表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

149/508

第149話 包囲せよ

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

「警視庁機動隊だ!ロボットを捨てて、ただちに投降せよ!」

 夕梨花の声が、キドロの外部スピーカーから格納庫前広場に響き渡った。

 と同時に、奥多摩の深い森林から、機動隊のロボット「キドロ」三機が飛び出して来る。

 一機は泉崎夕梨花のキドロ01、近接戦闘用に開発された刀「ROGA」を装備。

 沢村泰三のキドロ02は、キドロ用にチューンされた30ミリ機関砲を構えている。

 門脇進のキドロ03は、巨大なダガーナイフだ。

「沢村、マルタイは例のシリンダーを積んでいる可能性が高い。作戦通り可能な限り発砲は避け、機関砲は威嚇にとどめておけ」

「キドロ02、了解」

 内調の佐々木によると、テロに用いる袴田素粒子は、水筒ほどの大きさのシリンダーに封入されているとのこと。もし間違ってそれを破壊したら、奥多摩一帯に素粒子が広がってしまう。それ以前に、ここへ落下してくる宇宙ステーションは袴田素粒子に感染しているのだ。火に油を注ぐような真似は御免である。

「幸いテロ実行犯たちのロボットは武器を所持していません。近接格闘で沈黙させてください」

 田中技術主任からの指示だ。

 後藤たちはちょうど、テロのシミュレーション訓練を始めるための打合せ中だった。おかげでまだ機関砲やナイフなどの武器を装備していなかった。

「お嬢ちゃん、やっとのお出ましかよぉ」

 後藤は小さくそうつぶやくと、ディスプレイに目を走らせる。田村の乗るアイアンゴーレムの腰あたりに、冬晴れの陽光を反射するステンレスの輝きが見えた。

「あいつをなんとかしねぇとなぁ」

 だが、彼らの説明によるとあのシリンダーは、ショックを受けると自動的に破裂する仕組みになっているらしい。もちろん夕梨花たちのキドロにも、対袴田素粒子防御シールドが装備されている。だが、あのシリンダー内の素粒子に、どの程度の拡散力があるのかが分からない。下手をすると、奥多摩駅や住宅街あたりまで到達する可能性も捨てきれないだろう。そうなれば暴走ロボットの大発生である。

「どうしたもんかなぁ」

 キドロはジワジワと、アイアンゴーレムとブラックドワーフに接近しつつあった。

「浦尾さん!どうしましょう?!」

 田村があわてて叫んだ。

 自分達のアジトに、いきなり機動隊が攻め込んで来たのだ。あわてて当然である。

 ディスプレイにワイプで映し出されている石井の顔もうろたえていた。

「落ち着け!あいつらをよく見てみろ。機関砲を構えてるのは一機だけだ。こっちが持ってるシリンダーの破壊が怖いんだよ。そう簡単には撃って来ねぇはずだ」

 ほう、こいつだけは冷静だな。

 俺がアラビアータをバカにした時の方が、よっぽど冷静さを失っていたぜ。

 後藤がニンマリと顔をゆがめた。

「なに笑ってやがる!ゴッド、何かいい手でもあるのか?!」

 田村は相変わらずうろたえたままだ。

 ディスプレイ上のキドロ三機を、キョロキョロとせわしなく見回している。

「そうさなぁ、だけどよぉ、四対三じゃねぇか。格闘戦なら、こっちに分があると思うけどなぁ」

 後藤はいつもと変わらない、トボケた口調でそう言った。

「それも一理ある。あっちはたかが機動隊のロボットだ。こっちは世界中のテロで活躍してる軍用ロボットだぜ」

 パチもんだけどな。

 後藤は心中でそう思うと、ニヤリと右の口角を上げた。

 おっと、シリンダーも気になるが、その前に俺にはやらねぇといけないことがあったんだわなぁ。忘れるところだぜぇ。

 そう思うと後藤は、左右のロボットアームをゆっくりと動かした。

 両手のひらをチョップの形にし、右腕の肘から上を立てる。そこに左腕を水平に重ねてクロスさせていく。


「スペシウム光線ですか?」

「はい。後藤さんがおっしゃるには、彼が子供の頃に好きだった変身ヒーローの必殺技だそうです」

 白谷部長の疑問に、内調の佐々木が淡々と答えた。

 今から数時間前。奥多摩へとひた走るトクボ指揮車での出来事である。

「いや、それは知ってはいますが」

「もし彼が敵のロボットに搭乗している場合の判別方法です」

「でも、ちょっと動きが派手すぎませんか?」

 田中美紀技術主任の疑問は当然だ。

 大きな動きや派手な振る舞いをすれば、ヤツらに怪しまれてしまうのではないか?

「私もそう言ったのですが」

 佐々木がすまなそうに苦笑する。

「彼が言うには、俺はいつもふざけているから、こんなことをしても俺らしいって怪しまれないだろう、と」

 そうだろうか?

 指揮車にいる全員の頭に、疑問が浮かんでいた。


「てめぇ、こんな時に何ふざけてやがるんだ!」

 石井の叫びが後藤へと向けられる。

「スペシウム光線」

「出るわけねぇだろーが!バカかてめぇは!」

「出たらめっけもんじゃねぇか」

 後藤が子供のような笑顔を見せた。

「部長!あのブラックドワーフはゴッドさんです!」

 指揮車内で美紀が叫ぶ。

「そのようだな。キドロ各機、聞こえたな?」

「聞こえました!」

 夕梨花と沢村、門脇が同時に答える。

 その時、指揮車とキドロ各機の無線に、陸奥と南郷の声が入電した。

「陸奥機、敵東側に到着」

「南郷機も、西側に回り込んだで」

 夕梨花たちのキドロ三機は、敵の南側に位置している。これで、北の格納庫側を除いて、敵を包囲したことになる。逆に言えば、敵の逃げ場は格納庫にしか無くなった。

「出ます」

 陸奥の静かな宣言と共に、陸奥と南郷のヒトガタが姿を現わした。

「おい!増えやがったぞ!」

「四対五になっちまったじゃねぇか!」

 田村と石井のうろたえが最高潮に達している。

 スキを見て、シリンダーを奪うとするか。

 後藤がディスプレイ上の銀色の輝きを確認する。

 ガガガっ!

 その時、黒き殉教者側の無線に、ノイズと共に誰かの声が入った。

「私が出よう」

 スーツの男だ。

 あいつ、操縦できるのか?!

 後藤は驚愕し、格納庫の入り口に目を向けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ