40話 強敵との戦い・後編
戦うコックさん、ソニアに勝利しHP、MPの自然回復を待つ間にソニアの手料理をご馳走になった。
ビーフシチューのような料理で、めちゃくちゃ美味く自然回復力が上昇するバフも付いている。
『そろそろ回復したかな?次はボクが相手だよ!』
「お手柔らかに頼むよ」
次の相手はステラ。ソニア同様ガチンコバトルかと思いきや、少し変わった内容の力試しだった。
『ボクの居合切りの一撃を躱すか、防ぐことが出来たらゼル君の勝ちで良いよ!出来なかったらボクの勝ち』
「それだけっ!?……聞いた限り簡単そうだけど」
『召喚者の皆と一緒に挑戦してきても良いけど、ボクはゼル君1人での挑戦をオススメするよ!』
「……何か理由でもあるのか?」
『やってみれば分かるよ!』
「…………分かった、俺1人でやるよ」
仮にステラが以前出会ったイアイタチの様な広範囲の技を繰り出してくるのなら人数差は有利にならないし、俺1人なら召喚者達が切り裂かれるのを見ずに済む。
個人的にも自分が狙われている方が対処もしやすい為、ステラ戦はソロで行う。
ステラと距離をおいて対峙する。
『今回は先手を譲ってあげる。君が動き始めたら開始だ』
「分かった」
ソニア曰く、ステラは俺達4人がかりで戦い辛勝したソニアよりも強いとの事だ。簡単に勝てるとは微塵も思っていないが、勝利条件は居合切りを1発躱すか、防ぐだけ。打ち倒す必要がないぶん、勝機はある。
ふぅ……息を吐き集中力を高め、特殊アクションを使い急接近する。
同時にステラが腰を落としカタナに手をかけた。
カタナが抜かれるであろうタイミングを見計らい、特殊アクションを使って直角に上昇する。
これで居合切りを躱せば………
『甘いよ』
「あちゃー……」
俺はステラがいつの間にか放った氷魔法で、ガチガチに凍らされ、拘束されると同時に居合切りの直撃を喰らった。これは確かに俺1人の方が良い。ステラの放つ魔法が広範囲過ぎて数の有利が活かせそうにない。
(可愛い顔して結構エグいことしてくるなぁ……)
死にはしなかったがHPが1になり、再び自然回復のため雑談タイムとなった。
その後もHPが回復次第挑戦したが、ステラは本来魔法使いのようで、かなり多彩な魔法で俺の接近を阻む。
周囲を走り回ってみても一面火の海にされて丸焼け、氷の槍が降り注ぎ剣山にされ、風の刃で切り刻まれた。
攻めあぐねて動かずいると、かなり広範囲に地面と一緒に足を凍らされ、居合切りの餌食にされた。
『降参かな?』
「勝てるビジョンが見えないし、それも有りかな…………だけど、もうちょっと挑戦させてくれ」
ステラに小細工をしても多彩な魔法で完封されてしまう。まだ愚直に突撃し居合切りをどうにかする方が見込みがありそうだ。
勿論、居合切りも見てから反応するのは不可能な程の速度で繰り出されるため何か対策が必要なのだが……
HPの自然回復を待つと時間がかかりすぎる為、召喚者のミラに回復してもらうことにした。
次の挑戦では真っ直ぐに距離を詰め、一か八か、居合切りをパリィしてみようと思ったが、ステラにフェイントを掛けられ、俺が空振りしている間に居合切りの餌食にされる。
その後、何度も挑戦したが結果は変わらず……
(ラスト!)
…………
(ラストのラスト!)
…………
(泣きのもう1回!)
…………
『中々頑張るけど、まだやる?』
「正真正銘のラスト!!」
随分と粘ったが、本当にこれがラストだ。
とはいえ、イアイタチのように一定のタイミングで居合切りを放つ訳でもなく、フェイントすら交えてくるステラの居合切りをどう対処していいか解決策が全く見つからない。
武器で受け止めようとしても軌道をズラされバッサリやられてしまうし、ステラを翻弄出来る敏捷もない。
(さて、"あれ"が攻略のヒントになってると良いんだけど……)
『準備はいい?』
「……あぁ!」
そう告げると同時に距離を詰める。
何度も繰り返した方法だが、他に活路がない。
ステラが構えると同時に俺も【魔装】を使い、上がった敏捷ステータスを活かしてスピードの差異を生み出す。
そしてステラがカタナを抜こうと僅かに腕を動かすのが分かったが、そのまま突っ込む。
少ししてステラのうさ耳がピクっと動いた瞬間、パリィを放った。
『おぉーーー、お見事!!』
「はぁ、はぁ…………ふぅ、ずっと気付けなくてゴメンな!最初からヒントはくれてたのに」
現状レベルの低い俺ではステラを相手に対等に渡り合うのは不可能だった。
それを分かっていたのか、ステラは最初から居合切りを放つ瞬間、僅かだが耳を動かしタイミングを教えてくれていたのだ。
『んふふ…………はい、これ!ボクに勝った証だよ』
「さすがに喜んで受け取れないな……良いのか?」
『勿論!』
ステラから貰ったのは【ポーション・改】というHP、MPを同時に回復出来るアイテムのレシピだ。
『次の相手は私だ。このままやるか?』
「ちょっと休憩したら頼むよ!」
『ふふ、私からは少し変わった挑戦を提案しよう』
休憩がてら話を聞くと、次の相手であるミラとの対戦内容は、謎解きを用いた頭脳戦だ。
詳しく説明を聞くと、配線を繋いで謎を解くパズルらしい。
「今日中に終わんのかな……」
『理不尽な難易度にはしてないさ』
ミラはそう言いながら何処に隠していたのか、1メートル四方の板を取り出し、俺に手渡してくる。
「この魔石を光るように配線すれば良いんだな」
『あぁ、特に制限などもない。のんびりやってくれればいい』
「了解!」
ライドの魔力回路を構築した俺にかかれば楽勝だろうと思っていたが、意外に……いや、かなり難しい。
ライドの魔力回路に似て、自由に配線の仕方を変えることは出来るが、魔石を光らせる為には一定の力が必要なようで、最短距離で繋いでも力が強すぎて魔石が光らず、最長だと力が弱くて光らない。
何も考えずいい加減にやってしまうと、バチッと手に電撃が走りやり直しとなってしまう。
それでも救いは魔力回路とは違い、明確な正解があったことだ。時間はかなりかかったが、無事クリア出来た。
「ふぃー!!」
『たまにはこういう遊びも良いだろ?』
「確かにな」
『私に勝った証はコレを贈ろう!是非役立ててくれ』
ミラから貰ったのは【簡易転移石】という魔道具のレシピだ。
1度使用すると壊れてしまうが、街やホームに転移出来る使い捨ての帰還専用アイテムだ。
『現物も一緒に渡しておこう』
「ありがとう!これで今日の帰りも楽チンだ」
時刻は夕暮れ時。いよいよ次が最後の相手だ。
『よしっ、最後は俺が相手だ!俺とは純粋に一対一の戦闘での力比べをやるぞ』
「イベントも大詰めって感じだな!よっしゃ、宜しく頼む!」
『俺に一撃でも当てる事が出来たらお前の勝ちで良い。お前のHPが1になったら仕切り直しだ』
破格の条件だが、ボコボコにされ力量差を見せつけられたソニアやステラが慕っている存在だ。弱い事は有り得ないだろう。
気合いを入れアクセルと対峙する。
『ふふん!』
「っ!……お前もガンズブレイド2本使いか……滾ってくるなぁ!!!」
『……こい』
今日1番の気合いが入り、肉薄する。
特殊アクションによる高速移動から【ダブルホイール】を放つが最小限の動きで避けられ、逆にフルバーストに似たアーツの直撃を受ける。
ぶっ飛ばされすぐに体勢を立て直すが、すでに目の前には振り下ろされた武器が迫る。
回避で躱しはしたが、間髪入れず空中からのかかと落としを肩に受け、HPが1となった。
「…………」
『相手はマスターだ。少しばかり手を貸そう』
瞬殺され呆然としていた俺にソニアが話しかけてくる。
ソニアが俺に手をかざすと、体が炎に包まれるが熱くはなく、もしろ温かくて気持ちいいくらいだった。
「あぇ?HPが回復してる……」
『ソニアは癒しの炎も使えるんだよ?凄いでしょ!』
HPだけでなくMPも回復し、唖然としているとステラが自慢げに教えてくれた。
『仕切り直しとなった場合、傷は私が癒そう。存分に戦うと良い』
「分かった。ありがとう」
召喚者ミラによる回復もMPの関係上、あまりにハイペースで負ける続けると追いつかなくなる。ここはソニアには甘えるとしよう。
問題はアクセルだ。
同じガンズブレイド2本使いだが、練度がまるで違う。NPC特有の無駄のない操作でガンズブレイドを巧みに使用し、ステータスもかなりの差がある。
「良いね、お前からはテクを学ばせてもらうよ!」
『おう!好きに盗め』
最初の数回はほぼ瞬殺され、何も得るものが無かったくらいだが、次第に俺の知らないテクニックなんかを見る機会があった。
(あんな風に動けるのか……学びが多いな)
このゲームの戦闘は格ゲーのようなコマンド式に感覚が似ている。
アクセルが見せた、俺が出来ないような動きも、コマンドを知らないだけで練習を積めば可能なはずなのだ。
勿論、勝つことも忘れている訳では無いが、アクセルはソニア戦のように召喚者と共に戦えず、ステラ戦のように活路を見出すヒントも与えてくれない。ミラのように優しさもなく、無慈悲にボコボコにされていく。
さらにアクセル特有の能力なのか、予知能力ともいえる見切りの速さで俺の攻撃は全く当たらず、NPC特有の正確無比な攻撃を仕掛けてくる。
(さて、どうすれば勝てるんだ?)
順当に攻めてもPSは相手が格段に上。相打ち覚悟で攻撃を仕掛けてもきっちり対処されてしまうため、思いもしない行動で隙を突くしかない。
もう何度目か分からないが、再びアクセルと対峙する。
開幕から【魔装】を使い、アクセルに迫る。特殊アクションを連続使用し、ジグザグに高速移動して間合いに入る。
アクセルが反応するタイミングに感をはり、特殊アクションを前方に放ち一旦距離をとる。それと同時に【フルバースト】を放った。
フルバーストを煙幕に見立てたが、見切られ躱されてしまう。しかしそれは承知の上。アクセルが回避した先に、左手に装備していた速射型のガンズブレイドを投擲する。
それすら武器で弾き落とされる。
(ここっ!!!!)
その一瞬の隙を突いて、死角から相打ち覚悟で武器を振り下ろす。
アクセルが超反応を見せ、振り返りざまに斬りつけられた。
続けてアクセルは、俺の攻撃を武器で防ごうと構えを見せるが、俺は攻撃を途中でキャンセル、そのまま武器を捨て、素手で殴りかかった。これにも反応したアクセルがすぐに反撃の一撃を振るう。
『『『そこまで!!!』』』
ミラ、ステラ、ソニアの声が同時に響く。
『ここまで、だな』
「くぅーーー、これでもダメか……」
『いや、お前の勝ちだ』
俺には一瞬過ぎて分からなかったが、俺の最後の拳撃が一瞬早くアクセルの腕にカスっていたらしい。
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