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第153話 人間の尊厳

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

「遠野ひかり、17歳!無事、人間の尊厳は守られますた!」

 ひかりがビシッと敬礼している。

「ますたって、ちゃんとしてるのかふざけてるのか、サッパリ分からないわよ。でも、間に合って良かったわね」

「良かった」

「ありがとう、奈々ちゃん!マリエちゃん!」

 暗い廊下を進み、いくつもの扉をくぐった三人は、やっとトイレのあるフロアにたどり着いていた。

「でも、ずいぶん遠くまで来ちゃった感じよね」

「そうかも」

「尊厳重視で、ぜ〜んぜん周り見てなかったからなぁ」

「まあ、照明が落ちてて暗かったしね」

 あまりにも慌ただしく移動してきたので、いったいどんな場所や廊下を進んできたのか、三人はあまり把握していなかった。ここはどこなのだろうか?

 その時、遠くの暗闇からいくつかの足音が聞こえ始めた。

「泉崎せんぱ〜い!」

 愛理の声が響く。

「やっと追いついたで。えらい遠くまでトイレ無かったんやなぁ」

 両津たちも、ひかりたちに追いついたのだ。

「どうやら間に合ったみたいだな、ベイビー!」

「良かったですわ」

 ピシッ!と、再びひかりが敬礼した。

「遠野ひかり、17歳!無事、人間の尊厳は守られますた!」

「それ、さっきやったわよ」

 奈々の突っ込みに、ひかりが照れたように笑う。

 別に、照れる要素はどこにも無いのだが。

「途中の電子ロック、どうやって解除したんや?」

 両津が不思議そうに首をかしげた。

「どう説明すればいいのかなぁ」

 奈々がちょっと困り顔になる。

「えーとえーと」

 奈々を困らせまいと、ひかりが口を開いた。

「私ね、お願いしてみたの」

「お願いやて?」

「うん。鍵さん、ここを通してくださいって」

 顔を見合わせる一同。

「それも、機械の思いが分かるってヤツかな?ベイビー」

「うん。このままだと、人間の尊厳が崩壊する重大事件になってしまうから、なんとか扉を開けてって」

「尊厳崩壊って、すごい表現ですわね」

 奈央がおかしそうにフフッと笑う。

「そんげんほうかいって何ですかぁ?」

 愛理の疑問に、ひかりがすっぱりと答えた。

「○○○○が漏れることだよ」

「直接的すぎーっ!」

 ひかりの言動に、漂っていた不安な空気が緩んでいく。

 みんなの気持ちをあたたかくする、この子はそういう子なのだ。

「でも、両津くんたちはどうやって電子ロック解除したの?」

 今度は奈々が首をかしげた。

「まあ、遠野さんと似たようなもんや」

「開けゴマを、色んな国の言葉で言ってみたんですぅ」

「日本語、英語、フランス語、そして最近わたくしがラジオ講座にハマっているアラビア語でまで言ってみましたわ」

「ほんで結局、ボクの大阪弁で開きよったんや」

「ほえ〜」

 ひかりの反応は相変わらず謎だ。

「マリエちゃんもお願いしたものね」

「うん」

「と言うことは……」

 奈央が何事か考えているように、腕組みをする。

「あの電子ロックさんには自我があるということですわね」

「火星大王と同じっちゅーこと?」

「火星大王、さ!ん!」

「あ、ごめん、火星大王さんやったね」

 ひかりがちょっと膨れた顔を両津に向けている。

「しっかし、ここどこや? えらい広い部屋やなぁ」

「天井もずいぶんと高いですわ」

 やっと落ち着いてきたので、一同は自分たちがいる部屋を見渡した。

 確かに広い。教習用ロボットなら、そのまま20〜30台は収納できそうなスベースだ。だが照明は落ちていて、光っているのは非常灯のみである。目を凝らしてみても、全体像を把握することはできなかった。

「どないする? 久慈センセは最初の場所で待機せいって言っとったけど。このまま戻る?」

「戦士はいつでも好奇心旺盛だぜ!」

「あんたいつから戦士になったのよ?!」

「先週から」

「棚倉くん、それって戦士のダジャレかな?」

 ひかりがヤボな突っ込みを入れてくる。

「せんし、せんしゅ、せんしゅう、先週!バンザーイ!バンザーイ!」

「なんでバンザイなのよ!」

 そんなことをおしゃべりしながら、全員で壁沿いに探索を開始した。

 壁は一面、何かの機械で埋め尽くされていた。いわゆるコンソールのようで、キーボードやモニター画面が多数埋め込まれている。

「なんか機械だらけやな。棚倉くん、何か分かる?」

「うむ、何かをコントロールするためのコンソールとか、かもしれないぜ」

 機械だらけの壁に沿って歩いていくと、突然少し風景が変わった。

 まるでマンションのベランダのような手すりになっている。どうやら、四角い部屋の一辺が手すりになっていて、その先にもっと広い空間があるようだ。

「うわっ!たっか!」

 手すりから下を覗き込んだ両津が、軽く悲鳴を上げた。

 暗くてよくは見えないが、ここは数十階のマンションのベランダほどの高さにあるらしい。下を見ていると、闇に吸い込まれそうになる。

「奈々ちゃん、怖くないの?」

 ひかりの問いに、奈々はニヤリとする。

「私、高所恐怖症の気は無いのよ」

「お化け」

「ひぇぇ〜!」

 高い場所は平気な奈々だったが、よく考えると暗い場所は苦手なのだ。

「棚倉くん、やめなさいよ!」

「君は怒ると、」

「おい、あれなんや?」

 正雄の言葉をさえぎるように、両津が何かを指差している。

「暗くてよく見えませんが……何か、大きなものがありますわ」

「でっかいですぅ」

 そのシルエットはものすごい存在感で、そこに立っていた。

「ダイナギガ……」

 ひかりのつぶやきが、広い地下スペースに響いていた。

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