表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/88

76話 暗闇の中で

 地下渓谷を順調に地下へ、地下へと降っていく。出現する敵も初見のモンスターばかりでLv35~と結構高めだが、フルパーティを組んでいるため特に苦戦することはない。



 それから採取をしつつ2時間ほどで地下渓谷の丁度中間である中層に辿り着き、1度足を止めてマップを確認してみる。ちなみにここでの採取では【グーラファイト】という黒い鉛に似た鉱石や、【岩水晶】という水晶が新たに手に入り、ホームでは採取出来ない鉱石類が多く手に入った。



「順調、順調!このまま……あれ?なんだここ」



 マップの全体を眺め次に進む道を確認していると、マップ上で気になる所があった。

 その場所は少し広めの空間になっているようだが、その空間へと繋がっている通路がなく、完全に隔離された空間が一つ存在している。



 その隔離された空間へ辿り着くには、裂け目である崖を反対側に渡り、現在地からかなり離れなければならない。

 行き止まりや崖下にそのまま通じている洞窟が多くあり、マップを随時確認して進まなければ到底辿り着けず、いい加減に進んで偶然その空間に辿り着く事はまず有り得ない。



「上層から罠とかで落下した地点とかか?……いやそれだと出口がなくて詰むし、そもそも上は岩盤だしなぁ。ふーむ」



 ゲームを嗜む者の(さが)だろうか……見るからに怪しい場所は確かめないと気が済まない。



「時間もまだまだ余裕あるし行ってみるか!」



 その空間に何も無く、すぐに蜻蛉返りする羽目になったとしても精々2、3時間ロスするだけだ。モヤモヤを抱えて先に進んで後日また確かめるより、気になった今確かめたい。



「強い装備とか隠されてたりしないかなぁ」



 こういった隠し部屋に該当する場所には強力な武器や防具が隠されている事がお約束だ。

 AnotherWorldでは道端に宝箱が設置されていること自体がほぼ無いが、マップでわざわざ確認しないと発見出来ないような場所だ。期待はかなり持てる……はず。



「準備だけはしっかりしとかないとな!強敵がいる場合もあるし」



 下層へ続くルートを外れ、隔離された空間を目指し進んでいく。裂け目を反対側に渡った場所では敵がやや強くなったが、苦戦するほどでもないためどんどん進む。

 そして隔離されている空間の手前にある別の空間にたどり着いた。



「やっぱり通路は無さそうだな……壁壊したら進めるかな?」



 返事を期待していた訳では無いが召喚者達に尋ねると、一斉に腕を組み、俯いて悩む素振りを見せる。

 そんな召喚者達の姿に癒されていると、レラが1人壁に向けて歩き出しペタペタと壁を触り始めた。



「おっ!?何か分かりそうか?」



 暫くペタペタと触っていたが、隔離空間から少し離れた場所でレラが動きを止め俺に振り返る。



「ここ?」


 コクコク



 特に変わった所は無さそうだが、レラを信じてとりあえず壁を思い切り蹴ってみた。



「ビクともしないな……えっ!?違う?」



 壁を蹴り始めた俺を慌ててレラが止め、ぴょんぴょん飛び跳ねながら身振り手振りを始めた。どうやら何か"大きな物を操作する"ということを伝えたいらしい。



「あっ、あー、なるほどベガか!!……やべ、くっそ恥ずかしいわ」



 必死に壁を蹴っていた事が急に恥ずかしくなったが、気を持ち直し【ベガ】を転送する。【ベガ】は腕部に掘削用ドリルを装備しており、巨大な岩や壁を破壊する事が出来る。



 破壊された物は一定時間が経過すると自動で修復するが、当然破壊が無理な物、フィールドとフィールドを繋ぐ橋や、ギルドなどの重要な建物、岩などのオブジェクトの中にも破壊が無理な物も存在する。

【ベガ】を製作した時に色々と壊せる物を試したが、重要な物を破壊しようとすると近くにいるNPCに笑顔で止められ軽く注意されてしまった。しつこく続けているとブラックリスト入りは確実だろう。



 そうこうしているうちに、テラとレラが【ベガ】へ乗り込み壁を破壊し始めた。みるみるうちに壁はガリガリと削れ砕けていく。

 そしてすぐに隔離空間への道が出来た。



「ベガを修理しといてホントに良かったな……2人共お疲れ様!」


『『テンキュー!!』』


「さて、何があるかな……」



 最短距離で通路を繋いでいないため照明の光がしっかり届かず、隔離空間がどうなっているのか一目見ただけではわからないが特に変わった所はなさそうだ。ともあれ空間に踏み入ってみる。



「あれ……何もないな」



 空間の中央まで進んでみたが宝箱はおろか、採取ポイントすらない。ガックリと肩を落とし引き返そうと思った瞬間、周囲に光のカーテンが引かれる。



 すぐに中央に集まって周囲を警戒していると、一部の壁が歪んだように見えた。そしてそれは徐々に姿を見せ始める。



「キッモ!!こういう系統は苦手なんだよ……」



 カマキリのような顔と体にカニのようなハサミを持ち、ブヨブヨの芋虫のような腹から蜘蛛のような足が無数に生えている「デスシザーLv42」というボスだ。



 ボスは壁から跳躍し地面に降り立つと、ブヨブヨの腹の後方からブチュブチュと一気に白い塊を吐き出している。粘膜を纏い、吐き出された白い塊の中からはウゾウゾとボスに似た小さなモンスターが無数に生まれてくる。



「ムリムリムリ!!!」



 すぐに【メテオフォール】で薙ぎ払ってやろうと思ったが、さすがに理性が残っており思い留まった。ここはかなり地下深い場所だ。ここで【メテオフォール】なんてものを使えば、洞窟その物が崩れ生き埋めになってしまうかもしれない。



 俺が葛藤している間も小さなボスの子供がウゾウゾと蠢き、今にも襲いかかってきそうな構えをみせている。



 すぐにセラが【アギト】を連発し雑魚を一掃。少々ボスのレベルは高いが動きは遅い。雑魚を何度も生み出してくるが、その都度セラが一掃してくれた。



 ボス自体はハサミを振り回すだけでさほど強くなく、とにかく気持ち悪さが尋常ではないので、MP温存など考えず一気にゴリ押した。



 そしてボスが光の粒に変わり光のカーテンが消えていく。



「はぁ、はぁ……強敵だったな」



 主に見た目が。だが……



__なんだ?……声が聞こえたけど……誰かいるのか!__



 ボスを倒した後、姿は見えないがどこからともなく声が聞こえてくる。

読んで頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ