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第101話 初詣

「超機動伝説ダイナギガ」が今年(2023年)なんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。なお、当時の作品をご存知無い方も楽しめるよう、お話の最初から進めていきたいと思います。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

 元旦の浅草は大にぎわいである。観光客、買い物客などであふれている。今はお昼時を少し過ぎているため、飲食客もより多くなっていた。

「遠野さん、こっちや、こっち!」

 雷門の前で、両津はひかりに大きく手を振った。

 もう他の全員が揃っている。遅刻なのはひかりだけなのだ。

「みんなで初詣に行かない?」

 正月休み前に奈々が言ったひと言は、その場にいた全員が賛成し即座に決定となった。初詣での参拝方法などにうとい生徒たちだが、浅草寺の近くに住んでいる奈々と一緒なら心強い。

 待ち合わせは雷門の前にお昼の12時。だがすでに12時15分を過ぎている。

「だってお正月なんだもん」

 そんなひかりの言いわけは、おそらくいつものメンバーには通じないだろう。なにしろひかりは、合宿中でも遅刻の常習犯なのだから。

「お待たせ〜!」

 やっと合流である。

 集まったのは、泉崎奈々、宇奈月奈央、伊南村愛理、マリエ・フランデレン、棚倉正雄、両津良幸、そして遠野ひかりの七人だ。

「やっぱり遅刻して来たわね」

「だって、奈々ちゃんが起こしてくれないから〜」

「いつもは寮で同室だから起こしてあげてるけど、実家じゃ無理でしょ」

 そうなのだ。いつしか奈々は、毎朝ひかりのことを起こすようになっていた。

「それより奈々ちゃん!奈々ちゃん!」

「なによ」

 ひかりは奈々のいでたちに目を丸くしていた。

 今日の奈々は、正月らしい晴れ着姿なのだ。赤を基調にした振り袖が、まぶしいほど似合っている。

「奈々ちゃん……すっごくキレイ」

「あ、ありがと」

 いつものように、奈々が頬を赤らめた。

「そのくだりは、さっきみんなでひとしきりやった後や。さっさと行くで」

 両津はそう言ったが、ひかりのリアクションはまだ終わらなかった。

「じ、ジョニー?!」

「何を驚いているんだい?そこのお嬢さん」

「アメリカから初詣に来たの?!」

「すごいだろ?まさにゴイスーさ」

「あんたの実家、埼玉でしょ!」

「埼玉と書いてミネソタと読むのさ」

「どうやったらそう読めるのよ!」

「こうやればいいのさ!」

 いきなり正雄が逆立ちをした。混雑する観光地で実に迷惑である。

「ほら、俺は今地球を一人で持ち上げているんだ!みんなもやってみないかい?!」

「やめなさいって!」

 逆立ちをする気満々で両手を地面に着けたひかりを、奈々が思いっきり制止した。

「アホなことやってんと、そろそろ参拝に行くで」

 いつものパターンに両津が肩をすくめる。

「さんぱいって何ですかぁ?」

「愛理ちゃんそれはね、」

 ひかりが両手の土をパンパンと払いながら言う。

「会社とか工場とかのゴミのことだよ」

「それは産業廃棄物の産廃!そんな言葉、よく知ってるわね」

「じゃあこの人」

 ひかりが奈々を指差した。

「先輩!」

 愛理が嬉しそうに叫んだ。

 遠野さん、分かっててわざとやってるんちゃうか?

 両津はそう思い、首をかしげた。

 もちろんそうではない。ひかりは天然さんなのだ。

「愛理ちゃん、参拝とは神社仏閣にお参りすることですわ」

 奈央が正解を言う。

「泉崎さん、浅草寺の参拝って、もうここから始めるんやろ?」

「そうよ。まずは雷門の前で、両手を合掌させて一礼するの」

「がっしょうって?」

「みんなでお歌を歌う、」

「はいはい、それはいいからみんなで手を合わせるで!」

 愛理とひかりの会話を中断させて両津が合掌した。

 全員で合掌一礼する。ひかりと愛理も両津のマネをした。

「ほんじゃ、レッツラゴーや!」

「レッツラゴ〜っ!」

「レッツラゴーですぅ!」

 意味も分からずにひかりと愛理が復唱する。

 さあ初詣だ!

 一同意気揚々と雷門をくぐり、仲見世通りに突入する。

 七人ははぐれないように、人混みの中をゆっくりと進んだ。

「あれれ?とってもいいニオイがするよ?」

「あれですぅ!おいしそうですぅ!」

「奈々ちゃん、あれなぁに?」

 奈々はひかりが指差す方を見る。

「あづまさんのきびだんごよ」

「きびだんご?!桃太郎さんの?!」

 奈々はちょっと考えてから答えた。

「たぶんそう。キビっていう穀物を使って作るお団子よ。あづまさんのは、江戸時代の味を再現してるみたい」

「食べよ!みんなで食べよ!」

「私も食べたいですぅ!」

 仲見世にはおいしい店がいっぱいだ。そんな店で買い食いするのも、浅草寺での初詣の醍醐味である。

「ひとつだけ注意点があるわ」

 奈々が一同を見渡す。

「仲見世じゃ買い食いはいいけど歩きながら食べるのは禁止されているの。イートインがあるお店はそこで、無かったら立ち止まって食べるのが規則。食べ終わったゴミは、それを買ったお店のゴミ箱に捨てるのよ」

「はーい!」

 さすが地元民の奈々である。やはり奈々と一緒に来てよかった、と一同そう思っていた。

「ほら、買ってきたで。お金は後で精算や」

 両津があづまのきびだんごを二人前買ってきた。

 一人前につき五本、全部で十本だ。

「わたしそんなに食べられないよ〜」

「全部ひかりが食べてどうするのよ!みんなで分けるの!」

「えへへへ」

「女子は一本ずつでええやろ?俺は二本、棚倉くんはよく食うから三本な」

「まかせろ!」

 あづまのきびだんごには、甘みのあるきな粉がたっぷりとかかっている。小さくて可愛く、女子でもパクっと完食できるのが素晴らしい。なぜなら、仲見世には他にも買い食いしたいものが山程あるのだから、

「甘〜い!」

「おいしいですぅ!」

「美味ですわ」

「すごくおいしい」

 全員が笑顔になる。

 今年はステキな年になりそうだ。

 みんな、そう感じていた。

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