第132話 古里小学校
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
小学校の校庭に、寒々とした冬風が吹いていた。散らばっている落ち葉がくるくると回って、つむじ風が目に見えるようだ。舞い上がった茶色の葉々は、まるでダンスを踊るようにしばらく回転した後、ふわっと散っていく。
ここは奥多摩町立古里小学校。明治六年から続く歴史ある小学校であり、現在でも93人の児童たちが通っている。
奥多摩に吹く風は冷たい。東京都内とここでは、確実に気温が違っている。気象観測所がある千代田区と比較した場合、冬だと平均して4度前後も低いのだ。
そんな寒風の中、校舎は静まり返っていた。校庭にも児童の姿はない。
今日は平日なのだが、警察からの要請で突如臨時休校となり、児童たちは皆帰宅した後なのである。
「チヌーク、あと五分ほどで到着します」
機動隊のロボット部隊、トクボ指揮車内で田中美紀技術主任がそう告げた。
チヌークとは、陸自の大型輸送ヘリ「CH-47JAチヌーク」のことである。トクボ部隊はその到着を、ここで待っていた。搭載しているのは、陸奥と南郷が乗る最新鋭の軍用ロボット「ヒトガタ」なのだ。
トクボ指揮車と三台のキドロトランスポーターは、小学校のすぐ横を走る青梅街道に停車していた。古里小学校の校庭は、おそらくチヌーク一機の着陸でいっぱいになってしまうからだ。
その時、遠くからヘリの轟音が届き始めた。
ヘリは、奥多摩の冬風をかき回しながら、古里小学校にぐんぐん接近して来る。
「チヌーク、着陸態勢に入りました」
古里小学校の校庭を目指して、次第に高度を下げていく。
二つのローターの回転音が、爆音に移行していく。
校庭の真上まで到達すると、先程まで校庭を我が物顔で占領していたつむじ風を消滅させて、強烈な風があたりの木々の枝を狂ったように揺さぶり始める。
そしてゆっくりと着地した。
「こちらチヌークアビエーターのブルー。後部ハッチ開きます」
指揮車にチヌークパイロットからの声が届く。
「こちらトクボ指揮車の田中、急いでいるので助かります」
ゆっくりと開いていく後部ハッチ。
それは搭載車両がそのまま降りられるスロープになっている。
「部長、ヒトガタからの通信です」
「白谷部長、久しぶりやなぁ」
南郷の陽気な声が聞こえた。
「この南郷さんが、伝説の英雄といっしょに駆けつけたでぇ!」
伝説の英雄?
美紀が首をかしげる。
「南郷さん、その呼び方はやめてくださいよ」
陸奥の声が無線に割り込んでくる。
「ダスクの砂漠じゃそう呼ばれてるって、ゴッドが言うとったやん。あ、それに今じゃ教習所の生徒たちからもそう呼ばれてるし」
「参ったなぁ」
陸奥の苦笑が無線越しに伝わってきた。
「では南郷さんと……伝説の英雄さん、チヌークからヒトガタを降ろしたら、こちらの指揮車まで来て下さい。今回の作戦について説明します」
白谷の言葉に、陸奥は苦笑を深めていた。




