現代モノの小説で、車通勤のヒロインがあまりいないことについて考えてみた
タイトル通りです
つれづれなるままに
こんにちは。今日はタイトルにあるように、「現代モノの小説に出てくるヒロインは、車通勤者があまりいない」ということについて考えてみました。暇人です、はい。
現代を舞台にした恋愛小説。
女性向けの主人公の多くは、働く女性なのではないかと思います。専業主婦や大学生、就活生が主人公になっているものもありますが、ここでは「就職して働きに出ている女性」のみにしぼります。
働く女性といっても、職種は様々ですね。事務職、製造業、接客業、教育、福祉、役所。私はふと、「彼女たちは通勤に何を利用しているのだろう」と思いました。
物語として一番多いのは、やはり電車でしょうか。バスや地下鉄というのも見られますね。
さて、公共交通機関を利用して通勤するヒロインが多い中、車通勤のヒロインは少ないと感じています。というか、今まで私が読んできた本(とても少ない)の中で、自家用車を運転して通勤するヒロインがいただろうか……というレベルです。
私自身が車通勤者なのでいっそう思うのかもしれませんね。都会と地方では事情が全く違うでしょうが、統計すると車通勤する女性は少ない方なのではないかと予想しています。
そういうことで、「どうして車通勤ヒロインがあまり見られないのか」ということについて考えました。今回はあくまでも小説内での設定を想定しているので、「職場と自宅の距離」や「月に掛かる費用」などの問題は不問とします。
①通勤時の出逢いがない
まずはこれかな、と思います。
公共交通機関を利用していれば、「毎日同じ時間に見かけるあの人」という展開ができますね。学園モノでも、「今日はあこがれのあの人の隣に座れちゃった!」と嬉しいハプニングも起きたりするわけです。
一方車通勤だと、こういった出来事はまあないでしょうね……。同じ時間に見かける人なんてそうそういませんし、よそ見運転になります。事故ります。よそ見運転ダメ絶対。
車で通勤すると、職場に到着するまで基本的にひとりぼっちです。寄り道などをしなければ誰かと話すこともない。つまり出逢いがないんですね。
②「終電なくなっちゃった……」ができない
小説でよく見かるやり取りですね。
女「終電なくなっちゃった……」
パターン1
男「じゃあ、うちにおいでよ」
女「えっ……いいの?」
パターン2
男「送っていくよ、乗って(高級車召喚)」
女「えっ……いいの?」
女性が電車通勤などだったら、「夜遅くなって帰宅手段がなくなる」という流れに持って行きやすいです。この発言の後にヒーローがどう動くかは場合によって違いますが、おいしい展開ですね。
では、もしヒロインが車通勤者――さらに、ヒーローの方が電車通勤者だったら?
男「終電なくなっちゃった……」
パターン1
女「私は車だから大丈夫だよ^^ じゃあまた明日ね!」
男「」
パターン2
女「じゃあ家まで送ってあげるよ^^」
男「」
こうなるんじゃないでしょうか。ヒーローの立つ瀬ナシ。
格好いい王道展開を繰り広げるためなら、ヒーローの方が運転する人間であるのがいいのかもしれませんね。
③「酔っぱらっちゃった……」ができない
仕事の後に、おしゃれなレストランへ。お酒の種類には詳しくないけれど、ヒーローが勧めてくれるカクテルはとってもおいしかった。
男「おまえ、酔っているだろう」
女「酔ってない!」
男「酔っぱらいはそう言うんだよ」
女「酔ってない! 私は平気……あっ」
男「ほら、そんなにフラフラしてから……」
↓
お持ち帰り
好きな女の子が酔っぱらって、介抱がてら持ち帰るというのですね。この後はたいていタクシーに乗りますね。女の子の方は、酔っているのでいったいどこに向かっているのか分からないという。
では、ヒロインがレストランまで車で来ていたら?
男「何か飲む?」
女「ノンアルコールで^^」
飲酒運転ダメ絶対。
そして生まれないロマンス。
④突然の「今夜は一緒に……」ができない
②からも繋がっていますが、食事に行った後盛り上がり、「今日は家に帰さない……」というのがありますね。
女「今日は楽しかったよ! それじゃあ、また明日――」
男「帰すと思ってんの?」
女「えっ?」
男「うちに来なよ」
女「!」
↓
朝まで一緒にいるパターン
予定にないお泊まりや夜更かしも、普段電車などで移動しているヒロインの場合は柔軟に対応できますね。むしろ②の流れで、帰る手段がなくなったから彼の家にお泊まりということもできるわけです。
さて、ここでもまたヒロインが車でやってきていた場合、どうなるかというと。
女「今日は楽しかったよ! それじゃあ、また明日――」
男「帰すと思ってんの?」
女「えっ?」
男「うちに来なよ」
女「えっ、無理! 駐車料金がやばいことになる!」
男「」
現実的なヒロインです。
コインパーキングって、場所によっては一日の上限料金が設定されているものもあります。でも全てがそう設定されているわけでもなく、さらには駅前だと地方都市でも15分200円とかざらにありますからね。仮に、上限料金がないコインパーキングに午後6時から翌日の8時まで停めたとします。
その料金は――はい、一万円を超えます。
⑤移動が自由なようで制限がきつい
②と④を総括するとこういうことになるんじゃないでしょうか。
車は自分で運転するので、時には寄り道したり近道したり工事中の道を避けたりできます。
でも一度どこかに停めると、そこが「拠点」になってしまうんですね。
たとえばちょっと気になっている彼に食事に誘われたとき。車で行ってコインパーキングに停めると、彼女にとっての「仮の帰る場所」がそのコインパーキングになってしまいます。
電車通勤だと、「仮の帰る場所」が存在しないので、食事の後に夜景を見に行く、カフェに行く、彼の家に行く――という活用ができます。たとえ自宅から遠く離れた場所に移動しても、何らかの手段で家まで帰ることができればオッケーですからね。
一方車をどこかに停めてしまうと、「まずはそこに戻らなければならない」ということになります。④でも述べたように、コインパーキングは時間が経つにつれて料金が増えていきます。
遠くに行けば行くほど、車を置いている「仮の帰る場所」が遠くなる。極端な話、A地点「自宅」を出発してB地点「コインパーキング」に停めて、食事の後にC地点「どこかの場所」に移動する。その時C地点から見て、B地点よりもA地点の方が近い場合。いくら自宅に直帰できても、B地点に車を置いているので戻らなければならない。
そうなると、どうしてもB地点から離れることにためらってしまいます。
移動に便利で融通の利く車ですが、自由と不自由は表裏一体のようです。
⑥そもそも車通勤ヒロインというのがピンと来ない&共感の度合い
いろいろ挙げてきましたが、結局はこれでしょうね。
私の地域では、社会人になると車を持っているのが当たり前です。街中でない限り、マンションにもアパートにも最低1台は車を停められるようになっています。一戸建てだと、3台くらい並べている家もありますね。
また私の職種の都合上、自家用車がないと非常に不便な環境にあります。社用車ってのがないんですよね。車がないとどこにも行けない。職場にも広い駐車場(ちなみに無料)があるからこそできるのです。
でも、都会のオフィスに勤務されている方からしたら「職場に広い駐車場がある」「車通勤が当たり前」というのがピンと来ないのかもしれません。地方都市住まいの私の予想なので、違ったらごめんなさい。
さらに、物語の舞台が地方都市より都心になりやすいというのも理由の一つでしょうね。圧倒的東京舞台。日本の人口が都会に集中していることを考えれば、都会で暮らすヒロインの方が読者の共感を得やすい……ということでしょう。
①から⑥の他にもいくつか要因は考えられるでしょうが、このように私は「車通勤ヒロインは、恋愛の王道に話を持って行きにくい」ということを考えてみました。
金だの距離だの非常に現実的な話をしたからかもしれませんが、公共交通機関出勤ヒロインならあり得る展開が、車通勤ヒロインだと不可能になってしまうのだといえるでしょう。
とはいえ、王道から外れているからこそ出てくる「うまみ」もあると思います。
たとえば、②の続編。終電がなくなったヒーローを男前にヒロインが送ってあげる。
彼女の車に乗ってみると、可愛いクッションやブランケットが置いている。車内はほんのりいい香りで、掛かっている音楽にはちょっとだけ意外性がある。ハンドルを握る彼女の横顔はいつものほわほわした雰囲気から一転真面目で――とか。
たとえば、③と④の番外編。いつもは車で来るからアルコールを頼まない彼女が、今日はタクシーで来たという。カクテルを飲み、いざとなったら朝帰りしても大丈夫だという意思表示――だったり。
たとえば、①の応用。いつも同じ時間に通る、あの色の車。ナンバーも覚えてしまった。ある時コンビニに寄ったら、駐車場に同じ色、同じナンバーの車が――とか。
王道じゃないから少ない。それは確かでしょう。
だったら、王道にはできないことをやってみようじゃないか!
今回は「車通勤ヒロイン」ついて考えてみましたが、これはあらゆる「イレギュラーな設定」にも言えるのではないでしょうか。
王道じゃないからこそ出せる「うまみ」。
私自身も、研究を続けていきたいと思います。
お読みくださりありがとうございました
「ヒロインの通勤方法」について、皆様はいかがお考えでしょうか?
もしお気づきの点などございましたら教えていただけたら私自身の勉強にもなります。
(内容への反論や批判はご遠慮ください)