第165話 助けに来たぞ!
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
ガキィーン!
大和が振り下ろした鉄骨を、暴走ロボが右の前腕で受け止めた。
「くっ!」
渾身の力を込めて振り下ろしたのだ。大和へ伝わる衝撃も大きい。
最新鋭のロボットの操縦システムは、パイロットの感覚と同調するように作られている。人の力を何倍にもしてくれるロボットだが、受けた衝撃も操縦者に大きく伝わってくる。逆にパイロットが力を込めれば込めるほど、ロボットの力として発揮できるシステムなのだ。
操縦桿を握る大和の右手を、心音が両手で包み込むようにして握り込む。そして一緒にグッと押していく。これで、レスキューロボはより大きな力を発揮できることになる。
「心音?」
「これでパワー倍増のはずよ!」
「分かった!」
「でもこれって、操縦桿握りにくいわね。じゃあ……こうすりゃいいのね!」
心音はそう叫ぶと、ひらりとジャンプ、大和がまるで椅子であるかのようにガッと腰を掛けた。これではまるで、大和が心音を後ろから抱っこしているようである。
「いやいや!これ、おかしいから!」
あせる大和に、心音がしかるように言う。
「うるさいわね!ロボットのことなら私に任せなさいっての!」
心音は左右の手で操縦桿を、大和の手ごと握りしめた。
「もう一度やってみましょ!」
「うん!」
手にしている鉄骨はとても長く、レスキューロボが持つとまるで槍のようだ。両手で柄の部分をしっかりと掴んで再び振り上げる。刀なら上段の構えである。
「えーい!」
心音の叫びと共に、まるで真っ向斬りのようにまっすぐ振り下ろす。この形は、最もスピードが速く威力が乗る斬り降ろしだ。
ガキィーン!
再び右の前腕でそれを受け止めた暴走ロボだったが、パイロット二人の力と真っ向斬りの威力で一歩後ずさり、ふらりとバランスを崩した。
「大和、今よ!」
「おりゃぁぁぁーっ!」
鉄骨をそれこそ槍のように持ち替え、コントロールモジュールを狙って、思いっきり暴走ロボの右下腹部を突く。
槍という名前は「突きやる」という言葉に由来するもので、突きに特化した武器だ。だが……。
ガガン!
と轟音は響いたものの、その先端は暴走ロボの外部装甲板に弾かれてしまった。
「ダメか?!」
大和が悲痛な叫びを上げる。
建築用の一般的な鉄骨は、その強度を上げるために同じ太さを保って作られている。つまり、槍で言う「穂先(刃の部分)」が無いのだ。簡単に刺さらないのも当然だと言える。
体制を立て直した暴走ロボは、大和たちのレスキューロボに、ジワジワとにじり寄り始めた。
どうする?!
次の一手が見つからない大和と心音の耳に、多数の足音が聞こえた。人間ではない。ガシンガシンという、多数のロボットのものだ。
ドーン!と、突然地下倉庫の扉が開かれる。
とび込んでくる7台のロボットたち。
「マイトガイ、参上!」
「洗浄!」
「洗わないの!」
レスキューロボのコクピットに、無線でコントのような音声が届いた。
「あれって?」
「A級ライセンスコースの!」
先頭の正雄機、コバヤシマルがジャキンとポーズを決めている。
「ボクらが来たからもう大丈夫や!鬼に金棒やで!」
「鬼にカネボウやで!」
「鬼は化粧しないってば!」
レスキューロボに襲いかかろうとしていた暴走ロボも、よく分からない事態にあっけにとられている。その様子に、正雄の歯がキラリと光った。
「棚倉キィーック!」
助走もなく膝関節のパワーだけで中に舞うコバヤシマル。
ガゴーン!
炸裂したキックを、暴走ロボは両腕をクロスして受け止める。だがあまりのパワーに、膝が崩れて膝立ちになった。正雄はそのまま反転ジャンプを決め、皆の後ろあたりに着地する。
「奈々パァーンチ!」
すかさず踏み込む奈々のデビルスマイル。
ドッカーン! と奈々のパンチが決まり、暴走ロボが後ろへ吹っ飛んだ。
「この人たち、すごいわ」
「うん」
心音と大和は、その光景をポカンと口を開けたまま見つめていた。
いや、そんな状況ではない。
コントロールモジュールの破壊方法を考えなければ。
再びカメラからの映像を見渡す心音。
「大和!あの鉄骨のそばに、鉄筋がある!」
「鉄筋?!」
鉄筋は、コンクリートの中に埋め込む棒状の鋼材だ。住宅等で使用される鉄筋の太さは、建築基準法で直径9mmか13mmに統一されている。あれなら、暴走ロボに突き刺せるかもしれない。
「なるほど!」
「A級の人たちが足止めしてくれてる間に、あれで槍を作るのよ!」
レスキューロボは再び反転し、鉄筋めがけて駆け出した。




