27話 初めてのフレンド
武器別、ジョブ別バトルアリーナ両方で優勝する事が出来た。
報酬は明日、ログインした時に送られてくる。
今回の戦いを客観的に振り返ると、やはり運が良かったとしか言えない。
色々と要因はあるが、やはり1番はガンズブレイド2を使うプレイヤーが俺以外におらず、対応が遅れた事だろう。
これから同じようなイベントがあれば、今回のイベントで俺はガンズブレイド2を使う召喚士と大々的にバレた為、対戦相手は対策を練ってくるだろうし、ガンズブレイド2の動きも今回のイベントでしっかり記録されている。
「2回目は無理だろうなぁ」
奇抜な攻撃方法で相手の隙をつけただけ。
これが今回のイベントにおける自己評価だ。
「まぁ、今回はこれで良しとしよう。やりたいことは他にもまだまだあるしな!」
新しい冒険にも行きたいし、ライドも作りたい。レラやドラの進化も残っている。
「それより今回のイベントを見た新規プレイヤーから召喚士が増えると良いなぁ……」
予定ではあと1ヶ月ほどで全面的にAnotherWorldは展開される。
現在は先行プレイの為、プレイヤーは10万人とまだまだ少ないが、新規プレイヤーが増えると新しい武器の組み合わせによる戦闘スタイルや、ジョブの情報なども多く集まるようになる。
今回のイベントは、そんな使用武器やジョブに悩む新規プレイヤーにとってはかなり有力な情報となり、大成功といって間違いないだろう。
「よしっ!まずは祝勝会といこう!今日は特別に皆2000Gのご飯頼もうぜ!!」
召喚士のバトルアリーナは早朝からだった為、丁度お昼時の街に皆を連れて出る。
イベントの為か、普段冒険に出ているプレイヤー達も街に留まっているようで結構人数は多めだ。
飯屋に向かっている途中、「優勝おめでとう」と声をかけてくれるプレイヤーに会釈し歩いていると、大声で俺を呼び止める声が聞こえた。
「ゼルさーーーーん!!!!」
「んっ!?…………あぁ!ユーナ」
俺を呼び止めたのは以前出会った召喚士、ユーナだ。
「やっと見つけました……優勝おめでとうございます!」
「ありがとう!探してたのか……というか復帰したんだな」
動画配信者であるユーナは以前、俺の炎上のきっかけを作ったとして活動を2週間自粛していたが、無事復帰したようだ。
再び謝罪が始まったが、俺としてはもう気にしてない事だし、ユーナは全く関係ない。
そんなことよりも自粛と共にゲームを辞めたなどということにならなくて一安心だ。
「それで?なんか用事だったか?」
「あ、えっと……自粛期間中に今回のイベントの動画見てたらゼルさんが活躍してたので、お祝いの言葉だけでもと……」
「そっか!ありがとう。なら今から皆でご飯にするつもりなんだ。一緒にどうだ?」
「え、良いんですか?」
「勿論!っていうかユーナの召喚者は?」
「今はホームでお留守番してもらってます」
ということでユーナを伴い飯屋に行き、ちょっと贅沢なご飯を食べた。
その食事の際、色々と話し成長したテラや、ユーナにとっては初めましてのレラとドラも紹介した。
ユーナもリアルでは色々あったようで、配信活動で使うゲームアカウントをもう1つ作成し、今俺と話しているアカウントは完全にプライベート用にするそうだ。
近況報告が終わり、話すことがゲームの内容に変わったことで、ある提案をしてみた。
「せっかくだから召喚士同士、情報交換しないか?」
「それは有難いんですけど……私、大した情報持ってませんよ?良いんですか?」
「それは俺も同じだし、後々何か分かったら教えてくれたら良いよ!俺もまた新しい情報が分かったら教えるし」
「ありがとうございます!!是非お願いします」
話しは纏まったが、さすがに飯屋に長時間留まるのも悪いということで、召喚士ギルドで情報交換をすることになった。
「皆可愛いし、テラちゃん大きくなりましたねぇ!」
『『『テンキュー!!』』』
「はぁん……可愛い!!!」
「ははは……」
ユーナも召喚者たちの『テンキュー』の破壊力にやられたようだ。
そんなやりとりをしながら召喚士ギルドの扉を開く。
「あっ…………」「えっ…………」
なんと初めて先客がいた。
少し様子を見たが完全に俺達を見ていた為、プレイヤーネームを見てみると、人間種族の男性が【ポッコリ下心】、小柄なエルフの男性が【アリバー】という名のプレイヤーだ。
「ぶふっ……下心ちょっと出てんじゃん……あ、ごめん」
思わずプレイヤーネームを見て吹き出してしまった。
「あはは……あの、ゼルさんですよね!優勝おめでとうございます。試合見てました」
「おめでとうございます!」
「丁寧にありがとう。っていうか、ユーナもだけど別にゼルで良いよ?」
「あ、いえ…………その、ゲームのモチベが上がりました。ありがとうございます」
詳しく話しを聞くと、ポッコリ下心もアリバーも俺が炎上騒動の時のように、暫くの間腐っていたらしい。
2人共アクションが苦手で召喚士を選び、最初はコツコツ頑張っていたそうだが、苦戦が続くようになり野良パーティに入れて貰おうとしたらしい。
本来プレイヤーは召喚士の仕様とは真逆に、プレイヤー同士でフルパーティを組めば取得経験値が1.5倍に増加する。
これを利用しレベル上げの為、野良パーティに入れてもらおうとしたらしいが、召喚士はプレイヤーと召喚者でフルパーティの枠を2枠消費する。
テイマーも同じく2枠消費するが、テイマーの従魔は戦闘中に入れ替えができ、相手によって臨機応変に対応でき2枠で収まることからまだ容認されていたようだが、召喚者は入れ替えが出来ない。
それを煩わしく思われ、次第に野良パーティからは弾かれるようになったそうだ。
そして途方に暮れ、腐り……といった具合だ。
そんなお互いに似た境遇のポッコリ下心とアリバーがイベントの決勝を見て、居てもたってもいられなくなり、ギルドで意気投合、話しているところに俺達が来たというわけだ。
「確かに序盤はキツイよなぁ……じゃあ丁度良い!今から情報交換しようってユーナとここに来たんだ。2人もどうだ?」
「ホントですか?じゃ、じゃあお言葉に甘えて……」
「よろしくお願いします!」
だが俺以外召喚者を連れていない。
人目を気にしてホームで待機させているようで、せっかくなら全員で。となったのだが、いくら貸切状態のギルドとはいえ、占領するのは不味いだろうと、俺のホームに集まる事になった。
とりあえずはこの場でフレンド登録し、ホームに繋がる門の前で一旦解散となった。
そしてすぐに皆が揃う。
「うぇーーーー!!!家があるーーー!!!」
ポッコリ下心が到着してすぐに驚きの声を上げる。
「はは、これくらいなら皆すぐ作れるよ」
「お邪魔します…………色々設置されてるんですね」
「本当に同じホームだと思えない……」
ユーナとアリバーも俺のホームを見て驚いていた。
草原には家や複数の作業台、収納箱やらが乱雑に置いてある。
「とりあえず設置しただけだから散らかってるけど、ゆっくりしてくれ」
ユーナが連れてきた召喚者は、子犬程の大きさで、白銀の毛並みの狼。
ポッコリ下心は同じくらいの大きさ、だが角が異様に大きいカブトムシ。
アリバーは岩で出来た体を持つ人型ゴーレムで、ドラと同じくらいの大きさだ。
草原で輪になって地面に座る。召喚者達は皆で追いかけっこしながら遊ぶようだ。
「さて、まずは俺が知ってる事を話そうか。その後自分の持ってる情報と違うところなんかがあったら教えてくれ」
そう前置きし、俺が知っている全ての情報を伝える。
そして色々話し、俺も知らなかった情報を2つ手に入れた。
・種族メダル「岩石」の存在。
・人型、モンスター型と仮に呼称し、モンスター型は初期ステが高く、伸びも良いが、武器を装備出来ない。
「纏めるとこんな感じだな……なるほど、対戦相手のモンスター型が武器を装備してなかったのは仕様だったのか」
「…………」
「本当にこんなに沢山の情報、ただで貰って良いんですか?」
アリバーが困惑した様子で尋ねてくる。
「良いに決まってるだろ。もうちょっとレベル上げたらほとんど分かるような内容なんだし」
俺以外の3人はまだレベルが10になっていない。
「その代わり、今の情報からまた何か新しい情報を得たら、俺にも教えてくれ。Lv10くらいから召喚士めちゃくちゃ楽しくなるからさ!」
ポッコリ下心とユーナは必死にメモしているようで無口になっているが、アリバーが尋ねてくる。
「これ、掲示板とかに載せても……大丈夫ですか?」
「えっ?良いんじゃないか?俺は面倒くさくてやってないけど……」
「良いんですか?だとすれば凄いですよ!始めたばかりの初心者にはかなり有益な情報になります」
「そっか…………俺が載せてたら良かった話しなんだよな。ごめん」
アリバーは早速情報を纏め掲示板に書き込むと意気込み、ポッコリ下心、ユーナもやる気に満ちているようで、第1回情報交換会はお開きとなった。
「ふぅ…………やっとMMOらしくなってきたな」
人と関わることが出来るのがMMOの醍醐味だ。ソロも嫌いじゃないが、繋がりは欲しい。慣れない口調も少しはマシになるだろうか……
「今日は皆お疲れさん!この後はゆっくりしよう」
その後はログアウトまで皆と遊び、のんびり過ごす事にした。
読んで頂きありがとうございます。




