第103話 おみくじ
「超機動伝説ダイナギガ」がなんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。
「奈々ちゃん!奈々ちゃん!どんなお願いごとしたの?」
ひかりは興味津々である。
「初詣での願い事は他の人に言っちゃダメなのよ」
「はにゃ?どうして?」
「いろんな説があるみたいだけど、他人から受ける負の感情の影響を受けないようにってことらしいわ」
「負の感情ってなんですかぁ?」
愛理も小首をかしげている。
「そんな願いなんて叶わなければいいのに、とか、思う人が周りにいるかもしれないでしょ?別に悪い人じゃなくても、お仕事のライバルだったりするとあり得ることだと思うわ」
ふんふんと、ひかりと愛理がうなづきながら聞いている。
「そういう負の思いがあると、その願い事は叶いにくくなる、なんて言われているのよ」
「マジか!ほんならみんな、願い事はないしょにした方がええな」
「そうだな、俺にはライバルさんが多いからな!ベイビー」
ひかりがちょっともじもじしている。
「でもね……半分ぐらいなら言っても良くないかな」
「ひかり、願い事発表したいの?」
「ううん、奈々ちゃんには聞いて欲しいかなって」
「分かったわ。じゃあ全部が分からないように、半分で止めてね」
「うん!あのねあのね、私がお願いしたのはね……奈々ちゃんとずっといっしょに、」
「はいスト〜ップ!」
ひかりがお口にチャックのジェスチャーをする。
奈々はなぜか頬がちょっと赤くなっている。
「あら遠野さん、動きがちょっと古いですわ」
「うん!私のお父さん考古学者だから!」
デジャヴである。両津はついニヤリとしてしまった。
「じゃあ、おみくじ引きに行きましょう」
気を取り直して奈々はそう言うと歩き出した。みんなでズラズラとそれに続く。
浅草寺のおみくじはセルフサービスだ。
『みくじ100円』と書かれた穴に100円玉を入れ、置いてある金属製の六角形の箱を自分で振る。小さな穴から一本の木製の棒が出てくるので、そこに描かれている数字を読む。そして、たくさんの小さな引き出しの中からその番号のものを見つける。その中に、おみくじが入っているのだ。
「おみくじを引く前に、またまた注意事項よ」
奈々の講義が始まる。
「浅草寺のおみくじは、凶が多いって言われてるの」
「きょーっ!」
ひかりが変な悲鳴をあげた。
それを無視して奈々は続ける。
「だいたい三割が凶らしいわ。だから、凶が出てもがっかりしないでね」
「でも、凶は凶ですわよね?」
奈央も心配そうだ。
「初詣で凶を引いても、これから一年通してずっと運勢が悪いって意味ではないの。なんて言うか、今は凶でもこれから運が巡ってくる、これ以上悪くなることはないからこれから勢いを出していこう!みたいに考えるべきなんだって」
「どんな結果が出ても、その後の努力が大事ってことやな」
ふむふむと、全員がうなづいた。
「ところでひかり」
「ふへ?」
急に振られて変な声を出すひかり。
まぁさっきから変な声を出し続けてはいるが。
「おみくじの結果って、どれがどれよりいいか悪いか、知ってるの?」
「しっりませ〜ん!」
「私もよく分かんないですぅ」
奈々はふっとため息をつくと説明した。
「運がいい方から言うわよ」
「うん!」
両津がズッコける。
「一般的にはね、大吉、中吉、小吉、吉、末吉、凶、そして大凶」
「小吉と末吉がどっちがいいのか、いつも迷ってしまいますわ」
「知れて良かったですぅ」
「じゃあ、私から引くわね」
奈々を筆頭に、次々とおみくじを引いていく。
そして結果は?
奈々は大吉。
ひかりは小吉。
奈央は吉。
愛理は中吉。
マリエは大吉。
正雄は凶。
両津は大凶だった。
七人中二人が凶。確かに三割が凶というウワサは本当のようだ。
「一年のスタートから大凶って、最悪や〜!」
両津の嘆きが浅草寺に響く。
「俺のと交換しないか?両津くん!まあ俺も凶だけどな!」
正雄がニヒルな笑顔で両津に言った。
「ええの?凶でも大凶よりはマシやで!」
「交換なんかダメに決まってるでしょ。さっき私が言ったこと聞いてなかつたの?おみくじの結果が悪くても、これ以上悪くなることはないから後は良くなるのみ!って考えなさい」
「すいませーん」
「すんまへーん」
正雄とジョニーがユニゾンで答えた。
平和なお正月である。
この平和がいつまで続くのか……。
それはここにいる誰もが、まだ全く知らずにいたのである。