。
野沢心音と館山大和だ。
地下でのレスキューロボットの暴走事件で意気投合、部活への勧誘となったのである。
「ロボットにまつわる全般について研究する部活や!」
両津が胸を張り、ちょっと偉そうにそう言った。
「何を研究してるの?」
「えーと、何って言われてもやなぁ」
大和の質問に、両津はしどろもどろになる。この曖昧な活動内容を考えたのは奈々だ。両津に詳細を答えられるはずもない。オロオロしている両津を尻目に、奈央がニッコリと微笑んだ。
「特撮やアニメに登場するロボットについて、その分類や戦力分析などをする部活ですわ」
奈央の言葉を皮切りに、各自が好きな分野の活動を言い始める。
「ロボットのプラモをみんなで作るのさ、ベイビー!」
「泉崎先輩のロボット、デビルスマイルを愛でる部活ですぅ」
「奈々ちゃんに、あーんしてもらう部活だよ!」
「ひかり、それロボットと関係無いでしょ!」
「あれれ〜?」
ひかりが小首をかしげた。
「マリエちゃんはどう思う?」
ひかりの問いに、マリエが小声で答える。
「ひかりといっしょにいる部活」
「てへへ〜」
混乱に拍車がかかりそうになってきたので、仕方なく奈々がまとめることにした。
「要するに、いま出た全部を含めて、ロボットにまつわる全般について研究する部活ってことよ」
「なるほど〜」
心音が納得したようにうなづいた。
「なるほど?」
大和は、さっぱり分からないという表情だ。
「両津くんも、それでいいわよね?」
「まあ、そんなところや」
奈々の視線に、両津はバツが悪そうに苦笑する。
そして突然大声を上げた。
「あ〜、白状するわ!部費もろて、みんなでアイスとか食べようって部活や!」
本音である。
「入る!」
「ちょっと、心音?!」
「心音じゃなくて、ココ!」
あ、そうだった。今の心音には、突然自分から言い出したあだ名があった。
「ココ、もうちょっと考えた方が」
「ん? 文句あるの?」
「いや、そういうわけじゃないけど」
心音の勢いに、大和は少し鼻白んでしまう。
「私が入るんだから、大和も入るわよね?」
大和は仕方なく、肩をすくめながらうなづいた。
「よっしゃ!これだけ部員おったら、よーけ部費もらえるで!」
「ブヒブヒ!」
「それは豚でしょ!」
「ぞいぞい!」
「それは……何?」
「わっかりっませ〜ん!」
ずっこける一同。
「というわけで、話がまとまったところでランチタイムや〜!」
そうなのだ。両津の部活勧誘タイムが突然始まったので、皆お預けを食らっていたのである。
それぞれのメニューはいつも通りだ。
ひかりがお子様ランチ、奈々と愛理は日替わりA定食、奈央はカツカレー、マリエはカラスミと沖縄島唐辛子のパスタ、正雄はクラブハウスサンドイッチ、そして両津はいつもの焼き魚定食(今日の焼き魚はサワラの西京焼きだ)である。心音と大和は共に日替わりA定食を選んでいた。
「いっただっきま〜す!」
一同手を合わせ、大きな声でそう言うとランチタイムのスタートだ。
心音も大和も、学食の味が大好きだった。
特に日替わりA定食のおかずのクオリティはいつも素晴らしい。これまでに一度も外れたことがない。
さぁ食べよう!とした二人だったが、目の前で不思議な光景が繰り広げられていることに気づく。
「なんだこれ」
大和が思わずそうつぶやいた。
二人以外全員のあ〜ん大会が開催されていたのである。
奈々はサイコロステーキをひかりにあ〜んしている。
奈央はカレーを愛理にあ〜ん。
両津はぬか漬けを正雄にあ〜ん。
そしてサイコロステーキを飲み込んだひかりが、マリエにパスタのあ〜んを要求する。
「大和、私もあれやりた〜い!」
「心音、いやココ、やりたいって言われても」
「やりたいったらやりたいの!」
心音が自分のサイコロステーキのひとつを箸でつまんで大和にあ〜んする。
同じタイミングで、大和も心音にあ〜んする。
そしてパクっ。
ひかりたち7人は、そんな二人を見つめていた。
「どっちもサイコロステーキやん。あ〜んする意味ないやん」
「しかも同時って、息が合ってる証拠だぜ、ベイビー」
二人はサイコロステーキをはむはむしながら、頬を赤らめている。
「あのお二人のあ〜ん、わたしたちとなんだか雰囲気が違いますわ」
「アツアツですぅ」
「サイコロステーキが?」
「違うわよ」
奈々のひかりへの突っ込みにも、いつもの勢いがない。
ここにいるひかり以外の全員が、頬を赤く染めていた。




