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第119話 素粒子とは?

「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

「それで結局、素粒子って何でしたっけ?」

 後藤が国際テロ組織のアジトに潜入し、機動隊のトクボ部隊がそこに駆けつけようとし、国連宇宙軍総合病院のアイが、リモートで対袴田素粒子防衛線中央指揮所の面々と会話をしているまさに同時刻、愛理の疑問が最初に戻ってしまっていた。

「だから愛理ちゃん、素粒子って言うのはとっても小さい粒のことなんだよ」

「とびっことちゃうで!」

 再び始まろうとしたひかりのボケ地獄に、両津が必殺のくさびを打ち込んだ……のだが。

「じゃあ数の子」

「ちゃう!」

「タラコ」

「それもちゃう!」

「明太子」

「それは辛いタラコや!」

「いくら」

「大きくなってるやん!」

「キャビア」

「ちょっと小さくなったやん!」

「からすみ」

「魚卵ばっかりやないかーい!」

「ごま」

「魚卵とちゃうやないかーい!」

 両津がハァハァと息を切らしている。

「こんな高速突っ込み、初めてや!もうええかげんにしなさ〜い!」

「小粒納豆」

「はいはい、ひかりもそのくらいにしてあげなさい。両津くん、もう疲れてるわ」

 奈々が呆れ顔でそう言った。だが、ひかりは天然なので、何をやめればいいのかが分からないらしく、小首をかしげている。

「クスクス」

「まだやるんか〜い!」

「じゃあ私から説明させていただきますわ」

 そんな様子を見かねたのか、科学に強いと豪語していた奈央が割り込んだ。

「難しいお話になりますので、しっかりと聞いてくださいね」

 奈央以外の全員が、コクコクとうなづいた。

「愛理ちゃん、例えばロボットは何でできていますか?」

「えーと、鉄とか、部品とか……」

「そうですね。じゃあその鉄を半分に切って、また半分に切ってと、どんどん細かく小さくしていくとどうなります?」

「なるほど、宇奈月くんの言いたいことが分かってきたぜ。分子ってやつになるんだろ?」

「あ、それ物理で習ろたヤツや!」

 正雄と両津が手を叩く。

「その通り。そんな分子ですが、まだ最小ではなくいくつかの原子でできています」

「どんどんちっちゃくなっちゃう」

 ひかりは理解が追いつかないと、今にも目を回しそうだ。

「そして原子も、原子核とその周りを飛ぶ電子でできています」

 愛理もひかりと同様の様子である。

「この電子こそ、レプトンと呼ばれる素粒子なのです」

「リプトン」

 ひかりの頭脳は、この会話とは全く違う反応を返すようになっていた。

「原子核も、陽子と中性子でできているのですが、この陽子や中性子もクォークという3つの素粒子で出来ています。そしてこれらの素粒子は、もうそれ以上は細かくすることができません」

「うーん……じゃあ素粒子って、それ以上は細かくできない物ってこと?」

 奈々が、まさに的確な質問をした。

「そうなんです。この世界の一番小さな存在こそが素粒子なのです。そして、この世の全ての物質、ロボットも、人間も、テスト用紙も、ステーキも、アイスクリームも、素粒子でできているのですわ」

「アイス食べた〜い!」

「私も」

「マリエちゃん、後で学食にアイス食べに行こ!」

 マリエには宇宙病の感染経験があった。両親も宇宙病で亡くしている。宇宙病の正式名称は袴田素粒子感染症候群だ。マリエにとって素粒子は憎むべき存在であり、その実体を学ぶべき相手だと言える。そのため、奈央の講義内容をマリエは全て知っていた。

「ニュースなどでよく聞くニュートリノも、素粒子の一種ですわ」

「ニュートリノ?」

 また愛理の知らない名前の登場だ。

「もしかしたら、ニュートリノってイタリアの大阪かなぁ?」

「どういうこっちゃ?」

「だって、大阪に新大阪ってあるでしょ?」

「はぁ?」

「新しいトリノだからニュートリノ!」

「新神戸も新横浜もあるわ!」

 また高度なボケかましてきたなぁ。

 遠野さん、ポエムやなくてコント作家に向いてるんちゃうか?

 などと、両津は感心していた。

「ニュートリノはとってもとっても小さな素粒子なので、原子の中でさえ通り抜けてしまいます。つまり、どんな物質をもすり抜けていくのですわ」

「私たちのカラダも?」

 奈々の問に、なぜか奈央が嬉しそうにニヤリと笑う。

「もちろんです。人間もロボットも地球も、どんな物でも。こんなお話をしているこの瞬間にも、1秒間に約100兆個のニュートリノが、私たちの体を通り抜けているのですわ!」

「どおりで、なんだかくすぐったいわけだぜ」

 正雄がもぞもぞしている。

「ニュートリノには、電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、そしてタウニュートリノの三種類がありまして……」

「ああ〜!私もう頭がバクハツしちゃうよ〜!」

「私もですぅ〜!」

 ひかりと愛理が音を上げた。

「じゃあ今回はこれくらいにしておきましょうね」

「今日はこれぐらいにしといてやるぜ!」

 ひかりが奈央の言葉にかぶせてきた。

 あんたは吉本新喜劇か!

「うむ。分かりやすい説明をありがとう、ベイビー」

「分かりやすくないわ〜い!」

 奈央の素粒子講座は、マリエ以外の全員が理解できないまま終了したのであった。

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