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59話 イベントに進展

「さて、じゃあまずは__」


『少し待ってくれぬか?まずは掃除をさせて欲しいのじゃ』


「掃除?」


『うむ……呪縛をかけられ自我を失う直前、穢らわしい者共が妾の寝床に踏み込んできた記憶がある。そんな者がいると思うと、心が安らがんのだ』


「それは分かったけど、どうするんだ?」


『少しだが力も戻ってきた、手間は取らせん…………ふむ?おかしいの……1匹も居らんようじゃ』


「あぁ、魔獣か!見つけた奴は道中倒してきたぞ」


『左様か、感謝する』


「ってことは、自我を失っていた間の記憶はないのか」


『うむ、それでも良ければ何でも聞くがよいぞ?』


「分かった……さっきお前はこの洞窟内の気配?みたいのを探知して魔獣を探してたのか?」


『うむ、ここは妾の聖域。分からぬことなどない』


「なら、ここに俺達、異界の冒険者が1人でしか入れないのもお前の力か?」


『うむ、本来は妾に貢物を持ってくる童を護る為に施した結界じゃが、どうやらお主には迷惑をかけたようじゃの……』


「結界か……その結界を解くこと、俺の仲間達がここに踏み込むこと、それは可能か?」


『仲間がおったのか!なぜ早く言わん……うむ、結界は解いた。仲間も聖域に踏み入る事ができよう』



 これでプレイヤー全員がこの洞窟に入ることが出来る。結界が解けたことでチーム通信も出来るようになった為、聖域の外で待っているプレイヤー達と合流し、アマテラスの話を一緒に聞こうと思ったが、良く考えるとそれも二度手間だ。どうせなら全員で聞いた方が良い。



 チーム通信を使って全員と話すことも考えたが、そうなるとアマテラスの言葉は俺を経由しないとプレイヤー達には届かない。それはさすがに面倒臭い。



「ありがとう、助かるよ!…………それとお前ってここから出られないのか?」


『妾はこの豊穣の地を守護する者。それがこんな穴蔵から出れないとあれば笑い話にもならん。勿論出ることは可能じゃ!』


「だったら俺と一緒に来てくれ。仲間と一緒に話が聞きたい」


『あいわかった。どこへなりともお供しよう』



 そう言って立ち上がったアマテラスは、体をブルブルと震わせる。すると体が眩い光に包まれアマテラスの体のシルエットが段々と変わっていく。



 光が収まり、姿を見せたのはキツネではなく人間の女性そのものだった。

 金色の髪に、煌びやかで胸元が大胆に開いた着物、9本の尻尾が出ていなければ誰も聖獣だとは思わないだろう。


『どうじゃ?美しかろ?』


「美人なのは間違いないけど、もうちょっとなんとかならないか?出来れば俺達異界の冒険者以外には見つからないような感じの……」


『むぅ……これでどうじゃ?』



 再びアマテラスの体を光が包み込み、シルエットがどんどん小さくなっていく。

 今度は手のひらに乗るサイズの小さなキツネになった。



「まぁ、これなら服の中にでも隠れられるし大丈夫か」



 そう言って手を差し出すと、ピョンっと手に乗ったアマテラスはそのまま俺の腕を伝って首筋まで登り、胸元にゴソゴソと入ってくる。



 くすぐったいのを我慢し、アマテラスが顔だけ出したのを確認すると聖域を後にした。



 ▽▽▽



「ただいまー!ありがとう、皆待っててくれたんだな」


「ゼルさん!無事で良かったです」



 聖域を出る間にチームチャットを使い、全員ですぐにでも話がしたいと書き込みしておいた。

 この聖域である洞窟の入口で待機していたプレイヤー達には先に戻っても良いと伝えておいたが、皆して待ってくれていたようだ。



 街への帰り道、プレイヤー達は誰も何があったか聞いてこない。関心が無いわけじゃなく、表情からして気になって仕方ないといった感じだが、街に帰れば話は聞けるのだ。道中の油断にも繋がるため、皆押し黙って街を目指す。



 無事街へと辿り着き、会議室に向かうと俺達以外は全員揃っているようだ。

 皆が席につき、じっと俺を見つめてくる。



「話す前に、誰か探知系のアーツ使えるか?今から話す内容を誰にも聞かれたくない。この会議室を隔離出来たら1番良いんだけど、一応念の為にな」


「じゃあ俺が!!」



 そう言って手を挙げたのは【オデ ノビナガ】というプレイヤーだ。武将のような名前だが、ジョブはアサシンだ。



「認識阻害に遮音、凄いアーツだな……ありがとう、これで問題なさそうだな……アマテラス出てきてくれ」


『圧巻の光景じゃな!これほどの強者が一堂に会するとは』


「「おぉーー!!」」


「可愛い!!」



 手乗りサイズのアマテラスを見たプレイヤー達は机から乗り出すようにアマテラスを凝視し、デレデレな表情をしているプレイヤーもいた。



「コイツはこの地の聖獣アマテラス。今はちっちゃくなってもらってる」


『アマテラスじゃ!みな、妾の魅力に平伏すがよいぞ』



 こうして俺達プレイヤーと聖獣アマテラスの密会が始まった。



 アマテラス曰く、この世界は数年前まで平和そのものだったそうだ。

【ハーヴェスト】の聖獣アマテラス、【マジックラフト】の聖獣ツクヨミ、【オーガスト】の聖獣スサノオ、それぞれが仲良しとはいかないものの、現在のように争う事などなく暮らしていたそうだ。



 アマテラスは豊穣の国【ハーヴェスト】を守護する代わりに、この地で採れた食料などを貢物として受け取っていた。



 貢物を聖域にいるアマテラスに届けるのは純粋無垢な子供で、特に血筋や家柄などに拘りはなく、この地に住む人達は子供の頃、誰もが貢物の献上を1度は経験しているらしい。



 だが、無用な争いや心配をかけまいと聖域には結界が施され、成人したこの地の人達は結界に入ることは出来ない仕組みにしていたようだ。



 そんな時、貢物の食料に呪いが施されており、体の自由が徐々に奪われていったそうだ。しばらくは抗ったが結局自我を奪われ、現在に至ったというわけだ。



 その後、この世界の現状をアマテラスに説明すると、目に見えて落ち込み、小さな9本の尻尾が力なく垂れ下がる。



『情けない話じゃ……』



 切なそうな表情で絞り出すように口にするアマテラスを他所にプレイヤー達が口を開く。



「ってことはその貢物を持ってきた子供が黒幕?」


「いや、さすがにそれは……」


「もうちょっと情報があるかと思ったけど……いっその事、黒幕が誰なのかとかさ」


「待て待て!今の話だけでもかなりの情報だ。まずはアマテラスに礼を言うのが筋だろう」



 好き勝手な事を言っていたプレイヤー達をクッコロが諌め、まずはアマテラスに礼を述べる。



『力になれず済まぬの……全て妾の失態じゃ』



 そう言って落ち込むアマテラスだったが、クッコロの言うようにかなりの情報があった。



「ゼル、君はどう考える?」



 クッコロが俺に話を振るとプレイヤーの視線が俺に集まる。



「そうだな……まず、黒幕がいるのは確定だ。で、その黒幕は貢物に呪いをかけて干渉できる……まぁこれはこの地にいる人なら誰でも出来るから微妙だけど、少なくとも黒幕のやりたいことの障害になりそうな聖獣であるアマテラスの動きを封じようとしていた。それが叶って国は戦争に発展した事を考えると、黒幕は国の方針を左右出来る影響力がある、もしくはその人物と親しい間柄にある。って感じかな」


「ふむ、つまり国の中枢に黒幕が潜んでいると」


「そうなるな」


「ふむ……」


「怪しいのは全員怪しい。けど、今は黒幕探しより他国との連携を優先した方が良いんじゃないか?俺達プレイヤーは国からすればかなりの戦力だ。その戦力である俺達が結束すれば今すぐ戦争を起こす事も出来るし、逆に長引かせる事も出来る。やりようはいくらでもあるし、黒幕を暴くのは後回しで良いとおもうんだけど」


「そうだな!しかしそれが1番困難だ」



 皆俺の意見に納得してくれたのか、ウンウンと頷いてくれている。しかしクッコロの言うように他国との連携が1番の問題だ。



 堂々と他国に入ることは出来ず、かといって抜け道もない。辿り着いたとしても疑われ戦闘になる可能性もあるし、そもそも俺達の意見に賛同してくれない可能性もある。



「黒幕の方は私が情報を纏めつつ気にかけておこう。皆は他国への移動手段、経路、その辺りを探ってほしい」


「「おぉ!!」」


『少しよいだろうか……』



 話が終わりそうなタイミングだったが、アマテラスが割り込んできた。



『ツクヨミもスサノオも、今現在どうしておるか分からぬが、万が一戦うような事があるかもしれん。これをお主達に貸し与えよう』



 アマテラスがそう言うと、体から一筋の光が飛び出し、その光はやがて丸い手鏡のような物に変わる。



八咫鏡(やたのかがみ)じゃ。それを持っておれば他の聖獣とも対等に渡り合うことが出来るじゃろう』


「特攻アイテムとかか?…………アマテラス、それはこの場にいる俺達が持ってないとダメか?」


『好きに使うがよい。妾は口を挟まぬ』


「分かった、ありがとう。それとアマテラスはクッコロと一緒に行動してくれないか?クッコロは俺達の纏め役だし、国の重役と繋がりがある。怪しい奴がいたら一緒に考えて欲しいんだ」


『承知した。妾の守護する地での出来事、力にならぬ道理はない。クッコロとやら、よろしく頼むぞ』


「こちらこそよろしく頼む」



 もし他国が俺達と全く同じ状況なら、【八咫鏡】を他国のプレイヤーに渡して上手く立ち回ってもらおう。

 俺達が全部の聖獣を倒して回る手間が省けるし、その間に黒幕を探したり色々出来る。



「よし、では解散。各自死ぬ事がないよう気をつけてくれ」


「「了解!」」



 なんとかして他国に行く方法を探さないと……街にでも行ってみるか!

~とあるプレイヤー達、会議終了後の会話~


「しかしゼルさん、よくアマテラスに勝てたよな......」


「物理無効で、カウンターで武器破壊だっけ?ソロじゃまず無理だよな」


「そうそう、ゼルさんはたまたまセラちゃんが居たから勝てたって言ってたけど......」


「召喚士かテイマーじゃないと無理ゲーだよな......そんなイベント、メインイベントの途中に普通組み込むか?」


「もしかして負けイベントだったんじゃない?HPがゼロになっても死なないままイベントが進行するヤツ」


「でもゼルさん勝ってるし、実績もアマテラスに勝ったら貰えたって言ってたぞ?」


「アマテラスがあんまり強く無かったとか?」


「魔獣戦の時のライドロボット、ワンパンするくらいの攻撃力はあったらしいけど」


「ってことはあの人、負けイベントに勝っちゃったの?初見で?」


「.....................ヤバくね?」



読んで頂きありがとうございます。

今後たまにこんな感じの後書きを挟んでいく予定です。

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