7話 レベル上げ
リアルではおやすみなさい。
ゲームにログインし、ホームにある木の傍に設置されているベッドから起き上がる。
テラも同時に目覚めたようで、大きな欠伸をしている。召喚者はプレイヤーがログアウトしている間、寝ているという設定らしい。
「おはよ、テラ。今日もよろしくな!」
飛びついてくるテラと挨拶を交わし、まずはホームで採取出来る木材と薬草を集める。
すぐに終わらせ、ゲーム内掲示板を覗いてみた。
この掲示板は、ゲームプレイヤーしか書き込みが出来ず、ログインしていないと使用出来ないようになっている。ゲーム未プレイの者は見る事しか出来ないのだ。
俺が見ているのは攻略に直結するような情報ではなく、ゲームの仕様に関する情報だ。
最効率プレイをするつもりもないので、ある程度困ったり、行き詰まらない限り攻略は見ないようにしている。
探している情報はテラやNPCに関してだ。
テラは常に鼻水が垂れている。これがキャラを彩るエフェクトなのか、デバフ等のバッドステータスの予兆なのかが分からない。
ちょっと探すと、すでに運営に問い合わせをして回答を貰っているという書き込みがあり、ステータス欄に記入されていない以上はエフェクトに与する物だと分かった。
「良かった……鼻水が垂れる状態を放置するとデバフがかかったりするのかと思ったわ」
俺と同じような問い合わせが多かったからか、修正も視野に入れているそうだ。
「流石に今日も朝まで時間を潰すのは勿体ないな……メダル化は朝からやるとして、夜の敵も確認して、倒すのが無理そうなら採取をするのも良いな……」
従来のゲームならテラのようなNPCが倒されようが構わず強敵に挑んだり、肉壁にしたりするが、このゲームでそれを俺は出来そうにない。
AIが優秀すぎて、もはや感情と呼べるものがテラから見て取れるのだ。
そんなテラを道具のように使うことがすでに出来ないのだ。なので死なせるようなことは極力避けていこうと思っている。
「こんな可愛い奴が引き裂かれる所なんか見たくもないな……」
ともあれ、夜の平原に出てみる事にした。
その前に薬草は上薬草にせず、そのままにしてある。上薬草は当然薬草より効果が高いのだが、現在の状況だと薬草で十分事足りるため、上薬草の回復力は過剰なのだ。
それをテラに説明するとしっかり理解してくれる。それに加え、いちいちテラが怪我をする度、薬草を使えと指示しなくても、予め攻撃を食らったら薬草を使っていいと伝えておくとちゃんと使ってくれる。
インベントリに頭を突っ込むアクションを毎回挟んでしまうのが悩める所だが……
フィールドは夜でも視界が悪いことはない。多少見え辛くはあるが、月の明かりで道端の石ころなんかもちゃんと見える。
相変わらずテラを肩車して歩いていると、遠くで剣を振り回し盾を持った骸骨と戦っているパーティがあった。
「おっ?あれは初めてみるモンスターだな…………Lv14!?マジかよ……」
タンクになれそうなモンスターだったが、まだ無理そうだ。
そしてやはり夜はグレーラットでもLv4以上ある。ここは無理せず採取中心に行動することにした。
木や石、草類の素材を集め、たまに銅も採掘出来た。だが2時間ほどで行動範囲の採取ポイントが枯れてしまった。
「まぁ延々採取し続けられるわけないよな………となるとレベル上げか」
無理はせず、Lv4のラットを探し戦ってみると、案外戦えることが分かった。投石攻撃が夜だと見づらいため被弾が増え、採取した薬草が減っていく。
痛みや衝撃も、ふにゃふにゃの玩具のバットでパンっと叩かれるくらいのものだ。
そして色々と戦っていると、レベルが1桁代なら夜でも平原のモンスターの主な奴らは倒せることが分かった。
平原の主なモンスターは、グレーラット、グレードッグ、グレーアントで、中でもグレーアントはかなり経験値が美味しい。
防御が高いモンスターのようだが、ガンズブレイドの防御無視のおかげで2体までなら同時に狩れる。
ひたすら狩りを続け、朝までにLv5まで上がった。
【アーツ:召喚者の心を獲得しました】
「お?アーツ覚えたぞ……」
―召喚者の心―
・召喚者と意思疎通が容易に行えるようになる。自動発動型。
「意思疎通か……確かに身振り手振りじゃ分かりにくいこともあるし、それが分かりやすくなるのは良いな」
ちなみに「召喚者の心」は召喚士スキルのアーツだ。
どうやらアーツはスキルLvだけでなく、プレイヤーLvが上がった際にも覚えるようだ。
一先ずキリがいいレベルまで上がったので1度街に戻ることにした。
というのも、モンスターを初討伐した時のように、キリのいいレベルまで上がると、クエストやら出来ることが増えるんじゃないかという打算があった。
ご飯を食べて冒険者ギルドに行ってみたが、やはりクエストが増えていた。
そして召喚士ギルドにも行ってみる。
『あぁ、ゼル様。丁度いい所にお越しくださいました』
入るなりNPCに話しかけられる。
『たった今、ジョブショップの準備が整いました。あちらから召喚士の役にたつアイテムをご購入頂けます。是非1度ご覧になって下さい』
「分かった!ありがとう」
たった今……ね。
やはりLv5になったことで新しい機能が解放されたようだ。
そして肝心の売っているアイテムだが、現在1つしか無かった。
―共有携帯ポーチ―
・召喚者がインベントリから消費アイテムを取り出す際、素早く取り出せるようになる。
「おお、良いなこれ!」
タイプが2つあるようで、ショルダーバッグタイプと腰に巻くタイプだ。
これは購入後でも自由に切り替えが出来るようだ。
「1000Gか……ま、大丈夫か!」
購入すると商品登録からポーチが消えてしまった。
それと同時にテラの衣装にショルダーバッグ型のポーチが追加される。大きさもテラに合わせて調整されているようだ。
「やっば!!!…………くっそ可愛い」
ちなみに腰に巻くタイプにも変更してみたが、テラは肩掛けの方が好みのようで、肩掛けタイプのポーチにしている。
さらにこのポーチ、インベントリに入るアイテムではなかった。
つまり、召喚者が増える度購入する必要はなく、1個買えば召喚者全員にデフォルトで装備される物となるわけだ。
「テラ、薬草取り出してみて」
コクコク
頷いたテラは口を尖らせて下を向き、ポーチに手を入れると、サッと薬草を取り出し頭上に掲げる。
「ヨシヨシ!可愛いなぁ」
行動のいちいちが可愛い。
だが、素材や大きめの物はポーチからは無理なようで、相変わらずインベントリに頭を突っ込んで取り出している。
このアクションも可愛いから今後見れなくなることはないようだ。
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