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第163話 レスキューロボ起動

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

「まだ?!」

「ちょっと待ってよ!工具も無いのに、そう簡単にいかないわ!」

 大和と心音はレスキューロボのコクピットにいた。

 体育座りをしているロボの後部ハッチを手動で開き、二人で乗り込んだのだ。大和はすでに操縦席に座り、操縦レバーを握っている。その顔には少しの恐れと、決意の色がうかがえた。

「ここのはずなんだけど……」

 やはり始動用のイグニションキーは刺さっていなかった。

 心音は操縦コンソールのカバーを開き、中の配線をいじっている。少し茶色ががった目が、たくさんの部品や配線が並んだ基盤上をせわしなく動いていた。額にはうっすらと汗が浮いている。そしてその手が止まった。

「きっとこのリード線ね」

「きっとって、大丈夫?」

「大和、私のこと信じられないの?」

 心音が攻めるような目を大和に向けてきた。

「いや、そういうわけじゃないけど、今は早とちりしてる時間は無いから」

 心音の顔に、不敵な笑みが浮かぶ。

「まあ見てなさい」

 そう言うと、両手それぞれに持っていたむき出しの配線を、勢いよく接触させた。

 バチッ!飛び散る火花。

 一瞬、真っ暗なコクピット内が明るく照らされる。

「うわっ!」

 悲鳴を上げてのけぞる大和。

 心音はその火花を予想していたのか、ぎゅっと目を閉じていた。

 グオーン……。

 コクピットが震えだす。

 明るくなる照明。

 パッと外の様子を映し出すメインディスプレイ。

 そこに次々とワイプが開き、上下左右、そして後方カメラの映像も表示される。

「やった!」

 思わず叫んだ大和に、心音が勝ち誇ったような笑顔を向けた。

「ほらね!心音様にかかればこんなものよ」

 だがその笑顔は、一瞬後には消え去っていた。

 メインディスプレイに表示された画面では、暴走中のレスキューロボが数人の生徒たちに襲いかかろうとしていたのだ。

 操縦レバーを引き、足元のペダルを強く踏み込む大和。

 グオン!と音を立て、レスキューロボが立ち上がる。そしてその勢いのまま、暴走ロボに突進した。

「うきゃ〜!」

 振り飛ばされそうになった心音が、シートごと大和のカラダを後ろから抱きしめた。

「心音!しっかりつかまってろ!」

「了解よ!」


「久慈くん、あれはどういうことだ?!」

 雄物川の言葉にディスプレイに視線を向けた久慈は、驚愕のあまり目を見開いた。

「そんなことって……」

「まさか、もう一台も暴走しているのでしょうか?!」

 愛菜の心配げな声が響く。

「どうなっている?!」

 そこでは信じられない光景が展開されていた。

 先程暴走が確認されたロボットに、もう一台のレスキューロボが組み付いている。後ろからガッシリと掴みかかり、ギリギリ動きを止めているのだ。

「あのレスキューロボ、さっき確かにシールドの起動を確認しました!」

「では、暴走ではないというのか?」

 久慈はハッと何かに気づく。

「コクピットのカメラをオンにします!」

 久慈が、コンソールのボタンを操作した。

 指揮所のメインディスプレイに、ワイプ画面が開く。

「あれは……館山くんと野沢さん?!」

「生徒か?!」

「はい、普通免許コースの二人です」

 暴走ロボットが向かおうとする先には、数人の生徒たちが立ち尽くしている。もし二台目のレスキューロボが止めていなければ、今頃恐ろしい事態が起こっていたに違いない。

 久慈はとっさにマイクのスイッチをオンにする。

「暴走ロボの動きが止まっているうちに、早く扉に走りなさい!」

 ハッと気づいたように顔を見合わせ、襲われている生徒たちが走り出す。もちろん出口の扉に向かって。

「久慈教官、ナイスアシスト!」

「私をバカにしたこと、許してあげるわ」

 そんな大和と心音の会話は、指揮所にも届いていた。

「ありがとうね」

 予想外の声がコクピットに響いた。久慈である。心音が思わず首をすくめる。

 あらら、聞こえちゃってたぁ。

 ペロリと下を出す心音。

「久慈教官!この後、どうすれば?!」

 暴走ロボは激しく暴れ始めている。このままだと、あと十秒もすればレスキューロボは振り払われてしまいかねない。だが、大和も心音も、暴走ロボットを止めるノウハウは持ち合わせていないのだ。

「落ち着いて聞いてね」

 大和と心音が息を呑む。

「暴走ロボットの動きを止めるには、そのコントロールモジュールを破壊する必要があるの」

「でもどうやって?」

 心音がメインディスプレイに表示されている各カメラの映像を見回す。

「大和あれ!後ろに工事用の鉄骨が積んである!」

「教官!あれで突けば、破壊できますか?!」

 レスキューロボの装甲はまだ強化前だ。今の状態なら鉄骨でも破壊できなくはないだろう。

「できるわ」

「コントロールモジュールって、どこに?!」

 久慈は即座にコンソールを操作する。

 二人が乗るコクピットのディスプレイに、レスキューロボットの設計図がオーバーレイされた。コントロール部分が赤く点滅している。右下腹部だ。

「すごい!レスキューロボットの設計図、初めて見た!」

 心音がはしゃぐようにぴょんと跳ねた。

「点滅しているところがコントロールモジュールです。あそこを狙って」

「分かりました!」

 大和が操縦レバーを握り直す。

「心音、まずはあの鉄骨を取りに行く」

「分かってるわ、しっかりつかまれって言うんでしょ!」

「その通り!」

 レスキューロボは暴走ロボを突き放すと同時に反転、鉄骨めがけて走り出す。

「間に合ってくれ」

 指揮所に雄物川の重いつぶやきが響いた。

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