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32話 ライド完成

 やり直しを決意し、数日かけパーツも魔鋼製に変更、諦めていたデザインや機能も付け足し、納得のいく設計図を完成させた。

 その間にも魔鋼は量産でき、実際にパーツをある程度製作できるくらいには集まっている。



「よしっ!パーツの製作はテラに任せよう。俺はそれを組んでいく。頼んだぞ!」


 コクコク



 設計図が完成すれば、パーツはテラも作る事ができる。俺が作るよりスキルレベルが高いテラが作った方が、パーツの耐久力が上がり、結果的にライドの連続使用時間も伸びる。



 魔鋼が足りなくなった時はレベル上げに行き、魔鋼が出来ればライド製作という日々が1週間ほど続いたが、無事組み上げる事が出来た。



「よっし、とりあえず形は出来たな!」



 悪路を想定し前輪は大きなタイヤを真っ二つにしたような二輪にしてそれぞれが駆動し、後輪はかなり大きめにした。

 パーツ全てに耐久がある為、小さな内部パーツを保護のするため外装で覆い隠し、無骨ながらも流動的なフォルムになった。

 狼の尻尾を模した大きめのマフラーが印象的で、大型二輪程の大きさになってしまったが、とても満足だ。



 テラは勿論だが、レラが居なければそもそも魔鋼を入手出来なかったから大助かりだ。その間、戦闘組は退屈だっただろうが不満も表に出さずにいてくれた。



「さて、ここからが本番だ」



 ライド製作の本番は組み立て後だ。



 今、俺の目の前にあるライドは設計した60パーセントの性能しかない。

 これを100パーセントにするには魔力回路と呼ばれる、パーツそれぞれから出ている魔力の糸のような物をエンジンに繋いでいかないといけない。

 これがライド製作最大の山場だ。



 この糸はパーツ毎に形状や長さが異なり1つのパーツから複数出ている物もある。



 この糸を切ったり、より合わせたり、引き伸ばしたりしながらエンジンまで繋ぐ必要があるのだが、1ミリ以下の調整で性能が上がったり下がったりする為、かなり慎重な調整が必要となる。



 スキルレベルが高ければこの調整が幾分かマシになるのだが、俺のスキルレベルでは不十分なようで、1ミリ以下の調整がかなり性能に響いてくる。

 勿論やり直しは出来るのだが、全体の調整で性能に影響が出る為、無闇にやり直しをすると上手くいっていた部分もやり直す羽目になってしまう。



 現状のスキルレベルでは100パーセントの性能にすることは確実に無理な為、85パーセントを目標に調整をしていく。



 ここからは調整と失敗の繰り返しだ。



 頭で考えても結果はほとんど変わらない為、ひたすら同じような調整を繰り返す。



 2週間が経った頃、肉眼では変化が分からない程の調整を繰り返し、すでに再現は不可能だが、奇跡的に92パーセントまで性能を引き出せた。



「もう無理だ…………ここで完成にしよう」



 レベル上げにも行かず、ひたすらホームに籠り2週間、頭がおかしくなりそうだ。



 しかし苦労の甲斐あって、遂に俺のライドが完成したのだ。



「長かった……ガレージも作らないといけないけど、先に試運転といこうか!!!…………いや、素直にガレージ作ろう」



 気持ちが逸り先走りそうになったが、ライドは使わない間そのままにしておくと、パーツの耐久が徐々に減っていってしまう。それを防ぐ為ガレージが必要なのだ。



 とりあえず見た目等には拘らず、機能だけを持たせたガレージをさっさと作り、ライドに召喚石を近付ける。



【オリジナルライドアイテムを登録しました。名称を設定後、転送が可能となります】



 名称はもう決まっている。シリウスと登録し、いよいよ試運転だ。

 皆を連れて街に、そして平原に出る。



「転送、シリウス」



 その言葉と共に地面には魔法陣が浮かび上がり、ライドが瞬時に転送されてくる。



「きたきたきたーーー!!!やっとだな」



 ライドに跨ると召喚者達は俺の中に吸い込まれ、それと同時に魔導エンジン・ズンドコハートがバスドラムのような音を奏で、起動する。



 ブレーキを握り、アクセルを軽く開くとエンジン音は激しくなり、巨体なマフラーからはフイィィィという音と共に赤い魔法の粒子が舞う。



「最っっっっ高だ!!!」



 プレイヤー達からの物凄い視線を感じるが、どうでもいい。



 アクセルを一旦戻し、ブレーキを離してまずはゆっくりと進む。

 大型な割に操作性も悪くなく、結構な段差でも乗り越えられる。



 速度に関してはかなり良い性能で、アクセル半開くらいで前に乗った馬型ライドモンスターより速く感じる程だ。



 そしてさらにアクセルを開き、フルスロットルで街を2周ほど走る。



 風の影響もなく、思う存分走ることが出来た。



「ふぅ…………最高!」



 ライドから降りると自動でエンジンは停止し、召喚者が一斉に出てきた。

 キャッキャッとはしゃぐ様子を見るに、ライドに乗っている間は視界を共有しているようで、俺と同じ景色を楽しんだようだ。



 テラはレラの下半身に跨り、ライドに乗っているかのように体重移動しながら遊んでいる。



「コラコラ…………うん、耐久も問題なし!送還」



 ホームにあるガレージに送還されていれば完全に完成だ。



 意外と他のプレイヤー達からは何も言われず、そのままホームに戻る。



「送還も問題なし!ライド、完成だぁ!!!」



 約1ヶ月近く費してしまったが、オンリーワンのライドを手に入れた。



「さてさて、ライドを掲示板に投稿して…………あとはレシピの公開だ」



 ライドにもゲーム掲示板内でランキングの様なものがあり、人気のライドなどが表示されるようになっている。そこに俺のシリウスを投稿し、同時にシリウスの全てが記されたレシピも公開しておく。



 これが俺の金策だ。



 この公開したレシピを使えば、機工士で素材があれば誰でもシリウスを全く同じ状態、面倒な魔力回路なども省いて作る事が出来る。



 その為、シリウスが市場に出回る事になるのだが、シリウスを購入したプレイヤーは料金の内訳に開発料金が含まれる。その開発料金が、レシピを開発した俺に運営を経由して振り込まれる仕様となっている。



 勿論悪い使い方は出来ないようになっている。



 別の機工士がシリウスのほんの1部を変えて自分が開発した物だと主張しても、元のレシピから50パーセント以上の変更がない場合、運営システムから許可が降りないようになっている。



 50パーセント以上の変更となると厳しいように思えるが、変更点は魔力回路も含まれるため、性能を度外視すれば案外簡単に達成出来る。



 これはライドに限らずオリジナルレシピ全てに共通する仕様だが、製作物によって変更率や開発料金も変わってくる。



 レシピを秘匿し製法を独占、製作依頼を受けて稼ぐのも勿論可能だが、俺はその製作時間を冒険など他のことにあてたい。



 稼げる金は少なくなるが、買ってくれるプレイヤーがいる限り何もせずとも金が入ってくるのだ。



「まぁ魔鋼が出回らない限りしばらくは無理だとは思うけど、もうすぐ新規プレイヤーも増えるし、後々少しは稼げるだろ」



 ライド製作に一区切りついたが、レベル上げもしたいし、冒険にも行きたい。新しい街に行きたいし拠点の改良もしたい。



 困った……やりたいことが多すぎる。

読んで頂きありがとうございます。


10/26追記

シリウスは狼の形をしたバイクではないです。


ポ〇シェの718ケ〇マンがワニをモチーフにしているように、シリウスもそんな感じの大型バイクとなります。


説明不足すみません。

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[一言] 狼形バイク自分なら馬もしくはドラゴンにします。
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