74話 今日はのんびり
1週間イベントが終わった日の翌日だが、ログイン早々気が重い。
昨日はイベント終わりだった事もあり、ゆっくり他サーバーの動画を見てそのままログアウトするつもりだったのだが、イベントの影響からか色々と反響が凄く、獣人NPCパズ達が経営する【マジックショップ・プロキオン】では昨日1日で【転移扉】や【共有収納箱】が1日分即完売、増え続ける客の対応が追いつかず、応援に駆り出される事態にまでなってしまった。
さらに俺自身も運営が出した1位サバの公式動画に、カットインの編集付きでヨミにトドメを刺したシーンが取り上げられ、それが掲示板の拡散力も相まって「隕石堕としの人」と呼ばれたり、ライドの製作を依頼されたり、新人召喚士達から色々聞かれたりと目まぐるしい1日を過ごした。
良い意味で注目を浴びるようになったことは素直に嬉しいと思う反面、店や街に出るとその都度呼び止められ、向けられる好意を無下にも出来ず対応し、店の手伝いなどをしているとやりたい事が何も出来ずあっという間に1日が過ぎてしまった。
「まぁ今だけだよな……」
そんな面倒事から逃げるため、今日は一先ずホームに引き籠る事を決め、イベントで手に入れた戦利品を確認しようと思っている。
―今回のイベントで入手した物―
・アルカナ【至高の湯】
・片手剣【アメノムラクモ】、盾【ヤタノカガミ】、アクセサリー【ヤサカニノマガタマ】
・素材【アマテラス、ツクヨミ、スサノオ・ハート】
・種族メダル【★5聖獣】×3、効果メダル【★8創成】×2、【★8災厄】
・プレイヤー専用スキル獲得チケット【生存者】
「アルカナは後で設置するとして、装備も記念品性能だな。大事に仕舞っとこう……あとはスキルチケットと素材、メダルか」
スキルチケットはすぐに使用し【生存者】というスキルを手に入れた。これはパーティの生存人数に応じて全ステータスが上昇するスキルで、1人につき2上昇し、最大で10上昇する。上昇値は低いが召喚者と常時パーティを組んでいる俺には有難いスキルだ。
次に【アマテラス・ハート】などの素材だが、これは魔導エンジンなどの素材になるが、他に用途があるかもしれない。限定品のため慎重にテラと話し合って用途は考えることにした。
「最後はメダルだな!」
メダルの中でやはり注目すべきは【★8創成】だ。このメダルは手に入れた時に個別のチュートリアルがあったほど特別なメダルで、召喚や合成には使用出来ない代わりに単体で使用することができ、条件はあるが好きな効果メダルに変化させる事が出来るらしいのだ。
驚くべき創成メダルの性能だが、なんとゲーム内で実装されていない意味を持つ効果でも、高性能AIが変化させたい単語を自動検索し、その意味に見合った効果を持つメダルに変化してくれるのだ。
例えば【無敵】だ。仮にこれがゲーム内で効果メダルとして実装されていなくとも、【創成】を使えばAIが「無敵」の意味を調べ、効果メダル【無敵】として使用出来るようになるのだ。
だが、さすがにNGワードが設定されているようで、【無敵】や【全知全能】、【一撃必殺】など、1つでゲームバランスが崩れるような物には変化させられず、また1度変化させた同名のメダルには今後変化させる事が出来ないようだ。しかしそれでも凄まじいほどのぶっ壊れ性能であるのは間違いない。
さらにこの【創成メダル】はイベント報酬、ジョブタブの【条件追加枠】で入手したもので、恐らく俺しか持っていない。
「これは多分アマテラスに勝ったから追加された報酬だろうなぁ……」
掲示板でも神器アイテムを持ち込まない聖獣戦は本来【負けイベント】だと結論付けられていた。というのも情報が出揃ったことで聖獣達の能力が明らかになったのだ。
どうやら聖獣達は最初に受けた攻撃の属性(物理又は魔法)に対して完全耐性とカウンターを備えるようで、偶然左右で違う属性を持つ武器の組み合わせをしていたプレイヤーが発見したらしいが、そのプレイヤーはそのまま単純に負けたらしい。
結局、聖獣の負けイベントに勝てる可能性があったのはテイマーか召喚士のどちらかで、多様性をコンセプトに持った両ジョブの隠しアピールポイントだったという訳だ。
「だけどなぁ……コレ他の★8と一緒に使えないのが不便なんだよなぁ」
凄まじく贅沢な事を言っているのは理解しているが、【創成】で変化させたメダルは一律★8に分類されるようだ。そうなると既に持っている★8と併用が出来なくなる。
「さて、どうしようかな……」
イベントを経てレベルもかなり上り、行ける場所も増えているはず。そうなると別の新しいメダルを入手する機会は増えるし、そもそも召喚はそれほど急いでいない。
いずれは【同化】の能力を活用し、状況に応じたパーティを作れるくらい召喚者は増やしていきたいが、それは今すぐ必要という訳ではないのだ。
「武器も壊れたから新しいやつ欲しいし、ライドの改造もしたい。とりあえず武器は最優先だよな…………まっ、まずはアルカナ設置かな!」
今回手に入れたのはアルカナの鍵ではなく、アルカナその物だ。鑑定の必要が無くそのまま設置する事が出来る。
現在ホームの状況は、メインホームである花天月地を中心に、東には【輝石の洞窟】、西に【草原】のアルカナが設置してある。
アルカナの位置は自由に変更できる為、草原を北側に移動させ、空いた西に【至高の湯】を設置する。
「うひょー、なんとなくわかってたけど見事に温泉だな!!」
アルカナの広さはかなり狭く、山の中の風景を切り取ったような場所だ。その中央には石で囲まれた少し浅く広い浴槽があり、山肌から湯気をたててお湯が流れてきている。
召喚者達もぴょんぴょん飛び跳ねとても楽しそうだ。
「和風な雰囲気の花天月地から繋がるって思うと風情があるな。お湯の温度ってどうなってんだろ」
ゲーム内の水は一律の温度だったが、お湯の場合はどうなっているのだろうかと湯加減を確かめる為、浴槽に近づいた瞬間、俺の着ていた服が一瞬ではだけ、腰にタオルを巻いている状態に変わった。
「うぇっ!?…………自動脱衣機能付きか?」
そんな俺の状態を見た召喚者が一層楽しげに興奮し、浴槽の方に近付くと召喚者達もタオル姿になった。
ドラは俺と同じ腰にタオルを巻いた姿で、女性陣はバスタオルを胸から巻いたような姿だ。さらに召喚者達は共通して頭に折り畳んだ手拭いを乗せている。
「おー、似合ってるな!よしよし、みんなも一緒に入れそうだ……しかしこのタオル、全く形が崩れないな。まぁこんな所リアルに再現しても仕方ないか」
あわやポロリとかこのゲームに求めていない。変なことを気にしなくていいこの仕様はとても有難い。
早速露天風呂に入ってみる。
「ん、んぁあ"あ"あ"…………最高」
温度も丁度よく、ゲーム内のお風呂なのに、むしろリアルよりめちゃくちゃ気持ちが良い。作法なんか気にしなくていいのも気分が楽だ。
さらにこの温泉に浸かっているとシステムメッセージが表示され、この温泉の効果が書いてあった。どうやらお湯に一定時間浸かるとHP、MPが即座に回復し、デバフも脆弱含め消えるらしい。
「うーん、あんまり実用性は無さそうだけど、気持ち良いし関係ないか!」
また一つホームが充実し、楽しみが増えた。
さて、この後は何から手を付けようか。
読んで頂きありがとうございます。




