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第10話 握手

「超機動伝説ダイナギガ」が今年(2023年)なんと25周年とのこと。四半世紀です。時の流れの恐るべき速さに呆然としてしまいます。そんなわけで、当時色々と書き溜めていたプロットや設定を元に、小説化してみようと思い立ちました。四半世紀前にこんなものがあった、そんな記録になれば良いなあなどと考えています。とりあえずのんびり書き進めますので、よろしかったらのんびりお付き合いくださるとありがたいです。更新情報は旧TwitterのXで。Xアカウントは「@dinagiga」です。

 コンコン……所長室に乾いた音が響いた。在りし日の、あの重厚な分厚い扉を打つ音ではない。うすっぺらなベニヤを叩く、軽いちょっと高めの音だ。今の所長室をノックする音である。

 慣れない音に少々とまどいながら雄物川は音へ向かって声をかけた。

「入りたまえ」

ガチャリ、そんな品の無い音と共に所長室の扉が開く。

「失礼します」

久慈彩香、そしてマリエが入ってくる。

「ちょうどいい……みんな、久慈教官だ。今日アムステルダム校から戻ってきた」

「久慈です」

 彩香は気品の漂う美しいものごしで、生徒達をゆっくりと見渡した。

「これから陸奥教官と一緒に、あなた方を教えることになります。よろしくね」

 生徒達のとまどいは、彩香の美しさや気品のせいだけではなかった。原因はマリエである。この天使のように美しい生徒は一体何者なのか……。

「彼女はマリエ・フランデレン。私と一緒にアムステルダムからここへ来ました」

 マリエがゆっくりと顔をあげる。

「明日から皆さんと一緒に学びます。仲良くしてあげてね」

 ひかりがいぶかしげにそっと尋ねる。

「あの……もしかしてさっき私の火星大王を止めてくれたのは……」

「そう……マリエよ」

 ひかりの顔がパッと明るくなる。

「助けてくれてありがとう!私、遠野ひかりです!よろしくね!」

 ゆっくりと視線を上げ、ひかりを見つめるマリエ。

「とおの……ひかり」

「そう!ひかりって呼び捨てにしてね!」

「ひかり……」

 マリエのまわりにわっと集まる一同。

「私は泉崎奈々。あなたの操縦テクニック、凄いわね!びっくりしちゃった」

「宇奈月奈央です。最近為替レートが安定してませんから、あちらのお金を円に換えるのはもう少し待った方がいいですわよ」

「伊南村愛理ちゃんで〜す!マリエさん、キレイですね〜。髪の色がとってもステキ!」

「俺のことはジョニーと呼んで……」

「棚倉正雄!」

 奈々が割って入る。

「ま、どっちでもいいが……君は俺のライバルさんだ。お互い切磋琢磨して行こうゼ。千里の道も一歩から、全ての道はローマへ通ずって言うからな!は〜っはっはっは!」

 みんなが一斉にマリエに握手を求めようと手を出した。たくさんの手がぶつかり合う。こりゃダメだ……一瞬そんな顔をした一同だったが、マリエの手を中心にしてむちゃくちゃに手を握りあうことに成功、大きく上下にゆする。なんだか楽しい握手である。

 奈々が吹き出す。奈央と愛理も笑う。ひかりはニコニコが止まらない。正雄はさっきから笑い続けている。

 マリエにとって、それは初めての経験だった。何人もの人間が彼女の手を奪い合うように握り、楽しそうに笑いあっている。

 マリエはキョトンとした表情で、そんなみんなを見つめていた。

「さて……解散してよろしい」

 雄物川の声がむちゃくちゃな握手をストップさせた。このまま放っておいたらいつまでやっているかわからない……そう思わせるほどみんな楽しげだったのだ。

「教室に戻ったら自習しているように。交通法規のテストは目の前に迫っているんだからな」

 そんな陸奥の言葉がみんなを現実に引き戻した。もつれていた握手をほどいて、それぞれ自分の教室に戻ることにする。

「遠野」

 出口の扉に向かっていたひかりに陸奥が声をかけた。

「はい!」

「大事をとって医務室に行っておけ」

「え?別に怪我はしてませんが」

「お前のことだ……暴走中に頭をぶつけていても、忘れてしまってるかもしれないだろう?」

 あわてて自分のアタマをナデナデしてみるひかり。

「えっと、大丈夫みたいです…」

「いいから行け!」

「は、はいっ!」

 教室に戻っていくみんなに手を振り、ひかりはひとりで反対方向の医務室へ向かった。

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