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84話 ゼノの不満

少し短めです。

 朝、ゼノとグラのレベリングの為、テラ、レラをパーティから外して【始まりの平原】にやってきた。

 召喚者は俺と同じ経験値を得ることが出来るため、強敵を倒して一気にレベルを上げるキャリーと呼ばれる方法を使っても良いのだが、まずはゼノとグラの実力確認が先だ。



「グレーラットくらい楽勝だろうけど、ゼノからいくか?」



 俺の問いかけにゼノがそっぽを向く。



「うーん……」



 召喚者は俺が召喚したが、だからと言って絶対服従だとは俺も最初から思っていない。しかしゼノのように露骨に言うことを聞かない召喚者は初めてで、少々不安が残る。



 すぐにグラがじゃれついてきて自分がいくと主張し始めた為、まずはグラの実力から確認する事にした。



「よし、グラ!お前の力を見せてくれ!!」


『ギャウ!!』



 グラはラットLv1に盾を構えながら突撃し、飛んでくる石を盾で防いだあと前方宙返りしながら尻尾である両断剣を叩きつけた。そして叩きつけた両断剣の反動と尻尾のしなやかさを利用しそのまま後方宙返り、飛翔剣を飛ばしラットにトドメを刺した。



「随分と身のこなしが軽いな……というかオーバーキルにも程があるだろ」



 張り切って実力を披露してくれたのだろうが、敵であるラットの方が可哀想なくらいの圧勝だ。



 すぐに別のラットが現れ、再びやる気を漲らせるグラだったが、ビッという短かい風切り音が聞こえたかと思うと、ラットにゼノの拳がすでに振り下ろされていた。



「あっ!?……一撃?」



 ゼノの振り下ろされた拳に叩き潰されたラットは一撃で光の粒となって消えていく。

 このゲームに一撃死がないのはモンスターも同じだ。一撃で倒したように見える要因があると思って注意深くゼノを見てみると、ゼノの腕には小さな雷が纏われているのが分かった。



「纏った雷で追加ダメージってか?……それにしても疾風迅雷は凄まじいな……動きが追えなかったぞ」



 ゼノはほぼ瞬間移動と勘違いしてしまう速度でラットに近付き、1発殴ったあと雷の追加ダメージと併せてラットを倒していたのだ。



「召喚者が増える度に言ってる気がするけど……どっちもぶっ壊れだな」



 ゼノは高速移動からの強力な直接攻撃と雷による追加ダメージによる純アタッカー、グラは武装した武器を巧みに扱うアタッカー兼サブタンクといった感じだ。



 遂に俺の戦闘特化フルパーティが揃ったわけだが、本格的に戦力として俺が要らなくなりそうで怖い。俺ももっと強くならないと!



 ここからは狩場を【始まりの荒野】、【荒れた大地】と順に巡り、あっという間に夕方にはゼノとグラはLv20になり経験値が入らなくなった。



 レベルが上がってもゼノは相変わらず言うことを聞かずステータスも未だに不明だが、グラはモンスター型特有の成長の仕方をし、ステータスがモリモリ上がって攻撃系のアーツに加え、【咆哮】という周囲のヘイトを一気に集めるアーツを覚えた。



 同じタンクであるドラは、単体のヘイトを集めるアーツを覚えているが複数の敵のヘイトを集めるのに苦労していた為、グラはいい具合にタンクとしての差別化とパーティのフォローが出来ている。



 一度街に戻り召喚士ギルドを訪ね、ゼノとグラが【進化型】か【成長型】どちらか聞いてみたところ、2人とも【成長型】だと分かった。



「明日からはメダル集めだなぁ……2人が成長したらもっと強くなるな!」



【成長型】には、メダルを変換し得る事が出来る成長ポイントが1人当たり300、計600ポイント必要だが、【荒れた大地】などのモンスターをメダル化すれば3~5のレア度の高いメダルになる。それらを使えば600ポイントもそれほど大変ではない。



 それから数日、メダルを集めながらもマジックショップの手伝いも兼ねてやって来るプレイヤーから仮面男について聞いたり、掲示板も覗いたりしてみたが進展はなく、召喚者1人分のメダル集めが終わった。



 まずは頑張ってくれているグラから【成長】させようと、祭壇にメダルを入れていると、俺の目の前にゼノがやってくる。



「なんだ?」


『ガウ!!』


「俺から先に成長させろってことか?」


 コク


「無理だな……お前はこの数日何もしてない。言うことを聞かないのはまだ良い。だけどお前の気まぐれで敵を勝手に攻撃して陣形が崩れかけた事もあった。ならパーティに貢献してくれているグラを優先して成長させるのは当たり前だろ」



 ゼノは確かにめちゃくちゃ強い。しかしゼノの気まぐれで相手にしなくていい敵を勝手に攻撃し、そのまま戦闘になる事も何度かあった。メダル化する際にも勝手にトドメをさしたり、召喚してから数日、さらにレベリング続きで意思疎通が不十分なのも理解しているが、今どんな事に関してもゼノを優先する気はない。



『ガウウ!!』


「怒ってもダメだ。確かにお前は強くて特別な存在だ。だけど特別なのは召喚に使ったメダルと経緯だけ、存在そのものじゃない。召喚者は俺にとって全員大事だ。今後もお前だけを特別扱いする気はない」



 そういうとゼノは地団駄を踏み、怒りを露わにしながらホームにある草原の方に出ていった。



「ふぅ……困ったもんだ。ま、ゆっくり分かり合うしかないか」



 ともあれグラを成長させ、成長したことによりグラは再びLv1に戻ってしまったが、初期ステータスはさらに伸び、ガンガン強くなっている。

読んで頂きありがとうございます。

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