30話 新たな力
ミラとセラの実力を確認した後は、狩場を森、洞窟と渡り歩きレベル上げに勤しんだ。
洞窟で主に過ごし、俺がアタッカー兼タンクを受け持ちボスにも挑戦したのだが、セラが俺から危うくタゲを奪いそうになる程の火力を叩きだし、無事討伐も完了した。
そしてミラ、セラのレベルが8まで上がったタイミングで1度街に戻ることにした。
「キリの良いところまで上げたかったけど、皆と約束したもんな!ちょっと過ぎちゃったけど……」
まずはホームに皆を迎えにいく。
「ただいまー…………遅くなってごめんな!」
ホームに着くや否や、建物の扉が勢い良く開かれ、テラが俺にしがみつくように抱きついてくる。
遅れてレラ、ドラが建物から出てきたのだが、レラとドラ共に何かを持っているようで、頭上に掲げながら駆け寄ってきた。
「んっ?…………くれるのか?ありがと」
―進化の宝玉―
・離れていても心は1つ
「って、えぇぇぇぇ!?」
驚いたことにレラとドラが、進化に必要で入手方法が分からなかった【進化の宝玉】を持ってきたのだ。
どちらの宝玉も専用アイテムらしく、レラが持ってきた物はレラの進化に、ドラの物はドラの進化で使うようだ。しかし入手条件が分からない。
「離れていても心は1つ……か。パーティを外すくらいしか変わったことはしてないよな……」
この事は召喚士仲間に共有し、色々と条件を絞り込んでもらうとしよう。
「とにかく、まずは飯だ!皆行こう!」
幼い子達を大勢連れていた為、かなり周囲から注目を集めてしまったが、構わず食事を済ませた。
「食事代もバカにならなくなってきたな……」
今は500Gの食事を6人前頼み、1日2回は食事をするようにしているため、食費だけで6000Gが消えていく。
「仕方ないか!なんならもっと良いもん食わせてやりたいくらいだし……」
金策も考えていないわけではないが、まだどうなるか分からないといったところか……
飯屋を出て、冒険者ギルドに行き、クエストの達成報告を済ませた。全員に経験値が入るためウハウハだ。
そしてキャミーの店を訪ねる。
「こんにちはぁ」
「はーい、あっ!有名人じゃん。いらっしゃい」
「はぁ!?やめてくれよ……」
「ごめんって!……それで今日は?また服かな?」
「それもあるんだけど、モデル募集の依頼出てるの見てさ……コイツらなら良いモデルになると思って」
そう言いながら視線を落として召喚者達を見たあと、ミラとセラを新たに紹介する。
「ぃやーーーん、可愛い!!!また新しい子!?」
「うん、黒髪がミラで、金髪がセラだ。この子らの服も後で買うつもりだから宜しく!」
モデルに関しては皆が嫌がるようなら断るつもりだったが、召喚者達は皆ノリノリだ。
キャミーは、すでに俺の声が聞こえてないようで、鼻息を荒くし召喚者達に服をあてがっていた。
「あぁーん、可愛い過ぎる!!なんなのっ!?ミラちゃんのこの魅力!小悪魔なの?私を誘惑するの!?セラちゃんも可愛すぎて、マジ天使!」
「うーーん、間違ってはいないな……」
「はぁーーーー!!さい…………」
パタっ……
「えぇぇぇぇ!?ど、どうしたっ!?」
はぁ、はぁと息を荒げ、血走ったかのような目でミラとセラを見ていたキャミーが突然、電池が切れたかのようにパッタリと倒れた。
少しすると何事も無かったかのように起き上がる。
「ははは、ごめんごめん。興奮しすぎて、ゲームの方から体調不良だと思われたらしくてさ……強制的に接続切られちゃった。もう大丈夫!」
「どんだけ興奮してんだよっ!!」
その後は雑談も交えながら、キャミーは召喚者達を相手にし、新しい服のアイディアを膨らませていたようだ。
キャミーは服飾関係の専門学生らしく、将来はデザイナー志望なんだそうだ。
「はあぁ…………満足」
随分と艶っぽい表情でそう告げた後、気を持ち直しサンプルを無数に出してくれた。
「依頼の報酬は服の代金ってことで良い?」
「えっ!?良いの?貰い過ぎじゃないか?」
「良いの良いの!さぁ、ミラちゃんとセラちゃん、好きなの選んで!要望もあったら教えてね」
『テンキュー』『テンキュ』
「…………鼻血出そう」
「ははは……」
ミラはペコりとお辞儀をしながら、セラは消え入りそうな声でお礼を言っていた。
しかし、テンキュー1つとっても召喚者達によって言い方が違うのは面白い。
AI、凄い!!
そうこうしていると、セラは真ん中にリボンの付いた白のブラにパンツを選択。
まさに天使なのだが、何故服を選ばず下着なんだと言いたいが、今は我慢しよう。
問題はミラだ。
黒で揃え、レースのガーターベルトにストッキング、レースの下着と、かなりセクシーな物を選んだ。
「い、いかんいかん!!大胆すぎるぞミラ!!」
「オヤジかっ!えー、良いじゃんべつに……エロいしめっちゃ似合ってるよ」
「だからだろ!幼女に何着せてんだよ!」
「テラちゃんみたいに大きくなったら最強でしょ!見た目エロ装備はゲームの基本だし!」
ミラもかなり気に入っているようで、小悪魔が切なげな表情で俺を見つめてくる。
「はぁー好きにしていいよ」
結局モデル依頼の報酬でミラとセラの衣装がタダで貰えた。
ミラとセラの翼の位置に穴を空けたレインポンチョもオマケしてもらったので2人に速攻着せる。
「よしっ!……やれやれだ」
「えー、勿体無い。…………みんな新しいの欲しくなったらまた来てね?」
『テンキュー!!』
皆でキャミーに礼を言い、ホームに戻る。
「なんかめちゃくちゃ疲れた……」
主に心労だが……
しかしやることはまだある。ついにレラとドラが進化出来るようになったのだ。
早速進化してもらおう!
まずはレラからだ。
祭壇の上にある台座に【進化の宝玉】を近付ける。
【【★3メダル】が2枚不足しています】
「……やっぱ宝玉だけじゃ駄目か」
進化には専用の宝玉、★3メダルが2枚必要の様だ。
「★3なら蛇、エレメント、ガイコツから入手出来るな。先を見越してミラとセラの分も集めちまうか!」
この日余った時間は★3メダルを狙うことにし、どうせメダル化するとなると、経験値は入らないのでフルパーティで出かけてみた。
見つけた蛇やエレメントはドラが釣り、セラが蜂の巣にしつつ、他の敵は俺とミラが始末。その後メダル化という流れができ、かなりスムーズに進んだがメダル集めは翌日まで持ち越しとなり、1日かけて【★3爬虫類】と【★3精霊】を4枚ずつ集めきった。
夜ご飯を食べてホームに戻る。
「早速レラとドラの進化といこう!」
祭壇の台座に宝玉とメダルをセットする。
光に変わったメダルが宝玉に吸い込まれ、宝玉がレラの頭上まで舞い上がると細かい粒子に変わり、水晶のような結晶がレラを包み込む。
そして強い光と共に結晶が砕け、レラが姿を現した。
おっとりした感じはそのままだが、モジモジと恥じらう姿はない。
体もテラと同様に成長を遂げ、女性らしさが目立ち始めた。ヘビのような下半身も少し太く逞しくなり、鱗もキラキラと輝いている。
「おぉー!綺麗になったなレラ」
『テンキュー』
―レラ―
Lv:1
種族:ラミア
HP:15/15
MP:20/20
筋力:5
耐久:5
敏捷:5
器用:15
魔力:5
―スキル―
・蛇腹Lv3
・ギャザラーEXLv4
*簡易表示
―アーツ―
・「蛇腹」:【産卵Lv2】・【地形把握Lv3】
・「ギャザラーEX」:【超幸運Lv2】
「ステータスも順当に上がったな…………よしっ!次はドラだ」
ドラも同様に進化が始まる。
そして結晶が砕け姿を見せたドラは、体も大きくなり顔つきもやや凛々しくなっている。
少しやんちゃそうだが、いじめられている妹を守るお兄ちゃんといったところだろうか。
「うんうん、ドラもカッコよくなったな!頼もしいぞ」
『テンキュー!!』
【進化が完了した為、種族スキルが解放されました】
「おっ?新発見だ」
―ドラ―
Lv:1
種族:ヴァンパイア
HP:25/25
MP:15/15
筋力:12
耐久:14
敏捷:6
器用:7
魔力:6
―スキル―
・ハロウィンナイトLv1
・暗黒騎士Lv4
・混沌Lv3
―アーツ―
・「ハロウィンナイト」:【供物の力Lv1】
・「暗黒騎士」:【暗黒のオーラLv3】・【ダークスラッシュLv3】・⠀【暗黒の腕Lv2】・【暗黒剣Lv1】
・「混沌」:【表裏一体】・「攻防一体Lv1」
「種族スキルは【ハロウィンナイト】か……うんうん、いい感じだ!」
しかしテラが成長した時も思ったが、成長や進化することで、能力や見た目だけじゃなく、内面も成長しているように思える。
レラは柔らかな雰囲気はそのままだが、優しいお姉ちゃんみたいな感じだし、ドラも責任感が強いお兄ちゃんみたいな雰囲気がある。
「ずっと可愛いままじゃいられないって事だな!」
赤ちゃん動物と同じだ。
ずっと可愛いままでいて欲しいなら成長や進化を行わなければ良い。
それを選択出来るのもこのゲームの魅力だ。
「よしっ!進化も終わったし、いよいよライドの製作に着手していかないとだな」
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