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第141話 格納庫で実験だ!

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

「ひかりは、火星大王の気持ちが分かるってのはハッキリしたわね」

「火星大王、さ!ん!」

「はいはい、火星大王さんね」

「よろし〜!」

 奈々の言葉に、ひかりが嬉しそうにぴょんとはねた。

「じゃあ、次はマリエちゃん。おんなじようにやってもろてもええ?」

「うん」

 両津にうなづくとマリエは自分のロボット、リヒトパースの前へ歩み寄った。

 静かに自分の相棒を見つめる。

 数秒間沈黙が続く。

 そして彼女は、皆の方に振り向いた。

「おなかいっぱいだって」

 皆の目が両津に集中する。

「マリエちゃんも正解や。バッテリー満タンやった」

 おお〜、と再び感動する一同。

「マリエちゃんはしっかり、陸奥教官の言いつけ守ってるじゃない。ひかりもちゃんとしないとね」

「バタンキュ〜」

「気絶してもダメ」

「ギャフン!」

 本当にぎゃふんて言う人、初めて見たわ。

 そう思いつつ、両津は素朴な疑問を口にした。

「自分のロボットやなくて、他のも分かるん?」

 確かにそうだ。

 ロボット時代全盛の今、街なかには自家用ロボットが溢れ、工事現場や商店などでは多くの業務用ロボットが働いている。そんな全てのロボットの気持ちが分かるのだろうか? それ以前に、全てのロボットに「気持ち」があるのか?

 両津の質問に、この場の全員の頭に同じ疑問が浮かんでいた。

「ううん」

 首を左右に振るひかり。

「全部じゃないよ。分かったり、分からなかったり」

「マリエちゃんはどうやろ?」

「私もそう」

 なるほど〜、と言う空気がこの場に流れる。

 まあ、何がなるほどなのかはよく分からないのだが。

 その時、奈央がパンと手を打った。

「そうですわ!せっかくですので、私たちのロボットの気持ちも、お二人に読み取ってもらいませんか?」

 奈央のステキな提案である。もちろん全員が大賛成に決まっている。

 まず最初は奈々のロボット、デビルスマイルだ。

 デビルスマイルの前に立つひかりとマリエ。

 二人共、その頭部あたりをじっと見つめている。

「うんうん、そーですか」

 ひかりはそうつぶやいてから、奈々に視線を向けた。

「えーと、奈々ちゃんは怒ると眉毛が三角になって怖いです、て言ってる」

「そんなこと言うわけないでしょ!」

 奈々の怒りに、ひかりが頭をかく。

「てへへ〜、バレたか」

「本当はどうなのよ?!」

 ひかりとマリエが顔を見合わせた。

「特に何も感じないよ」

「私も」

 安心したのかガッカリしたのか、奈々がふうっと息を吐く。

 だが、他の皆も奈々の気持ちがよく分かっていた。

 もし自分のロボットが何かを考えていたとしても、それを感じる力が自分にはない。

 つまり、何を考えているのか分からない相棒と一緒に日々を過ごすことになるのだ。ロボットが何かを考えているなんて知らなければ済む話だが、知ってしまった今では無視のできないことと言えるだろう。気持ちの問題である。

 その後も、次々と実験は進んだ。

 奈央のコスパ、愛理のラブリーなな、正雄のコバヤシマル。

 その全てが、反応無しという結果であった。

 そして残ったのは後一台。

「最後はボクのなにわエースや!」

 両津のロボットに視線を向けるひかりとマリエ。

 二人の視線が、なにわエースの頭部あたりに集中する。

 ひかりがふっと首をかしげた。

 マリエはなぜかにっこりとする。

「なんやなんや?!他のロボットと反応がちゃうやん!」

 あわてる両津に、ひかりが言い放った。

「両津くんはお笑いのセンスがイマイチ、て言ってるよ」

 え?!と言う表情になる両津。

「これはアレやろ? さっきの泉崎さんみたいに、遠野さんのギャグやろ?」

「違うよ。ね、マリエちゃん」

 ひかりの問いに、マリエが小さくうなづく。

「うん、私もそう感じた」

「そんなアホなぁ」

 自分のロボットに意思があったことに驚いているのか、お笑いのセンスが良くないと言われたことがショックなのか、自分でもどちらなのかが分からない両津である。

「でも、違いは何なのかしらね」

「違い?」

 奈々の疑問に、ひかりとマリエが並んで首をかしげた。

「気持ちがあったり無かったり、何の違いでそんなことが起こるのかしら……」

 う〜んと、考え込んでしまう一同。

「実はボク、前から考えてたことがあるねん」

「教習所の七不思議!」

 と喜んだひかりだったが、違っていた。

「いや、そっちやなくて、暴走ロボットって何か考えながら暴れてるみたいに見えへん?」

 両津の問いに、皆が「そうかも」とうなづく。

「確かにそうですわね。この前のヒトガタさんも、しっかり戦っていましたわ。何も考えていない暴走で、あんなにちゃんとよけたり攻撃したりできるのでしょうか?」

「確かにそうですぅ」

 奈央と愛理も首をかしげた。

「でも、火星大王さんは暴走してないよ?」

「リヒトパースも」

「ひかりはいつも暴走してるじゃないの」

 奈々の突っ込みに、ひかりがペロッと舌を出す。

「てへぺろ」

「マリエちゃんは暴走してへんから、関連性があるかどうか分からへんなぁ」

「暴走ロボットを止めるのは、市民の義務だぜ!」

 正雄が力強く言い切る。

「今はその話じゃないでしょ!」

「でもね、でもね」

 ひかりがぴょんぴょんしながら皆に抗議する。

「私が暴走してる時、火星大王さんはそれを止めてくれようとしてるみたいに感じるの」

「ホンマに?」

「ホンマにっ!」

「だとすると、暴走してるのはやっぱりひかり自身てことになるわよ」

「トホホのホ〜」

 奈々の突っ込みに、ひかりがすまなそうな顔になる。

「さすがは俺のライバルさんだぜ!」

「何がさすがなのよ?!」

 いつでも明るいロボット部のメンバーであった。

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