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5話 ゲームスタート

 足の間に収まっているテラを持ち上げ立たせた後、街へ向かうため俺も立ち上がる。

 すると立ち上がった俺のズボンをテラがクイクイと引っ張ってきた。



「ん?なんだ?」



 ズズっと鼻をすすった後、テラは何も無い空中を、まるで何かを掻き分けるかのようなアクションをした後、そこに頭から飛び込んだ。

 上半身だけがどこかに消え、足と尻尾をバタつかせながら何かをしているようだ。

 その様子は、引き出しに頭を突っ込み、何かを取り出しているかのようだった。



「な、なんだぁ?」



 少しするとテラは着地し、薬草3つを両手で持ち頭上に掲げて俺に見せてくる。



「おぉ!インベントリからアイテム取り出せるのか」



 コクコクと頷いたあと、テラは薬草3つを地面に置いてそれを指さしてくる。



「んん?……薬草欲しいのか?」


 コクコク


「分かった、好きに使っていいぞ」



 俺の言葉を聞くと、テラは薬草に向かってワタワタと作業するようなアクションを行う。

 すると、ポンっと音と共に少し大きめの薬草が現れた。



「うぉっ!上薬草……早速作ってくれたのか!ありがとな」



 ニッコニコなテラから上薬草を受け取り、頭を撫でてあげる。気持ちよさそうに目を細めるテラがとても可愛らしい。



「じゃ、街に行こうか!」



 コクリと頷いたテラは俺の腰に飛びつき、そのままヨジヨジ登って首に跨ってくる。肩車状態だ。さらに俺の髪をアムアムしている。



「こ、コラっ……あれ、痛くもないし濡れもしないな……じゃあ良いか」



 テラを肩車したままホームを南下する。

 少し進むと空間が揺らいだように見え、それが治まると目の前に街への入口と、槍を持ち鎧を着込んだNPCが見え、その背後には巨大な街が見えている。



「おぉーーー!!!!…………ここが始まりの街か」


『おっ?初めて見る顔だ!あんた異界の冒険者だな?』


「うん?あぁ、そうだ」


『はっはっは、良く来たな!歓迎するぞ。分からない事ばかりだろうから、まずは冒険者ギルドに向かいな。場所は__』



 このNPCにはかなり親切に色々と教えてもらった。

 入口の先は中央区と呼ばれ、冒険者ギルドやNPCが営む店などが集まっているようだ。

 そして西区には戦闘ジョブギルドや専門店、東区には生産、採取ジョブギルド、北区はプレイヤー達の露店が出せる場所となっている。



 早速教えてもらった冒険者ギルドへと向かう。



 入口を抜け、まず目に飛び込んできたのは、凄まじい数のプレイヤーだ。



「やっぱ多いなぁ」



 時刻はゲーム時間でam3時。

 キャラクリをいじったり、ステの確認などで結構な時間が経っていたようだ。



 夜でも視界が悪いことはなく、辺りを見渡しながら歩いているとNPCの店も営業しているようだ。



 冒険者ギルドに向かう途中、広場の中心にある噴水に立ち寄り、噴水の中の水に手を突っ込んでみた。



「ヤバいな……マジで水の中に手突っ込んでるみたいだ」



 手を水から出すと、濡れた感覚は一瞬で無くなり、手も濡れていない。



「不思議な感覚だなぁ……」



 感動に浸っていると、テラから頭をポンポン叩かれる。



「ごめんごめん、行こう」



 冒険者ギルドに着くと、これまた凄い数のプレイヤーに圧倒されながらも、受付をしているNPCに話しかける。



 そしてギルドやNPCの店は24時間営業だと聞いた後、プレイヤーカードというアイテムを受け取った。

 これでチュートリアルが完了となり、プレイヤーカードを受け取ったことで、プレイヤー同士の繋がりが解放され、チャットやフレンドコードの交換が可能になった。



【実績:冒険の始まりを達成しました】

 獲得:500G



 冒険の初期費用を受け取り、ギルド内を見ようとも思ったが、人の多さに嫌になり外へ出る。



「のんびり歩きながら召喚士ギルドに行ってみるか!」



 テラにそう話しかけ、西区に移動、召喚士ギルドを探す。

 そしてマップを見つつ召喚士ギルドに辿り着いた。



「誰も居ないな……」



 いくら不人気だとしてもギルドに俺以外居ないとは思っていなかった。

 受付のNPCに話しかけると、冒険者ギルド同様の歓迎の言葉と、召喚士ギルドで受けることが出来るクエスト、クエストボード、資料棚の説明を受けるが、今現在クエストは何も受けることが出来なかった。



「資料覗いとこうかな」



 さっさと街の外に出てレベル上げもしたいがまだ空は暗い。夜の間は強いモンスターや、レベルの高いモンスターが出現する為、明るくなるまでは街で時間を潰すつもりだ。



 テーブル席に座り、資料という名のヘルプ本を読む。テラは俺の膝の上だ。



「やっぱり全ては載ってないか……」



 ここで得た召喚士の情報は主にメダルについてだ。


 ・★1~3銅色ノーマル、★4~5銀色レア、★6~7金色スーパーレア、★8虹色ウルトラレア。


 ・召喚には種族メダル、効果メダル2枚が必要。


 ・召喚時ウルトラレアは1枚まで、レア度合計20まで。



 得た情報は少ないが、これだけでも分かったのは有難い。



「色々と縛りはあるんだな……使用メダルにレア度縛りがあるとなると、組み合わせも色々考えないと」



 本を棚に戻し、ギルドを出て中央区に戻ってきた。

 色々と店などを見て回ったが、鉄の片手剣が1番強く値段も高い。全ての武器種は揃ってはおらず、ガンズブレイドを始め、変わった特性を持つ武器などは売られてないようだ。



 店を巡っている間、強そうな装備をしたプレイヤーもすでにいた。



「どんだけスタートダッシュ決め込んだんだよ……」



 俺はこのゲーム内で最強だとか、コンテンツ最速攻略なんかには興味が無い。

 のんびり、やりたいように遊んでいくつもりだ。



 その中で唯一意識しているのが口調だ。

 普段、リアルでは誰に対しても敬語を使っている。後輩であっても余程親しくない限り相手が年下でもだ。

 社会に出れば皆、尊敬すべき大人だと思っているし、馴れ馴れしい奴だと思われたくもない。



 他のゲームやネットを使う際もそれは同じだったが、AnotherWorldでは相手の声色も分かるし、表情も分かり、感情が伝わりやすい。



 相手を見下した口調を使うつもりはないが、ゲーム内で会社のことを思い出したくはないので、砕けた感じのいわゆるタメ口を使っていこうと意識している。



 これも一種のロールプレイだ。




 そうこうしていると午前5時、空が明るくなってきた。



「戦闘、レベルアップといきますか!!」

読んで頂きありがとうございます。

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