第118話 奥多摩へ
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
「宇奈月先輩、どうして愛理のお母さんのこと、知ってるんですかぁ?」
ひかり達いつものメンバーは、校舎裏のヘリポート横広場でまだおしゃべり中だった。一応自習ということになっているはずなのだが、誰一人として教科書を開いている者はいない。
「SFファンは、科学にも詳しいのです」
「先輩、特撮ファンじゃなかったでしたっけ?」
愛理が小首をかしげる。
そんな愛理に奈央は、ニヤッと笑顔を向けた。
「特撮もSFなのですわ!」
「えーと、奈央ちゃん、とくさつってなぁに?」
珍しくひかりが質問を投げた。
その問いに、なぜか正雄が答える。
「毒を飲ませて相手をころ、」
「そりゃ毒殺や!」
この顔ぶれでは珍しく、両津がツッコミを入れた。
「ボコ殴りして相手をころ、」
「撲殺!」
「首を絞めて、」
「絞殺!」
「ひえ〜!」
そこに奈々の悲鳴がかぶさった。
「どーして殺し方ばっかりなのよ!怖いじゃないの!」
「お化け」
「ひえ〜!」
「オマケ」
「……」
「お化け」
「ひえ〜!」
「やっぱり面白いな」
「特撮と関係ないじゃない!」
「特撮というのは、」
正雄と奈々の応酬に、奈央の冷静な声が割り込んだ。
「特殊撮影のことです。映画やドラマなどの映像作品で、撮影するのが困難なものを再現する技術のことですわ。でも、最近では実写の変身ヒーローや怪獣映画のことを指す言葉になっています」
的確な解説である。
「ほえ〜」
ひかりからいつもの声が漏れた。
「それとね奈央ちゃん、えすえふってなぁに?」
ひかりの2問目にも、正雄がすかさず答えを出そうとする。
「縄とかロウソクを使って、」
「それはSMでしょ!」
「あら泉崎さん、そんな言葉知っているんですわね」
奈央がニヤニヤして奈々を見た。
奈々の頬が赤くなる。
「経験あるのかい?ベイビー」
「知ってるだけで、やったことは無いわよ!」
「ほう、どんなことをするのか知っているんだね、ベイビー」
どんどん深みにハマっていく奈々である。
そこに奈央から助け舟が入った。
「サイエンス・フィクションの略称がSFですわ。科学的な事柄を用いた小説だと思えばいいのかもしれません。未来や宇宙が舞台だったり、巨大なロボットやサイボーグが出てきたり」
「ほえ〜」
「それで、どうして愛理のお母さんのこと、知ってるんですかぁ?」
「SFファンは、科学にも詳しいのです」
堂々巡りであった。
「今回は三機のキドロでいく」
白谷部長の声に、トクボパイロットの夕梨花、沢村、門脇がうなづく。
ここはトクボの機動ロボット、キドロ格納庫内のブリーフィングルームだ。報道関係でブリーフィングルームと言うと、政府高官や報道官などが報道陣と会見するのに用いる部屋のことだ。だが機動隊内では、軍事用語と同じで作戦会議室の意味になる。
「奥多摩までは、中央自動車道でおよそ二時間です」
沢村がこの部屋に備えられたパッドを操作しつつそう言った。
「現在監視用ドローンを先行させています」
田中技術主任がコンソールを操作すると、壁のディスプレイに東京の街並みが映し出される。
「どのぐらいで着く?」
「直線コースで飛べるので……おそらく、一時間かからないかと」
「うむ。作戦は、ドローンで相手の状況、戦力を把握してから移動中の指揮車で決定する。急いでキドロとトランスポーターの準備を!」
「了解!」
夕梨花たちキドロパイロットと、キドロ運搬車であるトランスポーターのドライバーがそれぞれの格納場所へ散っていく。
「白谷さん」
内閣情報調査室の佐々木が声をかけた。
「私たちも指揮車に乗せてもらってもいいでしょうか?」
一瞬の逡巡の後、白谷はうなづいた。
「いいでしょう」
こうして、内調の佐々木、公安の花巻も奥多摩に同行することになった。




