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83話 新たな仲間

 新しい仲間、元々NPCだったゼノンから召喚者に転生した【ゼノ】、ロボットのように全身機械化し錆び付いてボロボロの【グラ】が加わった訳だが、両者ともにステータスなどが普通ではない。



「ゼノはステータスとかが開示されてない。グラは開示されてるけど、数値が表示されてない……グラもステータスに何か条件があるのか?」



【種族★8恐竜を使用した為、スキルのランクアップが可能です。選択してください】



 グラのステータスを開いたまま眺めていると、再びシステムメッセージが表示される。【創成】を使いレア度制限を超えた特殊な召喚でも、スキルのランクアップは変わらず出来るようだ。



「グラはまだ強くなるのか!けど確か種族スキルはランクアップ出来ないはずだし、ランクアップ出来るのは武装化だけか」



 念の為にグラの種族スキル、【爆食】を選択してみたがランクアップ出来ず、当然【限界突破】も無理だった。残された武装化のランクアップを行い【完全武装化】というスキルにランクアップさせた。



「ここまでは良いんだけど、なんでグラはアーツを覚えてないんだ?使えるようになったはずだよな」



 グラに問いかけてみても、首を傾げ自身も理解出来てないようだ。



 さらに武装化というスキルもいまいち理解しきれない。本来モンスター型は武器を装備出来ず、武装化スキルによって武器を装備出来るようになったのはわかったが、具体的にどう使うのだろうか……

 体格に似合わずグラの腕はティラノサウルスのように小さいため、何かを持って振り回すには不向きなように思える。



 戦っていくうちに分かることがあるかもしれないが、錆びて脆そうなグラをそのまま戦わせるには不安が残る。そもそもステータスに数値がないため戦えるかどうかも疑問だ。



「こんな状態のまま戦わせるのも不安だし……とりあえず初級万能武器を見せてみるか」



 ゼノも一緒に。と思ったがゼノは武器を装備出来ないモンスター型だ。1人距離を置いて輪に加わろうとしないゼノはそっとしておき、他の召喚者達もグラの武器選びを見守るようだ。



 グラが選んだのは【両断剣】という、このゲーム内最大の武器種で超巨大な剣だ。この武器は超巨大ゆえの超重量と、柄だけでも俺の身長ほどもある長いリーチを活かし、凄まじい攻撃力を持つのが特徴だ。



「お前……その腕でこの武器使えるのか?」



 グラが選んだこととはいえ純粋な疑問を投げかけると、グラは【両断剣】を口に咥えそのまま空中へ放り投げる。そして大口を開き、食べるのかと思わせる勢いで武器を口に含んだ。



「待て待て待て!!食べるな食べるな……なんだぁ?腹でも減ってんのか?」



 俺がそう言うとグラは申し訳なさそうに武器をそっと地面に下ろし、様子を窺うように俺を見つめてくる。

 だが、すぐに武器を口に含むあたり、何でもかんでも口に入れたがる赤ちゃんのような印象を受けてしまった。



「そういえばグラは何を食べるんだ?普通のご飯か?」



 グラが普通の恐竜であればこんな疑問も浮かばなかっただろうが、グラは機械恐竜だ。食べる物が違ってくると、食料もまた別途用意しなくてはならない。



 グラはご飯という単語を聞いたからか、表情が一気に明るくなり、そのままインベントリに頭を突っ込み尻尾をブンブン振りながらインベントリ内を物色し始める。



「インベントリは使えるのか……けど勝手に食うなよ!」



 他の召喚者達同様にインベントリが使えるのは分かったが、そのままインベントリ内にある物を好きに食い散らかされても堪らない。少し様子を見ていると、グラは何か咥える方法でアイテムを取り出したようだ。



「……ミスリルっ!?グラはミスリル食うのか?」


『ギャウ!!』



 驚いたことにグラがインベントリからご飯として取り出したのは【ミスリル鉱石】だ。しかしミスリルはそれほど在庫がある訳ではなく、これをご飯にされるのは非常に困る。



「出来るならミスリルはやめてくれ。他には無いのか?」



 次にグラが取り出したのは【鉄インゴット】だ。どうやらグラは金属類を食料とする種族らしい。



「まぁ鉄なら在庫もかなりあるし食べて良いぞ」



 本当に食べれるのかという疑問を抱きながら【鉄インゴット】を大量に出してやり黙って見ていると、グラは【鉄インゴット】をガリガリと砕き、美味しそうに食べていく。



『ギャウ!!』


「美味しいか?いっぱい食べて良いぞ」



 そう言ってやるとグラは追加で【鉄インゴット】を何個か食べて、すぐに食べるのをやめてしまった。



 満足はしてない様子だが、もういいのかと大量に出して余ったインゴットを片付けていると、グラが今度は【鋼インゴット】をインベントリから自ら取り出し、俺の様子を窺っている。



「うん?今度は鋼か……あれっ!?グラの牙が新品の鉄みたいになってる!!」


『ギャウ!!』


「……もしかしてグラは食べた金属を取り込めるのか?」


『ギャウ!!』


「マジか!!ってことは……ミスリル以外は好きなだけ食っていい。いっぱい食え!」



 そう言ってやるとグラは【鋼インゴット】をまた少量食べ、次に【魔鋼インゴット】をモリモリ食べ始めた。そして次第に錆だらけだったグラの体に変化が生じ始める。



 口周りから徐々に少し黒みを帯びた銀色、【魔鋼インゴット】と同じ質感へと変化しているのだ。そして100個近い【魔鋼インゴット】を食べたグラは全身魔鋼製の体になり錆は綺麗に消えていた。



「おぉー、凄いぞグラ!……ってことは武器を口に含んでたのも食べて取り込む為か?」


『ギャウ!!』


「そうか、それは悪かった。なるほど食べて取り込んで武器を装備する訳か、納得だ!」



 グラが初級万能武器の【両断剣】を食べて取り込むと、グラの尻尾が【両断剣】の刃に変化する。長い柄はなくなってしまったようだ。



「長い柄がなくても尻尾その物が柄みたいなところもあるしな!よーし、これから……うんっ?まだ食べるのか?」


 コクコク



 なんとグラは【両断剣】だけでなくその他に【大盾】を食べて取り込み、グラの小さな両腕、人間の前腕部に当たる部分が盾状に変化する。

 さらにグラは【飛翔剣】という武器を取り込み、背中に生えているヒレのような突起物を剣の柄に変化させた。さらにこのヒレから剣の柄に変わったのは1本だけでなく6本分あり、背中の中心から生え、尻尾に向かって直線上に並んでいる。



「……うん、盾はまだいい。背中のそれ、完全に剣が刺さってるようにしか見えないけど大丈夫なのか?しかも飛翔剣ってたしか……」



【飛翔剣】は近、中距離に対応した6本1組の武器だ。基本的には6本の内1本~2本を手に持ち、残りは空中に浮かばせ魔法的な力による遠隔操作が出来るという設定の武器で、これも例に漏れず扱いが非常に難しい武器だ。

 しかし使いこなせれば多角的な攻撃が可能になり、AIによる自律動作、手動になる遠隔操作が切り替え可能で、見た目もファンタジー要素が強めなため人気の高い武器でもある。



『ギャウ!!』



 俺の心配をよそにグラが一声鳴くと、グラの背中に刺さっている飛翔剣がまるで鞘から剣を抜くように抜けて宙に浮かび上がり、その後ビュンビュンとグラの周囲を飛び回る。



「……凄いな」



 あまりの光景にそれしか言葉が出なかったが、グラは複数の武器を装備し全てを器用に扱う、まさに完全武装した召喚者だ。



「複数武器を装備出来るのも限界突破スキルのおかげか?そう考えると創成メダルはぶっ壊れ過ぎだろ……」



 その後グラは飛び回っていた飛翔剣を背中に納め、盾を携えた両手を揃えて構えると、2つの盾が1つの巨大な盾となってグラの前面全てを覆う。



「おぉ、そんな事も出来るのか……グラは火力もあるタンク型って感じかな?それともタンクも出来るアタッカーかな」



 自慢げなグラの頭を撫でてやると嬉しそうに飛び跳ねている。グラは戦闘においてかなり万能な能力を持っているようで、あとはステータスがハッキリと分かれば何も問題ないのだが……



 そう思って再びグラのステータスを開いてみる。



 ―グラ―

 Lv:1

 種族:グラディノス

 HP:50/50

 MP:30/30

 筋力:30

 耐久:30

 敏捷:10

 器用:10

 魔力:10


 ―スキル―

 ・爆食Lv1

 ・限界突破

 ・完全武装化

 ・装備武器術Lv1



 ―アーツ―


 ・「装備武器術」:【大防御Lv1】・【剣時雨Lv1】・【大切断Lv1】



「おぉ、色々増えてる!これなら戦闘も大丈夫そうだな……というか強すぎだろ」



 Lv1にも関わらず、俺がLv1だったときの3倍に値するステータスが存在する。

 グラが取り込んだ鉱石によって初期ステータスが変わるのか、それともモンスター型特有の初期ステータスの高さなのか、まだ不明なことは多いが一先ずグラに関してはこれくらい分かれば十分だろう。



「あとはゼノだな……」



 特殊なメダルを使って召喚したゼノとグラだが、すぐに他の召喚者達と打ち解けたグラとは違い、ゼノは未だに1人距離を置いて、他の召喚者達を拒絶しているように思える。



「やっぱり黄道十二メダルってヤツを使ったからか?」



 イベント入手なのか、このメダルの元になったゼノンが特殊なのか分からないことが多すぎるメダルだが、時間をかけてこのメダルについて調べるより、ゼノンの意志を尊重して召喚することを優先したが、召喚も終わったため召喚士仲間に色々と聞いてみることにした。



「やっぱりこういうのはミナトかな」



 ポッコリ下心、アリバー、ユーナにもあとでメッセージを送ってみるが、まずは前線で攻略をしているミナトにフレンド通信というテレビ電話に似た連絡をとってみる。



「黄道十二メダル……ごめん、全然分からない」


「そっか……じゃあ仮面男については?俺と背丈と声、武器と多分ジョブも同じだ。名前は分からないんだけど……」


「うーん……僕は掲示板も結構覗いてるけど、ゼル君の成りすましみたいな事をしてるってプレイヤーの情報もないし……ごめん、分からない」


「……そっか。もし見つけたら連絡をくれ!ぐちゃぐちゃに潰すから足止め出来そうなら足止めも頼む」


「……はは、君がそこまで言うのも珍しいね。けどそれだけの事を仮面男とやらはしたんだろうね。分かった、見つけたら必ず連絡するよ」


「ありがとう」



 分かってはいたが何も手掛かりはなさそうだ。一応運営にもNPCを殺害していたとして報告してみるが、こっちはさらに期待出来そうにない。こういう質問になるような問い合わせには運営は絶対に答えてくれないのだ。



「とりあえずやることはやったし、次仮面男に会った時の為にゼノとグラのレベル上げだな!」

読んで頂きありがとうございます。

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