素敵な殺し屋紹介しましょうか?ーー私は今日も命令で生きるーー
殺し屋やってる兄妹のお話です!!以上!
最初の方の謎展開の上、キャラ崩壊。もう見るに見れない。
読んでくださりありがとうございます。
「素敵な殺し屋、紹介しましょうか?」
みなさん一度はこの言葉を聞いた事があるでしょう。
それは、ほんの少しでも本心から誰かを殺したいと思った瞬間に突然現れる、謎の男によって投げかけられる言葉です。そして渡される名刺に記載されている住所にいくと、先程の男の案内により何処かにつれていかれ、殺し屋との契約を行うようです。
『ですが、どういうことか契約が切れた瞬間、依頼主の記憶からこの件についての記憶が消えているんです。これ程の人智を超越した殺し屋【殺人遂行】への注目は今や日本全土ーーいえ、世界中によるものですよ』
『彼らは殺人鬼ですよ?』
『そうでした。あははっ』
画面の中で最近巷で噂の殺し屋についてアナウンサーが談笑する。まるで信じていないかのように面白おかしくフリップの解説をしていく。
悪魔だとか吸血鬼だとか、はたまた宇宙人と、どんどん可笑しくなっていく。ああ、今自分の目の前にこのアナウンサーがいれば、いや依頼があれば、この巫山戯たアナウンサーを殺せるのに。
重々しくため息をつく。依頼がーー命令が無ければ何も出来ない自分が恨めしい。
「ーなぁ!榛名は誰が一番好きなんだ?!」
「ちょっと!何どのアイドルが一番好き?みたいな感じで聞けるわね!!有名な殺し屋のメンバーを!!しかも真面目でクールなハルルにっ!!」
「別にいいだろ!!で、榛名は誰が好きなんだ?オレは血塗白兎!」
クラスメイトの舘脇剛に井波菫がどうでもいい会話をしている。まぁ、最後の最後だけはどうでもよくないけど。
因みに、榛名というのは私の事だ。榛名遙、はるが二つあって非常にややこしいが、これはこれで気に入っている。
そして、舘脇が言っていた血塗白兎というのは、例の殺し屋のメンバーの一人で、子供みたいな低い身長と、いつも白いうさ耳カチューシャを付けて返り血をよく浴びる殺し方をするから、血に塗れた白兎ーー血塗白兎と呼ばれている。(Wikipediaより参照)
他にも、殺し屋【殺人遂行】には早々たる殺人鬼がいる。
仮面道化は、仮面を常につけていて、魔法を使っているような原因不明な殺し方をするから、仮面を付けた道化師ーー仮面道化と呼ばれている。(Wikipediaより参照)
首斬人形は、眼帯とヘッドフォンを常に付けていることと、目が酷く冷めていて人形みたいで、その殺し方は例外なく首斬りということから、首斬りの人形ーー首斬人形と呼ばれている。(Wikipediaより参照)
蜘蛛地獄は、細身の全身を自由自在に動かし、ピアノ線と思われる強度の高い線で対象者を囲んで逃がさず絞め殺す事から、蜘蛛の巣のような地獄ーー蜘蛛地獄と呼ばれている。(Wikipediaより参照)
永久追跡は、直接手を下す訳ではないが、ありとあらゆる情報を操り、たとえ殺人鬼達から逃れられても、この最悪からは逃げられず、地の果てまで追いやられ殺されることから、永久の追跡者ーー永久追跡と呼ばれている。(Wikipediaより参照)
最後に、透明人幻は、滅多に現れず、フード付きケープを目深に被っていて姿は見えず、身じろぎ一つしないまま、見えない力か何かで一瞬にして対象者の命を奪うことから、透明の人の幻ーー透明人幻と呼ばれている。(Wikipediaより参照)
この六人が、最凶の殺し屋【殺人遂行】の殺人鬼と言われている。………が、それが真実かどうかはわからない。一般人ならば。
ただ黙々と考え事をする。周りを気にせずスマホをいじる。Wikipediaって凄いな。だいぶ正確だよ。まさかここまで呼び名とか設定(?)が広まっているとは。
そんな私の態度が気に入らないのか、舘脇は私の顔を覗き込みながら不服そうに再度聞いてくる。
「榛名はさぁー。結局誰が一番好きなわけー?好い加減言ってくれよー!」
「…好きとは、どのような意味の好きなんですか?好きにも様々な意味があるのですが」
正直鬱陶しいので適当に相手する。イヤみっぽく言ってみたが効果はあるのだろうか。引き下がってくれたらありがたいんだけど。
だが、そうは問屋が卸さない。舘脇は一切引き下がる様子を見せず、寧ろ食いついてきた。
「えっとな、ほら!えーと、あれだ!!あれ!アイドルグループとかのメンバーでどれが一番いいかとか、アイスとかでどの味が一番好きかとか、そーゆーやつ!!」
「……出来ればもう少し正確に言っていただきたかったんですが…」
「で、誰なんだ?!」
本当に煩わしい。好い加減諦めて欲しいな……。
そう思った事が顔に出そうで少し焦る。『いついかなる時も、相手に己の考えを知られてはいけない。勘繰られてもいけない。何があろうと、顔に出してはいけない。全てを内に留めておく。それこそがーー』
「……プロの殺し屋だ…」
「ん?なんか言ったか?」
しまった。昔あの人に言われた言葉を思い出し、そのままつい口にしてしまった。
誰かに聞かれていたら大変だ。変に勘繰られてしまうかもしれない。そしたら兄さん達に迷惑がかかってしまう。それだけは絶対に避けたい。私が迷惑をかけられる分には別に構わないが、兄さん達に迷惑をかけるのだけは嫌だ。
「殺し屋がなんだって?」
突然誰かが会話に入ってくる。女子生徒が王子と騒ぎ立て、キャーキャー言われている真中誠哉だ。
亜麻色の髪に蒼い瞳。端正に整っている顔は口角が上がっており、柔らかい笑みを浮かべている。それは、学校中の人達から王子と呼ばれるに相応しい面持ちだった。……偉そうに腰に手を当てていなければ良かったのに。まぁ、あまり興味ないけど。
「……何か用件があるなら手短に済ませてほしいのですが」
「いやいや、用件というか気になる話題だったからさ。あの殺し屋に関して何か知っている事があるなら教えてほしいからね」
「相変わらず地獄耳ですね。いっその事、首斬人形みたいにヘッドフォンを付けてみてはどうでしょうか」
「あはは。本当、君は面白いね。そうだね、今度付けてみようかな。で、何か知っているのかな?知ってるなら教えてほしいな」
「何度も言ってますが私は何も知りません。知っているといってもWikipediaに載っている以上の事なんて知りませんから」
「うーん。何度も聞いて悪いね。…俺も、早くあの殺人鬼集団を捕まえたいからね」
彼、真中誠哉は警視総監の息子で、【殺人遂行】の殺人鬼達の逮捕を滅茶苦茶頑張っているらしい。
その所為でこっちも仕事がやり辛い。まぁでも、Wikipediaにしか情報が載っていないから、さほど邪魔というわけでもない。実際、仕事の日時やらなんやらを突き止められた事は一度も無い。
流石は兄さんだ。情報管理が徹底している。
側では、今だに舘脇と井波さんがなんやかんやと言いあっている。
早々にここを立ち去りたいので、急いで教室を出る。人が行き交う廊下を歩きながら昇降口へと向かっていると、携帯が鳴り、誰かからの連絡を告げた。
「……渉から………また、高校まで来たんだ…」
そのメールの送り主の人物がいるであろう正門まで小走りでいく。
「ーあ、はるっ!」
メールの送り主ーー渉は、学ランに包まれた腕を大きく伸ばし、左右に振りながら私の名前を呼んだ。
「…渉、もう少し声の音量下げて。目立つから」
「はぁーい。なぁなぁそれよりさ、見てよはる、これ!新しいマジック考えたんだ!!仕事に使えるかなっ?」
嬉しそうに新しい芸当を見せてくる彼、榛名渉は私の血の繋がらない弟で、現在中学三年生で、双子の兄がいる人懐っこい楽観的な少年だ。
そして、殺人鬼ーー仮面道化本人だ。それこそ種も仕掛けもない超能力ようなやり方で、人を殺す殺人鬼。それが渉だ。
「……相変わらず凄いね。渉はすぐに新しいトリックを考えついて、それを実践に移せるなんて」
自信満々にマジックを披露している渉にそう言う。
すると渉は人懐っこい顔で笑った。
「はるのが凄いよ!だって一番確実に相手を殺せるじゃんっ、透明人幻の時のはる、俺すげー好きだもん!あ、普段のはるも勿論好きだかんなっ」
「……ありがとう」
そう、気づいている人もいるかもしれないが、私も【殺人遂行】の殺人鬼だ。透明人幻と呼ばれる殺人鬼は私、榛名遙だ。
それと、【殺人遂行】の殺人鬼は全員私達兄弟なのだ。
「でさー、殺した後の事なんだけど……」
帰路につき、並んで歩きながら次の仕事の事を話し合う。
次の仕事は今日の夜、私ーー透明人幻と渉ーー仮面道化の二人で行う事になっている。
今回の仕事は消費者金融会社の代表取締役、財部治朗及びその妻、財部直子の暗殺だ。依頼主は財部治朗の秘書の青森隆さんで、財部治朗に家族を殺されてその復讐をしたいらしい。
それで、本心から殺したいと願ったということでピエロに案内され、私達の元に来た。
私達に依頼した。あの二人を殺して欲しいーーと。
「……今日も、月が綺麗だといいね」
「ん?まぁ、そーだね。今日は晴れだから月が良く見えるってさ」
不思議そうに首を傾げながら渉は明るく言う。
ーー*ーー
深夜11時30分頃、私は、一人とあるビルの屋上に佇んでいた。
「……渉の言っていた通り、今夜も月は綺麗…」
私の頭上に広がる星空の中に王のように君臨する三日月は、ありえないくらいの輝きを放っていて、とても綺麗だった。それを見上げながら夜風に吹かれる。
そんな時、右耳に付けている超小型トランシーバーから声が聞こえてきた。
『あー、こちら渉。準備おっけーだぜ』
「……渉、静かにしなさい」
『あ、ごめん』
相変わらず、緊張感が皆無だな……。
それより、私にとってはとても重要な事がある。
仕事の開始は40分ちょうど。それ迄の残り数分間にやるべき事。
「ねぇ、渉」
『なーに?あ、もしかして愛の告白とか?』
「違うわよ。……お願い、渉。“命令”して」
『………何で?お願いじゃ駄目なわけ?』
「今更でしょ……私は、自分じゃ何も出来ないから」
『わかったよ…でも、俺は命令とかヤダだから』
苛立ちのような拗ねのような感情を孕ませたその言葉は、私の望んだモノでは無かった。
結局命令してくれなかった。どうしよう。命令してもらわないと、私は実力の半分も出せない。自分一人では、何も出来ない。
そう考えていた時、
『ーーハルちゃんわーちゃん、準備出来た?』
左耳のもう一つの超小型トランシーバーから、大人っぽい落ち着いた柔らかい声が聞こえてくる。
「出来てるよ。司兄さん」
『俺もできてるぜー、つかにい』
それに答えると、私と同時に渉も返事をした。
『はいはい。それじゃあ、今日の段取りをもう一度確認ーー…』
私は目を閉じて、左耳から聞こえてくる声に神経を研ぎ澄ます。
『さて、そろそろ時間だよ』
『はぁーい』
それの後は渉も本格的に気合いを入れたようで、右耳からは何も聞こえなくなった。
私も、ちゃんとしないと……。
「…司兄さん……お願い」
はぁ、と左耳から小さいため息のような声が微かに聞こえた。
後、1分ーー
『……俺も、親愛なる妹にあまり命令とかしたくないんだけどな』
「…………」
後、30秒ーー
頭の中でカウントを刻む。一秒、また一秒と時間は過ぎてゆく。
『ーハルちゃん、命令だよ。仕事を完遂して』
ーーゼロ。
「了解」
次の日の朝、ニュースの報道で消費者金融会社の代表取締役とその妻が殺害されたと報じられた。
またもや【殺人遂行】の仕業だと、ネット上で話題になっている。警察もまた捜査が難航しているらしい。
「あー!ヤバい!!俺寝坊したぁああああ!?」
「…大丈夫だよ渉。学校、まだ間に合うよ」
「マジで?サンキュー、薫!よかったぁ…」
「…うん」
渉と、その双子の兄の薫が急いで朝ごはんを食べながら会話している。
その内容から推測…………しなくても分かるように、渉は寝坊をしたらしい。
昨日の夜、私と渉は仕事があって、さほど寝ていない。まぁ、睡眠時間などとるに足らないものだけど。
「…それじゃあ、学校行ってくるから」
そう言って食事の席を立つ。
学校に行っている間、私はただの女子高生ーー榛名遙でいる。そういう“命令”だ。
だから私は、大人しく高校に行き、普通の女子高生としている。
私のすべてはーー兄さん達の“命令”だから。
いやー、うん。何か本当すいません。
暇だったら連載でやるかも………しれなくもないですので、そちらも出来ればみていただければ。
読んでくださりありがとうございます。