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第157話 刀

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

「おっと、行かせねぇぜ!」

 後藤のブラックドワーフに一機のアイアンゴーレムが立ちふさがった。

 この三人の中ではリーダー格の浦尾のマシンだ。

 まぁリーダーとは言っても、後藤の中では三人ともザコではあるのだが。

「俺の前に立つなんて、おめぇいい度胸してるじゃねぇかよぉ」

 後藤が不敵な笑みを浮かべる。

「聞いてもいいか?」

「なんだぁ?」

「いつからサツの犬になった?!」

 浦尾は、口角泡を飛ばさんばかりに叫んだ。

 その目は怒りのあまり、真っ赤に充血している。

 これぞまさに鬼の形相だよなぁ。

 神を崇めてるクセに鬼になっちまうなんて、皮肉なもんだぜ。

 後藤はいたって冷静に、メインディスプレイにワイプで映し出されている浦尾の顔を眺めていた。

「まず、俺はサツの犬じゃねえ。傭兵だって言ってんだろーが」

「何言ってやがる!そいつを俺たちから奪った時点で、どう考えてもキサマはサツとグルだろーがっ!」

「分かんねぇぞ?俺はこいつをどっかに売り飛ばす気かもしれねぇだろ」

「どっちにしろ裏切り者じゃねぇか!」

 後藤機が、ロボットに似合わないポーズを決める。

 ひょいと肩をすくめたのだ。実に器用である。いや、操縦上手と言うべきか。

「どうせおめぇはここで逮捕だ。冥土の土産じゃねぇが教えてやるかなぁ」

 浦尾の表情が、イライラでゆがんでいる。額に青筋が浮かび、いまにも髪が逆立ちそうな迫力だ。

 これを怒髪天を衝くって言うのかなぁ。

 後藤は鼻の横を人差し指でポリポリとかいた。

「俺はサツの犬じゃねぇ。サツなんだよ」

「はぁ?」

 浦尾が呆けたような顔になる。

「俺、警部なんだわ」

 そう言うと後藤は、右の口角をニヤリと上げた。

 怒りに震える浦尾の手の動きが伝わっているのか、アイアンゴーレムの巨体がぶるぶると振動している。

「何わけの分からねぇことほざいてんだよ!」

 浦尾はそう叫ぶと、いきなり後藤に突進した。

 両腕を上げ、ブラックドワーフにつかみかかろうとする。

 後藤機は、すっと膝関節を曲げて姿勢を低くする。

 浦尾機が肉薄したその瞬間、両足の油圧が最大の出力を発揮し、後藤機が伸び上がった。アイアンゴーレムのアゴに、ブラックドワーフの頭がめり込む。頭突きである。

 ドコーン!

 轟音を上げて動きが停まったアイアンゴーレムの腹に、プラックドワーフの左腕拳が食い込んだ。

 拳の形に凹む外部装甲板。

「こいつパワーもすげーなぁ、やっぱりチューンナップされた改造版だぜ」

 後藤がのんびりとした口調でそう呟いた時、アイアンゴーレムがガックリと崩れ落ちた。腹の奥にあるコクピットに与えた大きな衝撃で、操縦者が気絶でもしたのだろう。

「このブラックドワーフ、俺にも一機分けてくれねぇかなぁ」

 浦尾のアイアンゴーレムを一撃で沈黙させた後藤の口調は、相変わらずひょうひょうとしていた。


「陸奥さん!こりゃラチがあかへんで!」

 陸奥と南郷、そしてスーツ男の攻防が続いていた。

 キックやパンチで攻撃をしかける陸奥と南郷、それをひょいひょいとよけてしまうスーツ男のヒトガタ。

「何か手を考えないと!」

 二人の表情にあせりの色が浮かんでいた。

 相手はこちらと同型のヒトガタだ。おそらくバッテリー消費量も同じに違いない。だとすると、このアジトへの行軍の分余計にバッテリーを消費しているこちらが不利になる。燃料切れで取り逃がすなんて、目も当てられない事態が迫っているのだ。

 その時、警察無線からキドロチームのチーフパイロット、泉崎夕梨花の声が飛び込んで来た。

「お二人!よけてください!」

 大きくジャンプし、ここをめがけて落下してくる一機のキドロ。もちろん夕梨花のキドロ01だ。その手にはキドロ用近接格闘用武器、ROGAが握られている。

「了解!」

 あわてて回避する陸奥と南郷。

 キドロ01はスーツ男のヒトガタに、ROGAを振り下ろす。

 ROGAの外見は完全に日本刀である。超硬合金を鍛え上げたこの刀に切れないものは何もない。はずだった。

 キン!

 鋭い音をたて、ROGAが何かで受け止められた。

「なに?!」

 ヒトガタは短い刀を逆手に握っていた。

 どうやら、死角になっていたその背中に隠し持っていたらしい。

「懐剣?!」

 夕梨花が驚愕に目を見開いた。

 懐剣とは、懐刀ふところがたなのことである。

 武家に生まれた娘が外出時に、護身用として懐に入れて持っていた刀がその由来だ。自分の身は自分で守る、そんな武家の女性としての覚悟の象徴とも言える短刀である。刃の長さが1尺(約30.3cm)未満の日本刀で、ふところや帯の間にはさんで携帯する。刀身とつかの間に「鍔」(つば)がなく、鞘の口と柄の口がピタリと合うことから、別名「合口」(あいくち)とも呼ばれている。また、災いや邪悪な物から身を護るとも言われており、守り刀の異名も持っている。

 スーツ男のヒトガタが使っているのは、そんな懐剣のように見えた。

 もちろん、ロボット用に作られたもののようで、巨大ではあるのだが。

「ROGAですか」

 夕梨花のコクピットにスーツ男からの無線が入電する。

 またしても警察無線のハッキングである。

 ギリギリと、刀と刀が火花を散らす。

 夕梨花は、ぱっと後ろに飛びのき、スーツ男と距離を取る。

「こちらの懐剣も超硬合金製なのですよ。丈夫さでは互角と言っていいでしょう」

 スーツ男がにこやかにそう告げた。

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