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第171話 自己紹介

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

 夕梨花とスーツ男のにらみ合いが続いていた。

 スーツ男が用いる骨法術は、忍者が素手で敵と格闘する時の武術だ。相撲の原型とも言われる「手乞」(てごい)を源流とした古流武術のひとつで、突きや蹴りなどの当て身技が主体となる。一方夕梨花の逮捕術は、被疑者や犯人などを逮捕するための技術であり、その目的は相手を無傷で取り抑えることにある。警察学校での必須科目で、卒業には逮捕術検定に合格する必要がある。つまり全ての警察官が逮捕術を身につけていることになるのだが、夕梨花の強さは警視庁内でもずば抜けていた。師範級の彼女は年に数回、指導者としての活動も依頼されている程である。

 骨法術と逮捕術。このふたつの武術は、あまり相性がいいとは言えなかった。

 当て身技が主体のスーツ男は、掌底打ちや蹴りで夕梨花を攻めてくる。掌底打ちは、手のひらの付け根、手首よりの堅い部分で相手の顔面や胸板を打つ技だ。その威力は絶大で、正拳打ちよりも衝撃が強いと言われている。

 それを受ける夕梨花は、攻撃を仕掛けてきた相手の手首や足首を掴み、ひねって関節を決めることで倒して抑え込む。それが逮捕術の真髄なのだ。

 だが、動きの素早い夕梨花に掌底は命中しない。かといって、スーツ男は自分の手首を掴ませることなく、驚く速さで元の構えに戻る。

 その繰り返しで、まさに膠着状態におちいっていた。

「お嬢ちゃんよぉ、これじゃあいつまでたっても終わらねぇぜ」

 後藤がため息を漏らす。

 ずっと冷静でさめたような表情だったスーツ男の顔に、ほんの少しだがあせりの色が浮かんでいた。だが、夕梨花にとっても同様だ。このままでは体力勝負になってしまう。どちらかに疲れが見え、わずかでも動きにミスが出た時に相手の一撃で勝負が決まるだろう。お互いの体力と集中力が分からない今、どちらが勝つのかは余談を許さなくなっていた。

 ドガガーン!

 その時突然轟音が鳴り響き、地響きのように畳の床が大きく揺れた。

 同時に、室内に充満する真っ黒な煙。

「巫女か?!」

 後藤は左右のフスマに目を向ける。だが、真っ黒な煙が煙幕となり何も見通せない。一瞬でこの場にいる全員の視界を奪ったのだ。

「アヴァターラ!」

 夕梨花の呼びかけに答える者は無い。

「煙幕で姿を消したのか? まさに忍者じゃねぇか」

 後藤はそうつぶやくと、すかさず左のフスマへと向かう。

 夕梨花は逆に走ってフスマを蹴破ると、廊下に飛び出した。

 だが二人の目は、誰の姿をも捉えることはできなかった。

 逃げられたのである。

「チッ!」

 夕梨花の舌打ちが聞こえた。


「わたくし遠野ひかり!17歳でありまするっ!」

「また古語!」

「お父さんが考古学者やからしゃーない」

 てんどんである。

 教習所の地下倉庫では、さっきから自己紹介大会が始まっていた。

「あ!暴走ロボットの人だ!」

 ひかりの名前を聞いた心音が大声を上げる。

「ああ、毎日ロボットを暴走させてる」

 大和も納得顔である。

「てへへへ〜」

 やはりひかりの照れ時はちょっと変わっている。誰がどう考えても、今は照れる場面ではない。

「ひかり有名ね」

 奈々がフフッと笑った。

「私は泉崎奈々、A級ライセンスコースよ」

「わたくしは宇奈月奈央、貯金と運用ならやっぱり運用がオススメです。特に新ニーサが良いと思いますわ」

「私、伊南村愛理ちゃんでぇーす!学食の日替わりA定食が大好きでぇーす!」

「俺はジョニー!遥かアメリカのミネソタからやって来たマイトガイさ!」

「棚倉正雄くんね、この人」

 最近は奈々の突っ込みを含めて自己紹介になっている。

「ボクは両津良幸、特技はお笑いや」

「センス無いけどな!」

「ひかり、両津くんには容赦ないわよね」

「へ?」

 奈々の指摘に首をかしげるひかり。

「あと、マリエちゃん!」

「マリエ・フランデレン」

「あ!成績トップの人だ!」

 マリエの名前を聞いた心音が再び大声を上げる。

「ああ、ペーパーテストも実技も全部トップだっていう」

 大和も納得顔である。

「てへへへ〜」

「なんでひかりが照れてるのよ?!」

「てへへへ〜」

 マリエがひかりの真似をして照れてみた。

「で、あなたたちは?」

「ボクは館山大和、普通免許コースなんだ」

 ニッコリと、いかにも人の良さそうな笑顔の大和。

「私の名前? そんなに聞きたかったら教えてあげてもいいんだからね……えーと、野沢心音です。ココって呼んでください」

「え? 心音、そんなあだ名あったっけ?!」

「いいの!今考えたんだから!」

 奈央の目がキラキラと輝いている。

「ツンデレですわ〜」

 その言葉に即座にひかりが反応した。

「ヤンデレ!」

「病んでなんかないわよ!」

 心音が突っ込んだ。

「デレデレ」

「デレてばっかりじゃないの!」

 奈々が突っ込んだ。

「あらあら、泉崎さんとキャラがかぶっていますわ」

「かぶってないわよ!」

「かぶってないわよ!」

 奈々と心音が同時に叫ぶ。

「ほら」

 奈央がニッコリと笑ってそう言った。

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