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第127話 大型輸送ヘリCH-47JA

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

「学食のアイス、おいし〜!」

 ひかりが食べているのはオーソドックスなバニラアイスだ。

 都営第6ロボット教習所の学食の人気メニューは、日替わりA定食とバニラアイスである。ここのシェフが、日替わり定食に力を入れるのは分からなくもない。なにしろ、ほとんどの生徒たち、8割以上が毎日食べる定番だからだ。だが、どうしてアイスにも本気なのかは教習所七不思議のひとつだ、とひかりは思っていた。

 食券の券売機の横に立てられたおしゃれな黒板には、本日のA定食のおかず内容が書かれている。そしてその下には、バニラアイスの説明が長々と書いてあるのだ。

 乳脂肪分が多く、ミルクの旨みやコクが抜群です!

 使用しているバニラビーンズはマダガスカル産です!

 乳化剤や安定剤は一切使用していません!

 そこには、例によってひかりや愛理の知らない言葉がずらりと並んでいる。

「まだ助かる?」

 ひかりがアイスをひと口、ぱくりと口に放り込みながら小首をかしげた。

「マダガスカル!」

「アフリカ大陸の南東沖にある島国で、世界で四番目に大きな島ですわ」

 奈々のツッコミに、奈央が解説を追加する。

「総面積はなんと日本の約1.6倍もあって、首都はアンタナナリボですわ」

「あんた奈々ちゃん!」

 ひかりが奈々を指差した。

「アンタナナリボ!」

「お勉強になりますぅ」

 愛理がバニラアイスのスプーンをペロリとなめる。

「ひかり、ここのバニラアイス、そんなにおいしいの?」

 マリエは初体験の抹茶アイスだ。

「マリエちゃんが食べてる抹茶アイスは日本の味だよ!絶対それもおいしいよ!」

「うん、おいしい……でも、」

「でも?」

「バニラも食べてみたい」

「いいよ!」

 ひかりが自分のアイスをスプーンですくうと、マリエの前に突き出した。

「はい、あ〜ん!」

「あ〜ん」

 ぱくり。

 あまり感情が表に出ないマリエだが、この時ばかりはパアッと顔が明るく緩んだ

「おいしい」

「じゃあマリエちゃんの抹茶アイス、私にちょうだい」

「分かった……あ〜ん」

「あ〜ん」

 ぱくり。

 ひかりも頬を紅潮させる。

「こっちもおいし〜!」

 それをうらやましそうに愛理が見つめる。

「私もバニラにすれば良かったですぅ」

 愛理のアイスはチョコレートだ。

「じゃあ私の食べる?」

「へ?」

 奈々からの突然の申し出に、全身が硬直する愛理。

 奈々がスプーンで、自分のバニラアイスをひとすくい、そして。

「はい、あ〜ん」

 愛理にとって、奈々からの初あ〜んである。

 ぱくり。

「おいしいですぅ〜」

 涙ぐみながらアイスを味わう。

「愛理ちゃん、涙でしょっぱくなってしまいますわよ」

「あ〜んしてもらうと、こんなにおいしいんですね」

 そんな愛理にマリエがうんうんとうなづいている。

「ところで奈々ちゃん、抹茶アイスって、どうして緑なの?」

「ん?」

「真っ茶なのに」

 その時、遠くから大きな音が響き始めた。

 何かが轟音を立てながら、ここへ近づいて来ているようだ。

「あの音って、またヘリコプターちゃうか?」

「屁こきブター」

「そうだな、だがこの音だとさっきのよりずいぶん大型だと思うぜ」

 一同、スプーンを置いて窓際に移動する。ひかりだけは、口にくわえたままであるが。

 窓から見えたのは、少し異様な光景だった。

「あんなに大きい屁こきブター、見たことないよ〜」

「ヘリコプター!」

「私もですぅ」

 メカマニアの正雄が目を細める。

「ありゃあ、陸自の大型輸送ヘリ、CH-47JAチヌークだな」

「チヌークって何ですかぁ?」

 愛理が可愛く小首をかしげた。

「それはね愛理ちゃん、献血のことだよ」

「それは血抜〜く!」

 よく分かったな!

 両津は大型ヘリより、奈々の分析力に驚いていた。

「弓矢で、」

「射抜〜く!」

「犯人はお前だ!」

「見抜〜く!」

 そんなやりとりをしているうちに、大型ヘリはどんどん教習所に近づいていた。

 ふたつのローターの回転音と、推進のためのジェット音がまさに轟音である。

 飛行している真下の海面には、連続的に大きな波紋が作られていた。

「ありゃあ、ここに着陸しそうだぜ、ベイビー」

「今日はどうなってるんや?」

「ヘリポートに行ってみましょう」

 奈々の言葉に、一同は再びヘリポートへ向かうのだった。

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