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第102話 参拝

「超機動伝説ダイナギガ」が今年(2023年)なんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

「宇奈月先輩!あれ見てください!」

 愛理が仲見世通りのひとつの店舗を指差した。

 看板には『芋ようかん 舟和』とある。

「わたくしたちが大好きな芋ようかんですわね」

 奈央がニッコリと笑った。

「二人とも芋ようかんが好きなんか?なんや、おばぁちゃんみたいやな」

 そんな両津の突っ込みをものともせず、愛理と奈央はその店に突進した。

「愛理ちゃん、奈央ちゃん、芋ようかんてそんなにおいしいの?」

 ひかりが興味深げに聞く。

「とってもおいしいですぅ!」

「実は、これにはわけがございますの」

 奈央がひかりに顔を向けた。

「わたくしと愛理ちゃん、二人が大好きな特撮ドラマに、芋ようかんが出てくるんです」

「爆笑戦隊バスレンジャーですぅ!」

「バスレンジャーは宇宙のカミナリ族、ビリゾックと戦っているのですが、敵の怪人さんは舟和さんの芋ようかんを食べると巨大化できるんです」

「コンビニの芋ようかんだと逆にちっちゃくなってしまうですぅ」

 ひかりはキョトンと小首をかしげる。

「なんにしろ、おいしいってことだよね!」

 正解だ。ひかりはおいしければ何でもいいのである。

うれしそうに舟和の芋ようかんを買い、店先でむしゃぶりつく愛理と奈央。そしてひかりも便乗してパクついている。

「ひかり、他にもおいしいものがたくさんあるから、ちゃんとその分のお腹あけとくのよ」

「了解しましたっ!」

 奈々に敬礼するひかり。

 結構さまになっている。なにしろ機動隊の田中技術主任の直伝なのだ。


 その後ひかりたちが仲見世通りで食べたのは以下である。

 壱番屋の手焼きせんべい。

 職人さんが、店頭で一枚一枚炭火で焼き上げるせんべいだ。店に近づくと、とても香ばしい香りと海苔の香りがするので、すぐに見つかるだろう。一番の人気は「浅草のり」。目の前で焼き上げたせんべいに醤油をくぐらせ、海苔を巻いて完成。アツアツのせんべいはサクサク、そして海苔がパリッとしていて絶品なのだ。

 九重の揚げまんじゅう。

 仲見世には揚げまんじゅうのお店がいくつかあるが、特に有名なのが九重だ。種類も豊富で「こしあん」「抹茶」「さくら」「黒ごま」「カスタード」「さつまいも」「かぼちゃ」「もんじゃ」などなど。高級な油を3種類ブレンドし、まんじゅうに衣をつけてカラッと揚げる。生地も軽く、油で揚げているのに油っぽさがほとんど感じられない。女性でもさくっと一個食べられるオススメの逸品である。

 木村家本店の人形焼。

 浅草でもっとも古い人形焼のお店が木村家本店。職人さんが型に生地を流し入れ、あんを投入、ひとつひとつ丁寧に作る工程をガラス窓越に見物できるので興奮間違いなし。焼き上がりをすぐに食べられるので、普通では体験できないアツアツの人形焼にありつける。こちらもオススメのお店なのだ。


「うにゃ〜、お腹いっぱいだよ〜」

 ひかりがお腹をさすさすしながら言った。

「私もですぅ」

「買って食べてがスイスイできましたので、時間のコスパに優れてますわ」

「全部、初めて食べたけどおいしかった」

 マリエがニッコリと笑った。

「俺はまだまだ行けるが、その前に言っておかねばならないことがある……ジョニー、満足っ!」

「満腹っ!の間違いじゃないの?」

「そうとも言うぜベイビー」

「満腹になったところで、参拝の続きや」

 仲見世を進むとすぐにお水舎おみずやがある。参拝前に身を清める場所である。

「奈々ちゃん、どうすればいいの?」

「見ててね」

 奈々は左手で右の振り袖を抑え、右手でひしゃくを持って水をすくう。その水でまずは左手を洗う。

 次にひしゃくを左手に持ち替え、同様に右手を洗う。

 再びひしゃくを右手で持ち、左の手のひらにくぼみを作って水をため、口をすすぐ。

「お口をすすぐ時に、ひしゃくに直接口をつけたらダメだからね。他にもたくさんの人が使うんだから」

 ひかりたちは順に、奈々の見様見真似でがんばってみる。

 みんなぎこちなくはあるが、なんとかこなせたようだ。

 奈々だけは、口をすすいだ後、右手で持ったひしゃくを立て、残った水でひしゃくの柄を洗った。

「奈々ちゃん、なにそれカッコいい!私もやってみたい!」

 ひかりはもう一度口をすすぎ、奈々の真似をしてひしゃくを思い切り立てた。

 その残り水がひかりの顔を直撃する。

「もう、ひかりは落ち着きがないんだから」

「てへへへ」

 奈々はハンカチを取り出し、ひかりの顔をふいた。

「あれ、うらやましいですぅ。私もやるですぅ」

「ダメですよ愛理ちゃん、わざとやっても泉崎さんはふいてはくれませんわ」

「そっかぁ」

 その先に進むと、お香がたかれた常香炉じょうこうろが見えてくる。ここで上がっている煙を浴び、心身を清めるのだ。

「あの煙をあてると、カラダの悪いところが治るって言われてるわ。どこか痛いところがあったら、そこに煙をあてるといいみたい」

 奈々の言葉に、ひかりがまっさきに動いた。

 一生懸命、自分の頭に煙をなすりつけている。

「奈々ちゃん、これで私の頭良くなるかな?」

「私もやるですぅ!」

 愛理も始めた。いや、気がつくと奈々以外の全員が自分の頭に、常香炉から立ち上るお香の煙をかけている。

「これで次のテストはバッチリだぜ!」

 常香炉の横を抜けると、もう目の前に巨大な本堂が現れる。

「でっか〜い!」

「おっきいですぅ!」

 さあ、いよいよクライマックスの参拝である。

「簡単に説明するね」

 奈々が全員を見渡した。

「浅草寺にはたくさんごの利益があって、商売繁盛、恋愛成就、所願成就、学業成就などなど!」

「ちよっと何言ってるのかわっかりませ〜ん」

 ひかりが首をかしげている。

「分からなくても大丈夫。要するにどんなお願い事でもいいってことよ」

 奈々は説明をはしょった。

「まずはお賽銭を入れる。できれば穴の空いた小銭、五円玉か五十円玉の組み合わせがいいって言われてるわ。15円はいいご縁、25円は二重のご縁、45円は始終のご縁、なんて風に」

 みんな、事前に奈々から聞いて五円玉と五十円玉を用意してきていた。

「そして合掌……両方の手のひらを合わせて、一礼。その時にお願いごとを心で念じるの。ここで注意が必要なのは、神社じゃないから柏手かしわで……えーと、手をパンパンて二回叩くのはやらないでね」

「ほえ〜」

「理由は知らなくていいわよ、ひかり。私が言ったとおりにお願いすれば、きっといいことがあるから」

「うん!奈々ちゃんの言う通りにやってみる!」

 そして七人で横並びになり、合掌一礼する。

 パンパン……と、小さく柏手のような音が聞こえたが、一同は無視して願いを唱えていた。

 もちろん、ひかりの拍手であった。

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