9話 召喚士との出会い
ログインし、テラと挨拶を交わした後、日課のホーム内採取を行う。
「よっしゃ、早速家作るか!テラ、建材をじゃんじゃん作ってくれ」
両拳を空に突き上げ、気合い十分のテラと共に拠点を組み立てていく。
そこまで大きくはないため、素材はすでに集め終わっており、あとは素材をテラが建材に加工し、それを俺が組み立てていくだけだ。
どんどんと組み上げ、あとは屋根を設置すると完了なのだが、ここで俺のエクストラスキル【飛天】が大活躍する。
建材アイテムを設置する時、設置する場所から離れすぎているとアイテムが置けない。そのため屋根などは本来足場などを作って設置しないといけないのだが、飛天にはジャンプ回数が+1される効果もある。それを使うと屋根の設置も楽々だった。
「これで…………完成だぁ!!!」
テラとわちゃわちゃ完成を喜んだ後、早速中に入ってみる。元々木の傍に置いてあったベットはすでに中に運び入れてある。
間取りなどなく、ベッドがあるだけの小さな家だがとても満足だ。
充実感に浸っているとテラが何かを作り始めた。出来上がったのは、木製のテーブルと椅子がセットになった家具アイテムだ。
「家具まで作れるのか!テラは凄いな!ヨシヨシ」
完全にテラにデレデレな俺だが、これは摂理なのだ!仕方がない。
テラはテーブルセットに加え、アイテムを別途保管しておける【収納箱】というアイテムも作ってくれた。
あまり多くは入らず、お金も入れられないが、今インベントリを圧迫する程の種類と量を持っている訳では無いため、1個で十分活用出来る。
デスペナルティーがあるこのゲームではアイテムの別途管理は必須事項だ。
「よっしゃ!ご飯食べたら森でレベル上げやろうか!」
回復系のアイテムのみ持って、森に入る。
採取ポイントを見つけるとついつい採取してしまうが、おかげで薬草を買いに街に戻る手間が省け、かなりの時間をレベル上げに費やせた。
始まりの森に出現するモンスターは、流石に全種類見つけた訳では無いが、カマキリ、イノシシ、イヌ、ミミズ、カエルなどが良く出現する。
中でもグリーンボアというイノシシは突進してくるだけで、カウンターがポンポン決まるため、非常に狩りやすい。
ちなみにグリーンボアという名前だが、緑色をしている訳では無い。
逆に1番無理なのが、ミミズだ!
キモイ!!!
Lv6になり、ホクホクで探索を続ける。
始まりの森は迷子になりそうな地形だが、マップにピンを刺していけば辿った道が分かる機能があるため、それを怠らなければ迷子になることはない。
結構奥にまできた時の事だった。
1人の女性プレイヤーがイノシシから逃げ回っているのが見えた。頭上には【ユーナ】というプレイヤーネームと共に、大きなドクロマークが浮かんでいる。
「あれ、脆弱のデバフだよな……」
恐らく1度死んで逃げ回っているのだろう。すぐに【ヘルプ】の申請を送る。
これは、いわばその場限りのパーティ申請だ。手助けが要らなければ申請を断れば良いし、申請が受理されたなら、パーティメンバーとして回復などもしてやれる。
すぐに申請が受理された為、イノシシの突進をパリィしてカウンターを食らわせる。
「へっ!?…………あっ……」
「すぐ倒すから待って!テラ、この人に回復」
恐らく【ヘルプ】に関してはデフォルト設定である、即時許可、だったのだろう。かなり戸惑っているようだ。
テラはポーションを頭上に掲げ、女性プレイヤーのもとにトテトテと駆けていく。
俺は全力でイノシシの相手をし、無事倒すことが出来た。ちなみに俺達に経験値や素材などは入らない。
「大丈夫?」
「は、はい!ありがとうございます。あの……」
「とりあえず森を出よう。まだ脆弱ついたままでしょ?」
「はい……ご迷惑おかけします」
マップのピンを辿り、平原に急いで戻ってきた。
「あの、改めてまして、ありがとうございました。召喚士のユーナです。貴方も召喚士……ですよね」
「あ、うん。プレイヤーネームは出てると思うけど、召喚士のゼルです」
しかし召喚士でユーナか…………
「もしかして私の名前の元ネタ知ってます?有名なゲームのキャラなんですけど……」
「あ、やっぱり……俺もあのゲームは好きだから」
「あはは、私の両親があのゲーム大好きで、そのまま私の名前にしちゃったそうなんです。私もそれを聞いたことがきっかけでハマっちゃいまして……」
本名を公開したのには驚きだが、流石に見た目はゲームのキャラに似せてはおらず、美人系で人間種族の初期衣装だ。
召喚者を連れていないところを見るに、恐らく2回やられて先にホームへ強制送還されているのだろう。
「あ、えっと1つ謝らないといけないことがあって……」
「ん?」
話を聞くと、ユーナはリアルでゲームや色んな動画を配信している、いわゆる動画配信者らしく、撮影用に動画をまわしていたそうだ。
勿論、生放送ではないが、許可なく録画してしまったと謝っていた。
以前から動画配信を職業としている者達は多くいたが、その中でもユーナはVR技術を使った配信者だそうだ。
2Dから3D、そしてフルダイブへと進化したVR技術をかなり上手く使った職業であり、現在ではかなり多くのVR配信者が存在している。
「いや、まぁそれぐらい全然良いよ」
「ホントすみません。ありがとうございます。あと、もし良かったら、さっきの戦闘シーン、動画に使っても良いですか?」
「まぁ変に使わないなら、良い…………かな」
そんな許可を出した後、散々お礼を言われ、ユーナは帰っていった。
この出会いがきっかけとなり、俺は運営が出てくる程の問題に巻き込まれる事になった。
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