26話 ジョブ別バトルアリーナ
今日からはジョブ別のバトルアリーナだ。まずは予選を突破するぞ!と意気込んでログインしたのだが……
【召喚士ジョブ別バトルアリーナに出場するプレイヤーにお知らせ致します。規定されていた人数に達しなかった為、予選は廃止し、明日からトーナメント戦となります】
「マジかよ…………そんなに人数少ねぇのか」
本来であれば、召喚士の多用性を見せるため、予選では召喚者と共にプレイヤーを闘技場外へ落とし合う、押し出し相撲をする予定だったらしいが、まぁ結果として本戦には出れるようになったのだ。今回は本気で優勝を狙っているため、ラッキーくらいに思っておこう。
優勝を狙っているのは勿論報酬の為だ。
1位なら【種族★5天使メダル】、【召喚者専用スキルランクアップチケット】、【召喚者専用スキル獲得チケット】が手に入る。
2位なら両チケット、3位はどちらかのチケットを選択で受け取れる。
「しかし予選がないとなると、出場者の情報も手に入らないな……あっても即座に作戦を立てれる頭が俺には無いけど」
この日は他のジョブの予選や武器別のアーカイブを見ながらひたすら【ボルトとナット】を製作し、機工士スキルがLv3になった。
そして翌日、参加人数が少ないためか早朝から本戦が始まった。
召喚士は召喚者一体と共に戦い、勝敗はプレイヤーが場外に落ちるか、HPが0になるかで決まる。
俺と共に戦うのは勿論ドラだ。
「じゃ、行ってくるから応援宜しくな!」
テラとレラに声をかけ、気合い十分のドラと転送先の待機場でカウントダウンを待った。
出場する召喚者も、装備やステータスはプレイヤー同様に調整されている。ドラが装備しているのは支給された重装備に普段と変わらず初期の魔剣と盾だ。
カウントダウンが終わり闘技場に転送される。
試合開始までは光のカーテンが引かれたままで闘技場に入れないが、その僅かな時間で相手の装備や、召喚者の容姿、作戦を立てドラに伝える。
1回戦の相手はまたもやガンズタンク構成だ。だが召喚者は俺の召喚者とは全く違う、翼の生えた虎。いわゆるモンスター型だ。
「初めて他の召喚者見たけど、やっぱりモンスター型もいるんだな………ドラ、アイツの相手は任せたぞ!」
コクリ
俺たちの作戦は単純明快だ。
ドラが召喚者を引きつけてくれている間に、俺が一気にプレイヤーを仕留める。とにかく短期決戦狙いだ。
光のカーテンが消え、試合が開始される。
脇目も振らず特殊アクションを使い、相手プレイヤーとの距離を詰める。
視界の端でドラが発動した【暗黒の腕】が見え、召喚者をプレイヤーから引き離してくれる。
俺はそのまま盾を構えるプレイヤーに正面から武器を振り下ろす。途中で攻撃をキャンセルし、そのまま相手の構える盾の死角に飛び、【魔装】からの【ダブルホイール】をぶちかました。
吹っ飛び、体勢を立て直すプレイヤーをそのまま追いかけ追撃の一撃を見せる。
パリィを狙ったのが見え、逆にパリィしカウンター、一気に【連続斬り】まで繋げフィニッシュだ。
同日行われた2回戦も同様の方法で勝ち、準決勝までコマを進める。
そして準決勝。
相手の召喚者はなんとドラゴンだ。
そこまで大きくはないが、それでも自動車のミニバンくらいの大きさはある。
「ドラ、今日も頼むぜ!」
持っている武器同士を軽く打ち鳴らし、共に気合いを入れる。
俺は試合開始と同時に飛び出し、ドラも【暗黒の腕】を発動させる。
それと同じく相手プレイヤーが召喚者のドラゴンに魔法をかけているのが見えた。
(後方支援型か……なら一気に決めないと)
相手のプレイヤーは強力な召喚者を前衛に、自らはそれを支援するスタイルのようだ。
強化されまくったドラゴンなど手に負えなくなるので、より一層早期決着を試みる。
最初は上手く距離を取られ、相手の武器である銃にチクチクと削られたが、強引に距離を詰める。
そこからは意地でもプレイヤーに張り付き武器を振るっていく。
かなり優勢で進んでいた試合だったが、途中で「おぉ!」という大きな歓声が響き、それに焦った俺はアーツを全て出し切ってゴリ押し、勝利となった。
すぐさま振り返ると、ドラゴンの口にくわえられているドラが視界に入ったが、すぐに転送され消えていく。
「ふぅ…………危なかったな」
さすがにドラも厳しかったようで、最初は上手く捌けていたようだが、バフを受けたドラゴンに次第に押されたようだ。
しかし無事に決勝進出だ。
「絶対優勝するぞ!」
ホームに転送された後、テラとレラからの賞賛を受ける。
決勝までは少し時間があるようで、これまでの戦いを反省する。
というのも、1回戦が始まるまでは、結構楽に優勝出来るのではないかと思っていた。
ただでさえ今現在、召喚士人口は少なく、予選が無くなるほど出場者も少ない。
武器別バトルアリーナを優勝し、1対1なら負けない。などという慢心も少なからずあった。
だから楽勝だろうと思っていたのだが逆だった。
人数が少ないからこそ出場者全員が精鋭だったわけだ。
先程の準決勝など、ドラがやられていたら確実に負けていたし、1、2回戦もドラのおかげで勝てたようなものだ。
かといって、今更戦法を変えられるほど器用でもないためこのままの戦法でいくのだが、イベントが終わったら決勝の結果など関係なくドラを労ってやろうと固く誓う。
「ドラ、負担を掛けちゃうけど、最後もよろしくな」
コクコク!
力強く頷き、両腕で力こぶをつくるドラが非常に頼もしい。
決勝戦、相手の装備は片手剣に盾、そして召喚者は自動車のミニバンくらいの大きさ、サイのような体躯に、後頭部から首の上まで伸びたエラ、頭部には逆三角の位置に大きな角。
「あれ、どう見てもトリケラトプスだよな……カッコイイ」
思わず見とれてしまうが、気を引きしめる。
「ドラ、相手の召喚者の突進には注意だ。力比べは避けろよ」
コクコク
試合が始まり、相手の様子を見るべきかとも思ったが、俺に出来るのは攻める事だけだ。
相手プレイヤーに突っ込んでいく。
これまでと同様に、ドラが相手の召喚者を釣ってくれたが、相手プレイヤーの剣が光り、その光がトリケラを包む。
(オールラウンダーかよ……こりゃ不味い)
相手プレイヤーの使用する武器は片手剣とよく似ているが、筋力ではなく魔力が攻撃力に影響する武器、魔法剣だ。
魔法剣の斬撃は物理属性ではなく魔法属性になり、魔法使い達の中でも接近戦を好む者達から愛用される武器種だ。
相手プレイヤーの厄介な所は、やはり魔法とバフだ。加えて魔法属性の剣撃と盾による防御の硬さも厄介さを際立たせる。
ドラと一緒にトリケラと戦っても、魔法で纏めてやられてしまう。
トリケラを完全に強化されるまでに相手に張り付き、これ以上の強化を防がないといけない。
兎に角距離を詰め【フルバースト】を放つ。
しっかり盾で防がれ、その間にトリケラへバフをかけようとしている。
それを武器を振り中断させるが、行動を読まれ、パリィからのカウンター、さらにスタン効果も受けてしまった。
(や、やべぇー)
俺がスタンしている間にトリケラにバフが掛けられ、さらに強化される。
ドラの様子を見る余裕もないが、上手くやってくれると信じるしかない。
(冷静に、確実に…………)
ここで俺が取り乱せば相手の思うツボだ。
思考を切り替え、これ以上のバフは絶対に阻止する。
スタンが解け、空中に飛び爆撃を浴びせる。
ガードされてしまうが、盾で視界を塞いだところで強襲の一撃から【連続斬り】に繋げる。
追撃の構えを見せるが、相手もそれに反応。
すぐに攻撃をキャンセルするが、相手もキャンセルし、膠着状態となった。
(マジで強いなこの人……)
攻め、守り、両方ともかなり高い次元のPSを持っている。
先に相手プレイヤーが動き、飛ぶ斬撃のアーツを放ってくる。
俺はそれを避けずに真っ直ぐ突っ込み、当たる瞬間にジャストガード。
アーツを無効化し【魔装】、【ダブルホイール】を叩き込む。
とにかく何もさせまいと、先手、先手を打つつもりで、強引に張り付き追撃の一撃を振るう。
それに合わせ相手がパリィの構えを見せた。
が、構わず武器を振り抜く。
キャンセルするだろうという相手の考えの裏を読み、相手がパリィを中断したことで俺の攻撃はそのままカウンターとなり、大きく相手のHPを削った。
さらに特殊アクションで真っ直ぐ突っ込み距離を詰め、相手の直前で直角に曲がり、死角に入る。
さらに一撃入り、距離をとろうとする相手をさらに追いかける。
そして突っ込んでくる俺に向け、武器を振る相手の攻撃をパリィし、【連続斬り】、【ダブルホイール】を叩き込んだ。
倒れる相手から一瞬目を外し、ドラの方を見るがトリケラの突進を丁度【シールドバッシュ】で止めているところだった。
ビーーーーっと音がなり、試合終了を告げる。
すぐにドラと同時に駆け寄り、抱き合う様子が勝利を祝う文字と共に巨大なモニターに映し出された後、転送されホームに戻ってきた。
「くぅーーー!!!!やったぞドラ!!良く頑張ったなぁ」
『テンキュー!!』
かなりギリギリの戦いだったが、ジョブ別バトルアリーナでも優勝する事が出来た。
「はは…………よしっ!今日はパァっとお祝いだぁ!」
読んで頂きありがとうございます。




