たりない【10/3修正】
「東の果てに巨乳のレーナちゃんで、西はちっぱいばっかりだけどテクニシャン?」
「ばかな、ボロい宿には専属がツイてるだと!?」
それぞれ聞いてる話は違うが似たようなもんだ。アランが驚愕してるほうがビックリだ。
まあ、オレは15になってないけど、皆16才だから行ける場所だよね。
一年後には行けるかも知れないから記憶しておくけど、居心地悪い。
「あのさ、とりあえず帰らないか?」
空も暗くなったし、そろそろ帰らないと…。
シチューはうまかった。上に乗った肉はホロホロしてたし、最後にパンで拭ったからお皿はピカピカだ。
「いや、あそこの話が今いい所だから、もう少しだけ時間をくれ」
腰を浮かせようとしたら、隣のマイトが肩を掴みある一団をこっそり指さした。
割と身ぎれいにしてる年食った冒険者の集まりだね。
穴熊に来る人達と違って景気良さそう。
『んでよ、ジュリアの奴がよ。後二回くらい大丈夫ならなんていうからよ…』
『マジかよ。ジュリアちゃんとこか?お前も通いすぎだろ』
『ちげーよ、ジュリアが俺を呼びつけるんから仕方なくいってんだよ』
『ばか、いくらジュリアちゃんとこったって買い替えが早くなるだけじゃねぇか?』
なんか、一際でかい声で話してるけど、鍛冶屋さんの話らしいです。
行き着けの鍛冶屋さんらしいですが、ピカピカに磨いてくれるらしいね。
現にその男性が見せている剣の刀身はオイルランプの明かりを鏡のように反射している。
「どうやら、腕のいい職人みたいだが、武器の使い方にも厳しいみたいだ」
アランが難しい顔で二人に話しかける。
「一度訪ねてみるか?」
「魔族戦からそのままだし明日いってみるか」
「サランにもレイピアかサーベルくらいは必要だし行ってみよう」
「門前払いされなきゃいいけどな~」
「もし、そしたら他で探してみればいい」
人の悪い鍛冶屋というのはどこの街にもいるもので、流れの冒険者や初見の相手だと、刃を研がないまま渡して冒険者を試す人や、中には普通に手を抜いてごまかす人もいるそうだ。
鍛冶屋は“冒険者の試し”だと言い張るが、街を出てから困るんだとさ。
近所からは腕がいいとか評判の悪くない人ほどやるそうなので、快く受けてくれる人を探した方がいいね。
武器屋や鍛冶屋にある新品の刃物は最終的な仕上げ研ぎを終えてない物しかおいてないって話だから、新品は研ぎに出してから受け取るものなのだが、新人はよく解らずにそのまま持ち帰って翌日に店頭で大騒ぎする風物詩がある。
研いでなければただの鈍器だ。
オレ?オレも昔持ち帰ってから気付いてさ、仕方ないから川で砥石になる石を探して自分で磨いたよ。
田舎だと、鎌だの包丁だの子供に研かせるから、基本的なやり方くらいは知ってたからね。
で、研きが自分で出来るから、武器の表面的な損耗に気づけなくて、売るときには二千Gにしかならなかった。
元値は五万したんだけどね…。
今日も八万Gで、昨日と今日の収益で、三万Gももらっちゃった。
投げナイフ二本になっちゃったし、新しいナイフ買えないだろか。
鍛冶屋さんだと、場合によっては長持ちするように焼き入れとか鉄を追加したりしてくれるから中古でも武器の強度はからわないそうだが、素人だと刃はピカピカにできるけどだんだんと鋼部分がへるから薄く細くなる。
草刈るだけの鎌なら問題ないけど、武器は本職に任せないとダメって事だね。
とりあえず、今日はお開きって事で~。
「エロい話ししかしてないから帰ろうよ…」
「「「……くっ」」」
悔しそうだなー。
お金入ったんだから、堂々と行ってくればスッキリするんじゃないかの?
▼夜間警備▼
「サラン、ライズが風呂沸かしたから先はいr…」
「え、いいよ。どうせ明日は休みなんだろ?」
帰宅して足を拭いてたらマイトが階段下から顔をのぞかせ、慌てて階段下に下がっていった。
「…すまない」
階段下から謝罪してきたけど、足拭いてただけで半裸でもないよ。
帰宅してすぐに事務のオバサンから貰った服にテキトーに着替えたから、シャツに短パンだから気にする必要ないけどな?
にしても、二階まではちゃんと階段してるんだけど、三階から屋根裏までハシゴが通してあるだけで、ハシゴと部屋を仕切る壁とかないのはちょっと不便だね。
「あのさ、昨日全部見られたくさいのに、今更足見られたらくらいでさわぎゃせんて」
はてさて、昨日はどこまで見られたんだろうねぇ?
「スミマセン…」
「で、なんで今日もお風呂沸かしたんだ?」
薪とか燃料かかるのに、またお風呂沸かすとかもったいなくないかな。
「…いや、普通は毎日入るもんだよ?」
「いや普通言われても、オレの予定になかったけど…」
だから足拭いて終わった気でいたんだけど?
「ウサギ狩りまくったんだから入った方がいいよ?」
「アタッカー二人に比べおれほとんど動いてないし、血も浴びてないもん」
「そうでなくても汗かいたろ」
「拭いちゃったし…」
「…とにかく風呂入って?」
帰宅してから、着替える時にタオルで体を拭ったし、毛皮を敷いて横になるだけの予定だったのに。
「それに、ライズが魔法で水を温めただけだから気にせず入って下さい」
「わかったけど、入口に誰かしらいてくれないと風呂なんか無理だよ?」
三人が、階段下から来ることは心配してないけど、他人はどんなのが居るかわからないからね。
だってさ、この家の入口に内側の鍵がないんだもん。
外には、錠前付けられるようになってるけど内側にないから、入り放題なんだよ。
前の住人なら要らないんだろうけど、色々欠陥がある気がするよね。
( ̄イ ̄)じゅるり