▼狩りと武器(合流二日【10/3修正】
この、城塞都市サンデックはサンデック伯爵領の中心であり、四国ほどの大きさのサラマンドラ王国の南西の海岸沿いに位置している。
魔物や険しい山道などで王都までは半月くらいかかるらしい。
外敵から街を守るために四方をレンガと土の壁で覆った城塞都市サンデックだが、街の中心地は外壁よりも強固な壁で覆われている。その内側には古い時代にの迷宮ある。
半世紀ほど前の魔王軍との戦争中に、魔王軍に利用されないよう聖人が封印したとかで現在は迷宮の入口に神殿が建てられていると言う。
一般人の目に触れる物ではないし真偽の程は定かではないが、神官や騎士とかが迷宮内部に出入りしてるなんて噂もある。
地方ながら冒険者が集まる中継地として栄えているのはそうした、冒険者が集まるだけの過去があるからで、ギルドが意外と大きな建物なのも、今では不要に思われている倉庫街が存在するのもその時代の名残らしい。
王都が内陸にあるのも、迷宮が存在しているかららしいんだけど、一般的な冒険者は立ち入りが許されていない。
まぁ、現代は迷宮に頼らなくても生きていられる時代だから、封印せずに迷宮内部の枯渇を待っているのだと言う。
長く使うと、魔物達が日に日に強化されてゆき、迷宮内部から外へ溢れ出るスタンピートが発生しやすくなるらしい。
逆にだれも入らないでいると、攻略が楽になるんだそうだ。
売れてる時は値上がりするが、客が来なくなると安売りする商店街みたいなものらし。
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冒険の基本は、金と命を天秤にかけ、命を大事にできる事。
身に余る依頼に失敗すると借金で奴隷落ちする事もあるから要注意だ。
「盛り場の話しでは、ゴブリンなんかは街の南側は入ってこないが、視界が開けているから狩りには向かないって話してたんだけどなっ!?《スタン》」
「よしきたっ!」
「………」
こちらから見えていると言うことは向こうからも見えていると、それでも近づいてくるのがいるとしたら、自分達の総合力が相手より強いと判断した事になる。
オーケーわかるだろうか、囲まれたって訳さ。
「昨日に続いて今日までも!?」
ビッタンビッタンと茶色の絨毯が迫ってくる。
「一角ウサギだけしかいないのが救いだけど、この数は流石にキツい!」
「バカマイト!毛皮が取れなくなるから両断するな。頭だけ狙え」
「そんな事考えてる余裕あるかっ!」
アランはブッスブッスと槍を突き刺し、マイトがバッサバッサと二等分に切り裂いてゆく。
だが、一角ウサギとは…。
「みんな、一角ウサギと角ウサギの素材は肉のみで、首だけ外した状態で一匹五百Gポッキリさっ!」
「「安っ!?」」
「…りょ」
大事に扱おうとしていた三人から、更に丁寧さが消えた。
「くそ、キリがないな」
「どうせ肉だけなら、景気よく範囲魔法つかっちゃうか?」
「……」
マイトが毒づきライズが思い切った作戦を提案し二人が肯定する。
「だけど、ギルドだと丸さら一匹か首なしのウサギしか買い取りしてないから気をつけて?!」
そう、少しでも胴体に傷があると買い取りキャンセルされてしまうのだ。
「買い取りが安いくせに状態に厳しいだと!?」
マイトのペースがガクンと落ちたのは気のせいではなく、飛んでくるウサギの首だけを切り落としといく。
だが次のウサギは返す刀でそのまま両断された。
可能なもだけでも首を狙う方向に切り替わったらしい。
「普段は警戒心なくのんびり行動してるから、子供がお使いで狩りにきたりするくらいだし、弓でじっくり狙えるんだよ!」
「なるほど、安い理由はそれでか!」
大量に存在し誰でも狩れる肉だから買い取りが厳しくなる訳だね。
話す間にも無駄な肉が大量生産されていくよ。
「全部含めて五百もならない《スタン》クソウサギがあああっ!《スタン》」
ライズの足止めの魔法範囲内のウサギが立ち止まったが、後続の中には止まった仲間をかわせずに背後からブッスリと角が刺さったりしていた。
本体と鋭利な角の長さが同じだから、急な方向転換とか出来ないのだよ。
動けなくなったウサギを貫いたウサギの動きは刺さった仲間の重さで動けなくなり、更に後ろから来たウサギ達が動きの鈍ったウサギ達に突撃してゆく。
ドミノ式に増えていく串ウサギ。
「おおおおおっ!?」
「ナイスだ抜け出したのは任せろ!」
「…………」
密集地であるほどウサギの数が減っいく、そこで二人に多少の余裕が出来たらしく飛び越えてきたウサギは首から上が、とされていく。
「二人ともスゴい!」
積み上げられていくウサギの山と撃ちもらしなく二人に思わず声をあげた。
「角ウサギは、自分と同じくらいの障害物があると必ず体当たりしにいくから、その習性を利用してるんだから、スタンを使ってるオレも凄いと思って欲しいねっ!」
ライズが自己主張を始めたが、オレ見てるだけしかできないからどっちもスゴいと思ってる。
「ライズも凄いよ!《スタン》って連発する魔法じゃないだろ!」
「スタンピートじゃ常套手段だよ。普通はウサギに襲われるなんてないけど、やってみたら上手くいっただけ!」
誉めたら照れて謙遜し始めた。
この人扱い難しいよ。
でも、素人目でも三人の腕が普通冒険者と一線を画すのがわかるほど強い。
オレくらいの腕前が4人なら、とっくの昔に埋もれてる。
いや、とっくの昔に逃げ出してるからソレもないか?
「サランまだ来てるか?!」
「遠くの方からは来てないみたいで、この周りにいるので最後じゃないかな!」
いやね、武器の投げナイフはもう全部投げちゃたしウサギの死体の下に入り込んでわからないから出来る事ない。
しかも、一角ウサギは毛皮は強度がないので、素材としての価値は皆無。食肉としての価値しかない。
毛皮をはがないで遠火で時間をかけて丸焼きにするのが一般的だ。
切り飛ばされた頭の角は鋭いが重さがなくて武器には加工されないから純粋に食肉になるだけだ。
毛皮を剥いで素材にしても、狼の牙も防げない柔軟性、しかし熱に対する無類の耐性があり、毛を剃ってウィンナーの皮みたいに肉汁を逃がさない“優秀な包み”として直火で焼かれるのが一般的だ。
なんせ、一角ウサギも魔物である。
普通の薪の火であるならば肉ごと丸焦げなんて事にはならないそうだ。
焼かれた皮は、クニクニしているので、酒のツマミにする人もいるそうだけど、丸々一匹分をクニクニしながら食べるような強靭な顎をした人も少ないので、皮の部分はほとんど捨ててしまう。
本体の調理する時は、腹を割かずに内臓を上(喉)から引き抜いてしまい、変わりに塩や香草を押し込むだけの見た目豪快な料理になる。
皮の内側は脂肪の層があり、皮が熱されると脂肪が溶け出し肉と皮は剥離する。
最後に皮を切り裂くいて器にしたり、身を引き抜いて切り分けたりする訳だ。
肉そのものの脂肪が少なく淡泊な味。
素焼きだとほとんど味がしないが、腐敗が遅く乾燥しやすいので、市場にある安い干し肉の原料は、はだいたいコイツが使われていたりする。
「サラン、頭は放置で首から下のいい状態のだけ集めといて!魔法袋に余裕があったら他のも仕舞うからっ!」
「はいっ!」
かなり、大きい魔法袋を持ってるらしいんだけど、それでも一匹につき三キロから五キロありそう。
ウサギの山を分別しても60匹くらいは大丈夫そうだ。あるとして、それだけでも三百キロあるな。
「アラン、マイト残り少なくなってきたから、売るもんがなくならないように、二三回でスタンはやめるぞ!」
自信の角と仲間の角で歪に連結されたミンチ肉を指差したライズが叫ぶ。
「わかった!」
「…りょ…」
まだ、百やそこらいそうだけど、スタン一回で6匹くらいは追突してくし、アタッカー二人の腕前なら時間の問題か?
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「売れそうなのは、三分の一くらいだから、加工用にして他やめよるか…」
「王都みたいにスラムがあれば、叩き売りで二三文にはなるんだけどな」
「調理が変わるだけで、食肉としての価値がない訳じゃないんだけど、肉屋が買い取りしてくれないらしいよ?」
食べるに困らないから、ウサギなんて胴体しか買い取ってくんないんだよね。
まぁ、最初にきたウサギの数が多すぎてみんな凪払って状態を見向きもできなかったくらいだからね。
…でもさ、匂いじゃなかったみたいだからどうしようか?
ウサギまで突撃してくるとは、思わなかったよ。
※地球にいるウサギの性欲は、実はゴブリン以上だとの噂です。
本気で丸一日盛ってるそうな。