18話 テンキュー
冒険者ギルドを出て召喚士ギルドにも出向いたが、受けられるクエストが増えただけで、他にこれといった変化はなかった。
レベル上げには朝になってから行く予定だ。そしてもう少しで朝になるため、ドラの装備を【ブロンズキュイラス】から【ブレイカージャケット】に付け替える。
すると【ブレイカージャケット 】は【ブレイカースーツ】と名称を変え、全身鎧姿だったドラはカジュアルな服装の男の子に変わった。
「おぉ!なかなか似合ってるな。カッコイイぞ」
ドラは俺の言葉に気を良くしたのか、飯屋に向かう俺の前をズンズン歩き、表情も嬉しそうだ。
ちなみにテラは相変わらず俺が肩車し、レラは蛇の下半身を俺の腰に巻き付け、俺の肩越しに前を向いている。
いつもはこの状態に加え、ドラと手を繋いで街を歩いている。
朝になり、今回から狩場を変え、始まりの街の北にある荒地、【始まりの荒地】にやって来た。
ここは乾いた地面が広がり、所々大きな岩が点在している。
主なモンスターは、レッドが名前についた大トカゲ、サソリ、ダチョウのような飛べないタイプの鳥、ミミズに良く似たワーム、オオサンショウウオ、フェネック、レベルは17~21とこの辺では1番高い。
トカゲ、サソリ、鳥は問題なかったが、ワームはキモイので見たらすぐに逃げた。
オオサンショウウオはレベルが20越えばかりでまだ戦っていない。
そして1番厄介なのがフェネックだ。
見た目が超可愛いく、見とれている隙に鬼の形相で噛み付いてくる。
反撃しようとすると、クッッソ可愛い顔で見つめてきて攻撃を戸惑ってしまった。
しかしそんな俺に構わず、ニッコニコなドラが容赦なく斬りつけているのを見ると、そこからは俺も心を鬼にして切り刻んでやった。
経験値を稼ぐには1番良いのだが、流石にどの敵も簡単には倒せず、アイテムを惜しまず使って狩りを続ける。
1時間毎にきっちりボス亀を倒した訳では無いが、数時間おきにボス亀にも通った。
この時、1つ変わった出来事があった。
亀の討伐を終え、荒地に向かうべく森を通っていると、ユニークモンスターのズンドコに出会った。
もう何度目かの遭遇か忘れたが、いつものようにきっちりとライブを堪能し終わった後、いつもはライブチケットの半券が貰えるのだが、この時は違った。
『全く……何度も何度も来やがって……そんな熱心なファンにはちょっとくらいサービスしないとな!』
「喋るのかよっ!!!」
なんとズンドコが話しかけてきたのだが、その後、特に会話はなく、半券とは別のアイテムを手渡してズンドコは消えていった。
「マジっ!?メダル??…………★8悪魔!!!!」
流石にこの1度きりだとは思うが、思いがけない方法でメダルが手に入った。
その後はレベル上げの日々が約2日ほど続き、ブレイカー装備の頭、胴、腕、脚が揃い、さらに【★3警護】のメダルもボス亀の宝箱から手に入れた。
そしてこの日の昼前、経験値イベント開始5日目にして俺とテラが遂にLv20になった。
ここで情報が一気に飛び込んでくる。
【召喚士ジョブのレベルが上がり、経験値分配機能が解放されました】
【召喚者テラの経験値が取得限界に達しました】
【ジョブ【召喚士】が進化し、ジョブ【天球士】へと変化しました】
【実績:初めての進化を達成しました】
獲得・選択:【プレイヤー専用戦闘スキル獲得チケット】、【★8種族メダル】、【★8効果メダル】
「…………また一気に情報がきたなぁ」
まず経験値分配機能だが、簡単に説明すると、分配する経験値比率を自由に変えれる機能だ。
俺がLv20になったことで、装備とイベントの経験値増加の恩恵は受けられなくなり、取得経験値が一気に下がる事になる。
その経験値をさらに4等分すると、1人頭の貰える経験値はさらに少なくなるところ、経験値分配機能をイジり、俺とテラを0パーセント、レラとドラに50パーセントずつの比率にすると、俺とテラに分配される経験値をレラとドラに渡せるようになる訳だ。
「これは良いな……召喚者達はイベントの恩恵を個別に受けれないからな」
次にテラだ。
Lv20になったことで経験値を貰えなくなったらしい。これは後で召喚士ギルドに行こう。
最後に俺のジョブだ!
遂にジョブが進化したのだ。
それに伴い、実績達成の報酬を選択しなければいけない。なるほど……Lv20になれば最低でも1枚★8のメダルは確実に手に入り、課金でメダルを買わなかったプレイヤー達にも強力なメダルが手に入るわけか……そう考えると召喚は少し待った方が良かったかもしれないが、先行プレイして情報が足りない現状だと、それも後の祭りだ。
肝心のプレイヤー専用戦闘スキル獲得チケットだが、【体術】、【回避術】、【会心術】、【自動回復術】、【短縮術】の5つからランダムで1つ獲得出来るようだ。
メダルは種族、効果ともに★8がランダムで入手となる。
「マジで究極の選択だな……」
スキルの詳細までは確認出来なかったが、字面的にはどれもかなり役立ち、強そうだ。だがメダルも捨て難い……
テイマーや召喚士は他のジョブに比べ戦闘アーツが乏しい。
恐らくテイマーも大体は同じだと思うが、俺の【召喚術】では未だ戦闘系のアーツを覚えていない。
その為ここで戦闘スキルを獲得しておかなければ、今後獲得出来る機会があるか分からない。
「俺は……………決めたっ!効果メダルだ!!」
俺に足りないモノを補ってくれるのが召喚者だ!だからこそ俺はメダルを選ぶ。
【効果メダル【★8全属性魔法】を獲得しました】
またぶっ飛んだメダルが手に入ったな………まぁ、★8が最高レアなわけだし妥当か。
俺のジョブも【天球士】という、よく分からんジョブになったし、召喚者が強スキルを持ってた方が安心出来る。
「しかし天球ってたしか、地球を中心にみて、その周りにある惑星なんかを見る為の球体図じゃなかったか?」
そうなると、地球を召喚士に当てはめ、周りの惑星を召喚者に見立てたって感じか?
だとすると運営のセンスが光るな……
俺は惑星とか星とか結構好きだから、なんかちょっと嬉しくなってテンションが上がってしまう。
実はテラの名前も、惑星や星という意味の【ステラ】からとっている。
「運営、テンキューなんつってな……やかましいわ!!」
…………俺を見る召喚者達の純粋無垢な瞳が痛い……この言葉は封印しよう。二度と使うまい。
「さて、1度街に帰ろうか」
『『『テンキュー!!!!』』』
「……………えっ!?」
▽▽▽
街に戻り、お昼ご飯を食べた。そしてテラの鼻と口周りを拭いてやる。
『テンキュー!!』
「…………何故……こうなった」
召喚者達が喋ったのはとても嬉しいし可愛いのだが、何故か全て『テンキュー!!』だ。
否定も肯定も、全て。
色々と確認しないといけないことはあるはずなのだが、このテンキュー!!のお陰で頭から色々吹っ飛んでしまった。
飯屋を出て、そのまま冒険者ギルドへと向かう。そして扉を開いた瞬間思い出した。
「あ、召喚士ギルドに行く予定だったのに……ま、いっか!どのみち冒険者ギルドにも来る予定だったし」
『あぁっ!?ゼル様、丁度良いところに……』
冒険者ギルドの受付をしているNPCが俺を見るなり駆け寄って来る。
『実は緊急クエストが発生しました』
恐らくLv20に到達したプレイヤーの数だけ緊急クエストが発生している……
それはさておき、緊急クエストの内容だが、俺が待ち望んでいたクエストだ。
読んで頂きありがとうございます。