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19話 ライドモンスター

 炎上騒ぎが落ち着き、俺が冒険を再開したあたりから、モンスターに乗って移動しているプレイヤーをチラホラ見かけるようになった。

 これが【ライドモンスター】だ。



 ライドモンスターに騎乗すると、広大なフィールドを高速で移動出来るようになる。

 そしてライドモンスターにもそれぞれ特徴があり、移動速度に特化していたり、高いジャンプ力で1部の地形を無視したり、水上、水中を高速移動したり、さらには空を飛べる種類もいる。



 しかし同時にデメリットとリスクも抱えている。

 ライドモンスターに騎乗している状態だとアーツが使用できず、武器による通常攻撃のみが可能で、その威力は著しく低下する。



 さらにライドモンスターに騎乗している状態は敵から発見されやすく、狙われやすい。

 そして空はそれがより顕著に現れる。



 空を徘徊する敵モンスターはレベルも高く設定されており、群れで襲いかかってくる。

 思ったようにダメージを出せない状態での戦闘を強いられ、空には敵をやり過ごす遮蔽物もない。そのため空の移動はかなり危険度が高いのだ。



 そんなライドモンスターを手に入れられるのが今回のクエストだ。



『ライドモンスターを飼育している牧場主からの依頼で、ライドモンスターを狙うモンスターを討伐して欲しいとのことです』



 場所は始まりの荒地にある牧場らしいのだが、レベル上げの際結構歩き回ったが、牧場なんてなかったはずだ。



 聞くと、ライドモンスターの成長と共に飼育が進み、貸し出し出来るように準備していた段階だったが、大きくなったライドモンスターを隠せなくなった。という設定らしい。



「隠せないとは?」


『はい。牧場には認識を阻害する強力な魔法結界が張られているのですが、魔法の内側にいるライドモンスターが成長したことで効果が薄くなっているのだと…………これを持って急いで向かってあげてください』



 そう言って手渡されたのは結界石と呼ばれるイベントアイテムで、これを持っていることでライドモンスターがいる牧場に入ることが出来るようだ。



「よっしゃ!サクッと倒してきますか!」



 荒地に向かう前に俺の防具をブレイカー装備1式に変更しておく。胴装備は重複して手に入れているため、ドラから奪う必要もなくなった。



 マップに印された荒地の東側に行くと、結界石が光ったと同時に広大な牧場が姿を現したが、ライドモンスターの姿はない。



 牧場内に入り建物に向かうと、NPCが出迎えてくれた。



『ニイちゃんが依頼を受けてくれた冒険者かい?』


「あぁ、詳しく説明を頼む」



 この牧場を囲む結界は防壁の機能も持っているようで、討伐対象の侵入を許してはいないが、すでに視認され認識阻害が通じず、結界を破ろうと攻撃をされている状態らしい。



 ライドモンスター達はそんな討伐対象を恐れ、身を隠しているそうだ。



 そんな話をしていると、ズズーンと轟音が響き渡り、牧場を囲っている結界がユラユラと波打つ。



『クソっ!!また来やがった。ニイちゃん、頼む……アイツをやっつけてくれ!』


「任せろ!」



 牧場入口の方に引き返すと、結界に拳を打ち付け、破壊しようとしている大型のモンスターが見えた。



 ゴリラに似ており人型に近いが、首から上がなく、胴に顔と裂けた大きな口が付いている。さらに腕が異様に太く長い。



 牧場から出てボスと対峙した瞬間、周囲に光のカーテンが引かれる。



「ストックイーターLv20……嫌な名前だな」



 レベルは同じだが、名前には不気味さがあるため慎重に戦う事にした。



 …………



 ………



 ……



 くそ弱かった!



 攻撃も、長い腕を力任せに振り回し、たまに掴もうとしてくるだけで、ジャストガードも簡単だし、パリィも有効。



 捕まれば大きな口に放り込まれたかもしれないが、掴みは全てドラが【シールドバッシュ】でキャンセルしてくれた。

 そして危なげなく討伐が完了する。



『やるじゃねぇかニイちゃん!!さすが異界の冒険者だぜ』


「どういたしまして」



 その後、NPCに先導され建物の方に移動すると、今まで姿を見せなかったライドモンスター達がゾロゾロと出てくる。



『へへ、可愛いだろ?自慢のヤツらなんだぜ?』


「おおぅ…………やべー、可愛い」



 ライドモンスター達は体も大きいが、召喚者達とはまた違った可愛さがある。



『助けて貰った礼だ!特別にライドモンスターの卵を安く譲ってやるよ。おっと、安心しろ!卵と言っても____』



 譲って貰える卵は、すぐに孵化させることが出来るようで、ライドモンスターを1から育てる必要はないそうだ。



 このNPCは育てているというより、貸し出す為の調教に牧場を営んでいるようだ。



 そして卵は初回のみ特別価格で10万G。

 貸し出しも特別にしてくれるようで、借りるだけなら1万Gだ。

 以降は卵を100万Gで買えるようになる。



 ライドモンスターは一体しか所持出来ない。

 そして貸し出しのライドモンスターは1度騎乗を解除すると自動的に牧場に帰るように調教されている。



 卵を買って自分がライドモンスターの親になると、フィールドならいつでもどこでも呼び出せるようになるが、ライドモンスターにも様々な種類が存在する。



 そのためお金に余裕があれば、その時所持しているライドモンスターとは別れることになるが、新しくライドモンスターを手に入れることが出来る。



「なるほど……つまりガチャだな」



 金を払えば能力、容姿など気にいったライドモンスターに出会え、卵がまだ買えない場合は貸し出しで移動が楽になる。



 実際にライドモンスターを見て心が揺らいだが、俺は卵は買わない。今回はせっかくだし貸し出しでライドを体験してみようと思う。



『そうかい……だが、またいつでも来てくれ!』



 1万Gを払い、馬型のライドモンスターを借りて早速跨ってみる。

 すると召喚者達が一斉に光に変わり、俺の中に吸い込まれた。



「おぉビックリした…………みんな死んじゃったかと思った」



 どうやらライドを使っている間、召喚者達は俺の中に収容されるようだ。

 そのため、ライドモンスターに大勢で乗ったり、ライドに乗れず走って追いかけてくる召喚者達を待ったりする必要もない。



「よしよし!じゃ、しゅっぱーつ!」



 乗馬経験など全くないが、手網をホントに軽く引くだけで行きたい方向に行ってくれて、加速、減速、旋回してくれる。



「こりゃ楽だぁ」



 マジで歩いて移動するのが馬鹿らしくなってくるぐらい速く移動出来る。



 このまま少し気になった場所へ向かう事にした。



 始まりの荒地の北側なのだが、崖とその下を流れる川で向こう岸とは分断された地形となっているのだが、1箇所だけ大きく立派な橋が掛かっており、武装したNPCが立っている場所がある。



 ここに以前来た時、『この先には比べもんにならねぇくらい強い敵がいる』と、橋に足を踏み入れることも許されず追い返された。ならばと思って武器の特殊アクションを使って飛び越えようとしたのだが、いつの間にか橋の前にいたNPCが移動してきて俺の肩を掴み、『若造に出し抜かれるほど老いちゃいねぇ』と凄まれた。



 NPCが完全に見えなくなった場所でもそれは変わらず、何度も試していると賞金首リスト入りを匂わされ、引き下がった経験がある。



 ここにライドモンスターと共に訪れた。



『お?ライドモンスター持ちか!この先は敵が強い。戦おうなんて思わず、一気に走り抜けるんだぞ!』


 と、アドバイスも貰い、橋を渡らせて貰えるようになった。



「やっぱりここはライドモンスター必須か……」



 それを確認し終わって橋を引き返し、ライドモンスターに乗って街に帰ってきた。



 ライドから降りると、ライドモンスターは風のように去っていく。

 そして召喚者達も俺の体の中から飛び出してきた。



「ふぅ……報告行くか!」



 冒険者ギルドに依頼完了の報告をすると、出発前に貰った結界石を返却した代わりに、【召喚石】というアイテムを貰った。



【召喚石】という名称だが、ジョブの召喚士とは全く関係なく、【召喚石】は登録したライドをいつでも呼び出し、送り返す事が出来る便利アイテムだ。



「さて、次は召喚士ギルドに行かないとな」

読んで頂きありがとうございます。

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