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第126話 作戦立案会議

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

「現着まで、あとどのくらいだ?」

「高速の混み具合にもよりますが、現状で考えておよそ一時間強と言ったところです」

 白谷の問いに、トクボ部員の一人がそう答えた。

 彼らを乗せたトクボ部隊一行は、中央自動車道を猛スピードで走っていた。気温がヒトケタにまで下がった真冬の北風が吹き付ける中、その一部にでもなったかのような疾走だ。

 トクボ指揮車内では、現在得られている情報を元にした作戦立案会議が続いている。だが一同の顔には、苦渋を噛みしめたような表情が浮かんでいた。

「アイアンゴーレム三機とガーゴイル二機なら、沢村さんと門脇さんのキドロ二機で、なんとか対応は可能だと思います。もちろん作戦次第ですが」

 美紀はそう言うと、白谷の顔を見た。

「問題はヒトガタだな」

「はい」

「泉崎さんはこの部隊のエースパイロットですが、さすがにキドロ一機で三機のヒトガタを相手にできるとは……」

 実際先日の、都営第6ロボット教習所での暴走ヒトガタの対処では、教習所の陸奥教官と後藤が乗った二機のヒトガタとの共同作戦でやっとの勝利を得ている。その時の相手は一機だ。今度は三機同時の対応になる。分が悪いにもほどがあった。

「たとえROGAを装備していたとしても、か」

 コードネームROGA-03、超硬合金製の日本刀だ。キドロによる格闘戦において、これからの主力武器とすべく設計されたものの試作機だ。先日の対ヒトガタ戦では大いに活躍した。

「泉崎さんはまだROGAによる戦闘訓練を受けていませんので」

「試作機だからな」

 指揮車に再びの沈黙が訪れる。

 それを破ったのは美紀だった。

「あの、佐々木さん?」

「なんです?」

「陸自のヒトガタに、出動要請は出せないのですか?」

 内調の佐々木がフッと苦笑した。

「それが難しいので、こうしてあなた方のキドロに頼っているのです」

「現行法では、さすがに無理でしょうね」

 公安の花巻が肩をすくめる。

「災害時の出動でさえ、都道府県知事からの要請が無いと不可能なのが現状です。今回の場合、防衛出動か治安出動になるので、たとえ実現するとしても、その決定までに数日、いや数ヶ月かかるかもしれません」

 自衛隊の防衛出動とは、日本に対する武力攻撃があったときに内閣総理大臣が自衛隊に防衛のための出動を命令することである。その場合対象となる事態は次の通り。

 我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態。

 武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態。

 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合。いわゆる存立危機事態である。

 だが、そんな場合においても、防衛出動するためには国会の承認が求められるなど、様々な制約が存在する。

 治安出動は、内閣総理大臣が間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力では治安を維持することができないと認められる場合に認められる出動のことだ。この場合原則として、出動を命じた日から20日以内に国会での承認が必要となる。

 つまり、どちらにしろ時間がかかるのである。

 陸自以外に、ヒトガタに対抗しうる装備を持っているのは?

 美紀がフッと顔を上げた。

「あの……第6教習所にヒトガタ、ありますよね?」

 あそこには確か三機のヒトガタが、陸自から貸し出されている。

 一機は先日の暴走騒ぎで大破したが、それでもまだ二機は健在のはずだ。

「なるほど……もしあのヒトガタの出動が可能だとして、奥多摩までどれくらいの時間がかかると思う?」

「佐々木さん、内調から陸自に、ヘリでの輸送要請は可能ですか?」

 美紀の問いに少し考え込む佐々木。

「そうですね……何か別の理由をつければ、不可能ではないと思います」

「別の理由を見つけるのは、お得意でしょう?」

 花巻の皮肉に佐々木が苦笑する。

「陸自の輸送ヘリなら、千葉県の木更津駐屯地の第1ヘリコプター団で待機しているはずです」

「木更津から東京湾、そして……」

 美紀が、コンソールの画面で時間を計算していく。

「教習所側の準備を並行して進めてもらえば、一時間ほどで奥多摩へ到着可能です」

 陸上自衛隊の主力輸送ヘリコプターは、チヌークと呼ばれるCH-47JAだ。

 アメリカのボーイング社によって開発された大型輸送ヘリコプターCH-47の改良型で、川崎重工業でライセンス生産されている。自国生産で、日本のためにカスタマイズされた機体とも言える。航続距離約1040km、実用上昇限度約2700m、そして巡航速度は時速約300kmと、世界に誇る高性能輸送ヘリだ。

 木更津駐屯地から東京湾まで約30km、そして奥多摩までは更に約70km。離陸着陸時のロスを考えても、巡航速度時速300kmは伊達ではない。

「その線でいくか」

「パイロットは?」

 そう聞いた美紀に、白谷は何かを決意したかのような顔を向けた。

「心当たりがある」

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