~第二の錦織圭たちに贈る言葉(15)~『(過度の)自信は油断を招く』
〜第二の錦織圭たちに贈る言葉(15)〜
『(過度の)自信は油断を招く』
1. まえがき;
2018年6月の全仏オープン4回戦で錦織選手はティエム選手に2−6、0−6、7−5、4−6で敗れた。敗戦の原因は何であったか。
それは、3回戦でフランスのシモン選手にセットカウント3−0で勝利した後のメディアに対するインタビューで錦織選手が述べた二つの言葉の中にあったと私は考える。そこに現れた自信が錦織選手に油断を招いた。
それは、
A『100%の力が出せれば他の選手に負ける気がしない。』
B『取り合えず、次の対戦相手がナダル選手ではなくてティエム選手でよかった。』と云う言葉であった。
このふたつの言葉を聞いた時、次の試合は危ないかも知れないと私は思った。
もと基、ティエム選手に強いジョコビッチ選手とプレースタイルが似ている錦織選手に勝つチャンスはあると私は思っていたがこの二つの言葉を聞いて危険を感じた。
この言葉からは錦織選手の調子に良さが窺えるが、そこにはA油断とB対戦相手に対する思いこみが芽生えている。
更にBの言葉からは対戦相手に対する「侮り」も見える。ティエム選手には過去2戦2勝している経験が悪く作用していたのだろう。
しかし、この1年間でティエム選手のサーブとフォアハンドストロークの打球速度と回転数は更に向上している。また、トップテンプレーヤーと対戦して精神力も強化されていた。錦織選手が試合前に想定していた以上のボールが飛んで来ていたと思われる。油断した為、錦織選手の試合前のティエム選手に対する分析に甘さが出たと思われる。
それが第一セット、第二セットでティエム選手のサーブ、ストロークに対応できずに簡単にセットを取られた事が証明している。錦織選手は「対処の仕方が見当たらなかった。」と試合後に述べている。
ただ、第二セットをラブゲームで落としたのは、対戦相手と自分のプレーをあらためて観察し直していた為であろうと思われる。第二セットの第一サーブの成功率が40%に落ちている事がそれを推測させます。(第一セット60%、第3セット74%、第4セット70%でした。) 錦織選手は試合をしながら考えているのです。(インプレー中に『考える』ことが技術にどのように影響するかは次回の贈る言葉(16)で述べる予定です。)
錦織選手の試合運びは、試合前半には相手選手の分析に能力を使い、試合の後半にその分析を生かして対戦相手の弱点を攻撃するパターンが多い。試合中に考えるのが錦織選手の特長である。
トイレ休憩で気持ちを切り替えた錦織選手は立ち直り、第三セットと第四セットは互角の試合展開であった。試合の急所でポイントを取った方が相手のサーブゲーム破り、セットを取った。第三セットは錦織選手。第四セットはティエム選手でした。第五セットは無かった。結局、油断からの事前分析不足で第一セット、第二セットを簡単に落としたのが敗因となった。
2. 贈る言葉;
試合前には対戦相手の現在の心・体・技を詳細に分析し、戦略・戦術を決めるように贈る言葉(9)で述べた。常に、対戦相手と自分は互格である考えて、油断しないで、自分の特徴を生かし、相手の弱点を攻めることを考えることである。対戦相手が上位ランキング、下位ランキングに関わりなく詳細に分析し対策を練ることが重要です。
『彼を知り己れを知らば、百戦して危うからず。彼を知らずして己を知らば、一たびは勝ち一たびは負く。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず敗る。』(孫子の兵法・謀攻第三)である。
(戦争では、負けると判っていれば『逃げるのが一番』(36計逃げるに如かず)であるが、スポーツは競争で戦争ではないので逃げずに自分を試せる。年齢が35歳を超えたフェデラー選手は赤土の大会は避けている。理由は身体が疲れて勝てないからだそうです。)
3. あとがき;
試合後の二人の言葉がある。
ティエム選手「第一セット、第二セットは錦織選手に呼吸をさせなかった。(自分は呼吸していた。)第3.4セットは呼吸をさせてしまった。」
錦織選手「第1,第2セットは(体が重く)足が動かなかった。理由は判らない。」
この二人の言葉から、第一セット、第二セットはお互いにプレッシャーが掛っていたことが窺える。
贈る言葉(4)『プレッシャーには呼吸法で対応せよ』を読んで頂きたい。
二人の選手が発する戦いの『気』の波動が干渉してコート上に気の『うなり』が発生し、選手に重圧を掛けるのである。
トッププロ選手の試合でもアマチヤ選手の試合でもこのプレッシャーは発生します。
ティエム選手はプレッシャーから逃れる方法を感覚的(あるいは知識として?)に知っていたようです。
第4セット、錦織選手のストロークに押されているティエム選手がストローク返球した直後に長く息を吐く声がコート上に響いていました。これは自分に掛っているプレッシャーを弱める『逃れの呼吸法』です。これで錦織選手から来るプレッシャーに耐えたのでしょうか?
ある意味で、呼吸法を利用できたか如何かが勝敗を分けたとも云える試合でした。
『諸君の健闘を祈る』
目賀見勝利より第二の錦織圭たちへ
2018年6月9日
参考文献;
孫子の兵法 安藤 亮著 日本文芸社 昭和55年8月 発行




