8話 テラの本領発揮
ぶっ続けで狩りをしていた為、少し休憩を挟もうと、朝ごはんを食べてホームに戻る。ホームに着くなりテラがズボンをクイクイと引っ張ってくる。これはテラが何かを作りたい時にしてくる合図だ。
「ん?何か作るのか?」
コクコク
「うん、好きに作っていいぞ」
地面に胡座をかいて座り、テラが作業している様子を黙って見ていると、ポンっと音と共に【携帯クラフター作業台】というアイテムが出来上がった。
これは持ち運び出来るクラフター専用のアイテムのようで俺には使えないようだ。テラは出来上がったばかりの作業台を地面に設置し、再び作業を始めた。
ふと幼いテラに作業台が扱えるのかと少し心配だったが、作業台の大きさはテラが使いやすいように自動で調整されるようで一安心だ。
少しすると作業は終わったようだがアイテムは出来上がらず、代わりに作業台の上にHPバーのような物が表示され、徐々に減っていっている。
「お?新しい要素だな……高度なアイテムを作る時は待機時間みたいなやつが発生するのか」
そんなことを考えている間にバーが減りきり、ポンっと音と共にアイテムが完成する。
―クラフターの書―
・クラフターが作り出す本
今までのアイテムのように説明欄には詳しい説明が書かれておらず、どんな効果があるか分からない。
出来上がった本をテラから手渡される。
「ん、ありがと」
受け取ると、本は俺に合わせた大きさに変わり、かなり大きな辞書ほどになった。だが本自体が宙に浮いているため、重さなどは全くない。
とりあえず本を開いてみると、白い文字と灰色の文字で武器や、消費アイテムなどの絵と共に素材が表示されている。
「これ、もしかして作れるアイテムか?」
コクコク
「おぉー!!すげー」
ページをめくっていくと、今度はアイテムの絵は????と表示されているが、素材が白色で表示されている物があった。
「んー、これは……作れるけど何か分からないって感じか……俺がまだ未発見のアイテムとかか?」
独り言を呟いた瞬間、テラがさっきの????表示のアイテムをトントンと指で叩いたあと再び作業を始め、上薬草を素材に使う、【ポーション】というアイテムを作り出した。同時に????表示のアイテムはポーションの絵に差し変わっている。
「おぉー!!こりゃ凄い。テラありがとな」
胡座をかいた足の間にテラが飛び込んできたので、そのまま一緒にクラフターを書を眺める。
大体だが分かったことは、これはいわばアイテムの製作図鑑のような物だった。
今現在作れる物が表示され、俺が発見している物はアイテムの形状も絵として表示される。そして素材も表示されるのだが、素材に関しては俺が未発見でも、持っていない素材も本には表示されるようだ。
「これ……めちゃくちゃ便利なアイテムだな」
例えば、こんな素材があるのかなんてことも分かるし、この本を使って先程のようにテラが作りたい物を意思表示する時にも使える。
生産スキルのない俺でも製作に必要な素材や個数が分かるのだ。
「あ、建材も作れるな…………そろそろ家を建てるのも良いかもなぁ」
俺の言葉を聞いたテラが、本のページをペラペラめくり、アイテムを指さす。
「石の万能採取道具?おぉ、これで素材採取も効率上げられそうだな」
俺は驚いてばかりだが、マジでテラが優秀すぎる。
「よし!家を作ってみるか!」
本来なら朝になるとメダル集めをする予定だったが、予定を変更し拠点を作ることにした。
試しに今持っている素材で、【木の床】や【石の土台】といった建材をテラに作ってもらい、出来上がったアイテムはテラがインベントリに仕舞ってくれるので、俺はインベントリから【石の土台】を選択する。
すると空中にタタミ2つ程の大きさ、石造りの四角い土台が現れるが、青白い半透明のホログラムのような感じで表示される。
それは俺の手の動きと連動しているようで、手を左に動かせば左に、上にもいくし、下は地面との接地面で止まる。
生えている木に重なるように動かすと、ホログラムは赤色に変わり、設置できないと表示される。
「こりゃ楽しい……たしかこんな風にロボットを作ってる映画があったな」
回転させたりして遊んでいると、再びテラからズボンを引っ張られる。そして本をペラペラめくり、【設計台】というアイテムを教えてもらった。
早速それを作ってもらい受け取ると、立体ホログラムを使った設計図が作れるようになった。
これが凄まじく便利で、実際に建材を設置していかなくても、設計図上で家が建てることができ、最終的に使用する建材の数や、素材の必要数も分かる。
マジでテラ様々だ!
「うーん、四角に囲うだけの豆腐建築じゃ流石に味気ないし、ちょっと頑張ってみようかな」
クラフターの書を見ていると、【木の壁】などと同じく【丸太の壁】という建材アイテムをみつけた。木材を結構使うが、ログハウスっぽい仕上がりに出来そうだ。
「うん、これにしよう!」
出来上がった設計図は、石の土台を置いて床を一段高くしたログハウスだ。
我ながら中々いい出来だ。
早速設計図を持って、何処に建てるか決める。まぁ何も無い草原だから何処に置こうと大差ないが、生えている木の影で家の入口が影になるように設置する。
あとは設計図通りに建材を作って組み立てるだけだ。
一先ず手持ちの素材全て使い切り建材を作ったが、床を引き詰めるくらいしか出来なかった。
「全然素材足りないな……もう昼だし日中に素材集めて、夜組み立てみたいな感じでやろうか。ついでに新しいフィールドも見とこうかな」
テラもまだ腹は減ってないようで、そのままフィールドに出る。そしてまずは始まりの平原から続く、街の東側に位置する【始まりの海岸】というフィールドに初めて足を踏み入れた。
敵が強そうなら逃げて、大人しく平原で素材を集めるしかない。勝てそうなら無理に戦闘はせず、採取中心に行動する。予め行動方針を決め、海岸を歩いていたのだが、強いモンスターどころか、モンスターすら出てこない。さらに採取ポイントもなかった。
海岸からは海に入ることができ、少し入ってみたのだが、モンスターの名前が????と表示されLvは36。そんなモンスターがかなりの数泳いでいた。
「撤退!!!」
すぐに引き返し、今度は反対方向、街の西に位置する【始まりの森】という場所にやってきた。
森を探索していると、グリーンマンティスLv7というカマキリ型のモンスターと遭遇し戦闘に入る。
人間大の大きさにも驚いたが結構強い。動きが速く、飛び込んできて振り回す大きな鎌が厄介だ。しかし勝てない程でもなく、だからといって余裕がある訳でもない。
程々の難易度で、レベル上げが目的なら丁度良い強さだが、採取している際には鬱陶しい。そんな感じだ。
「まぁこれくらいなら採取も森でやろうかな。夜にこの森に入るのは流石に怖いし……」
ということで、ひたすら森と平原を駆け回り、採取素材を集めて回った。
ついでに夜の平原で狩りもしてみたがレベルは上がらず、街に帰り、テラとご飯を食べてホームに帰り、しばらく遊んでログアウトとなった。
読んで頂きありがとうございます。