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太陽と月  作者: Limone
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1.日常の中に

こんにちは。LimoneのRIAです。今回はリレー小説に挑戦中!

今回はあやぴーとESUの作品になります。

お楽しみいただけたら幸いです。



「モルゲン様、おはようございます」

「ああ」


日が昇る少し前、空が白み始めた頃にモルゲンは目を覚ます。そして直ぐに冷水で身を清め聖衣…キャソックを身に纏う。神へ祈りを捧げる為である。


カツ、カツ…とモルゲンが聖堂に向かう足音が無人の廊下に響く。モルゲンは聖堂に奉られた立派な石膏像へ歩み寄ると跪き祈りの言葉を唱え始めた。


「天にまします我らの父よ、願わくは御名を崇めさせ給え…」


淀みの無い透き通った声が聖堂に響く。

だがその澄んだ声とは裏腹にモルゲンの胸中では疑念が燻っていた。


(……一体何度この言葉を唱えただろう。いくら祈りを捧げようと、忠誠を誓おうと主はいつも理不尽に命を奪い去ってゆく)


モルゲンが脳裏に思い起こしたのは先週に流行り病で死んだ子供のことだ。


(俺は何も出来ないのか…)


祈りを捧げ終えたモルゲンは自嘲気味に溜息を吐いて聖堂を後にした。




モルゲンはキャソックを脱ぎ普段着であるヴィクトリアンに着替えてから食堂に顔を出した。既にモルゲン以外の全員が食卓につき、モルゲンの到着を待っていたようだ。


「今日も今日とて神へ祈りを捧げていたのか」


モルゲンの父であるスクルト侯爵が食堂へ遅れてやって来たモルゲンに声をかけた。


「父上、食事に遅れて申し訳あ…」

「よい、そなたの神への忠義の表れを誰が叱れるものか。座りなさい、朝食を始めよう」


侯爵は眉一つ動かさずに告げると食事に目を落とした。もう話すことは何も無いという風の侯爵に代わってモルゲンの弟であるナハトが声をかけてきた。


「モル、おはよう。昨夜は少し暑かったけど眠れた?」

「っ、お前に心配されるほど俺はやわじゃない」


天色の瞳に激情をちらつかせながら、モルゲンはナハトを睨みつけた。


「ごめん、気分悪くさせちゃったね」


ナハトは一瞬目を伏せたが直ぐに気を取り直して何事もなかったかのように振舞うのだった。




「はあ…」


兄弟のやり取りを見ていたソレイユは額に手を当ててため息をついた。


(モルゲン様のあれは何とかならないものか…)


あれ、とは勿論ナハトに対する邪険な態度のことだ。

姉妹で助け合わなければ生きていくことすらままならなかった過去を持つソレイユは二人の関係が良好でないことを憂えずにはいられなかった。一介の執事に過ぎないソレイユが出来ることは限られているが、それでも何か出来ないものかとソレイユは思索に耽る。


「ソレイユ!朝食が終わったら書類をモル様に届けるんじゃなかったの?」


ソレイユの思考を遮ったのはソレイユの妹、ソーレだった。

考え事に夢中になって時が過ぎるのを忘れていたようで、時計の長針が一周していた。


「嘘、もうこんな時間なの!?急いでモルゲン様のところへ行って、それから昼食の支度をして…」


慌てて書類を纏めてモルゲンの部屋に駆けていくソレイユを見送りソーレはぽつりと呟いた。


「どうしてソレイユは何でも一人でこなそうとするのかな…。私は一一一」


だんだんと小さくなるソーレの声は終いには本人の耳にすら届かないまま消えていった。




ガサガサ…何やら食べ物を探しているような音が聞こえる。

今の時間はーー午前5時30分。ソーレが起きて何かする時間には早すぎる、おそらく、あいつだ。ソレイユは、執事の仕事で疲れがとれない体を起こし自室を出て、音がするキッチンへと階段を降りていく。覗き込むとやはりゾネだ。


「はぁ…」


三姉妹の末っ子は最近食べ盛りらしい。朝からキッチンのありとあらゆる棚をあさって、食べ物を探しているようだ。呆れかえり、ゾネが気づくようにあえて大きな足音をたてた。


「わぁ!!」


ゾネが尻もちをつく。


「何してるの?朝食はまだだよ」


苦笑を浮かべながら話しかける。棚は開けっ放し、食べこぼしが落ちていて後で掃除するのが面倒だな、と思ったソレイユは顔が更にひきつる。


「違う!違うの!えっと…学校でご飯を持ってきてない子がいてさぁその子のために私が家にある食材で何か作ってあげようかなぁって」


…だいぶ無理のある嘘だ。ソレイユは瞳に氷の魔法をまとったかのような目でゾネを見てしまった。


「げっ…すいません…」


ゾネが眼をそらしながらソレイユに謝る。

ドドドドド!!!!!

階段から誰かが落ちるような音がする。


「今度はなんだ?!」


ソーレが腰を抱えながらキッチンへと入ってきた。


「えー?二人とも居たの?じゃあ、あの大きい足音みたいなのは何なの?」


…空気を読んでほしい。察してほしい。と、思いつつもソーレに何があったのか一通り説明した。


「えー?ただそれだけぇ?」

「そうさ、それだけ。君が起きてくる必要は無かったんだよ」


ソレイユが平然と言う。

ソーレはこの言葉に引っ掛かる様なものを感じた。このたった一言に。


「ねぇねぇこんなことしてたらもういつもの時間だよ」


ゾネが時計を指差す。時計は午前6時を丁度指していた。


「こんな事で時間をとっていたのか?!まずい!早く支度しないと」


いつものこの時間ではソレイユが一人でゾネの学校へ行くお弁当を準備し、朝食も準備し、スクルト家への出勤の準備を済ませている時間だった。



そんなとある朝の事を思い浮かべていた。モルゲンの書類を片付けながらため息を付きそうなぐらいに毎日が忙殺されている。そんな中、妹と達の呆れる行動には大変だが、愛くるしくも感じていたのだ。それがソレイユにとっての幸せでもあった。


書類が一通り片付いた所で、今度はモルゲンのためにお茶を蒸らした。その後もう一度食堂へと戻っていった。




ご覧いただきありがとうございました。良ければ、感想やアドバイス等、お願いいたします!

まだまだ不勉強な私たちですが、これからも精進していきます。

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