サラ
私たちが皿洗いをしてる間にも、騎士団は続々と防衛拠点に向け進軍しているのだから貢献しても損はないと思う。
悲壮感は薄れ、街に活気が戻りいつも通りの生活に戻ってるからね。
「他の冒険者だって裏方に来てるんだし、マイトとライズも野菜の皮むきしてるんだからいいじゃない」
「しかしな、前線に出ていた方が色々稼げるんだぞ?」
確かに前線なら金も名誉もギルドの信頼も稼げるんだろうけどね。
「でも、前線に採用されてるのって評価C以上のパーティーばっかだから仕方がないでしょ」
「もう少し時期がズレていてくれたら良かったんだがなぁ」
「それでも、今みたいに毎日ギルドの依頼を受けてればランクあげてもらいやすくなるんだろ?」
「何もしていないよりいいのは確かだが、いつになったら私たちはサラと冒険が出来るんだ。パーティーを組んで冒険を出来ないのはサラもつまらなくはないか?」
「冒険に明け暮れるのもいいと思うけど、まだ先は長いって話してたんだから、別れる時の思い出話にするには丁度いいじゃない」
この辺りの魔物って、アベレージが低くないから私みたいのにはちょっと厳しいんだけど、成人男性の冒険者なら大概タイマンで勝てるくらいの魔物ばかりで、極端に強い魔物もいないから狩りだけしてたらゴブリンみたいに数の多さを語るしか無くなるかもよ?
「魔の森の奥に行けば生態系が変わるだろ」
確かに、イノシシとかクマみたいな魔物になるから、冒す危険の冒険にはなるね。
「皆が目立ちたい時に、裏方に回る方が周りの評価高くなるらしいから頑張って?」
「適当な事言ってないか?」
いいえ!マスターがそう話してました。
「たとえ光を浴びない立場にいたとしても、その時必要な事を裏から支えられる事の出来る人間は誰より強いとマスターが言ってたから間違いないよ」
「だからと言って、皿洗いでなくともいいのでは?」
「だー。後は、荷車のベコやらンマの糞尿の処理とか洗濯しかねーべさ。ボロ(糞)集めた後に飯なんざ食われねーだろ」
「…実家の馬はよく世話してたが、糞は誰かが掃除してたな。いや、雑用しかないのか?」
「騎士団が来てるのに?」
いくら冒険者が地域(魔物)の掃除係だっても、ここで動かなかったら何のための騎士団様よって話しでしょ?
「アーリーウッドの災害からオレ達市民を守ってくれるってんだから気分よくやって貰えるようにしてやらんでいかがする?」
ま、アランが騎士団様で貴族で、本来なら騎士団と共に市民を守る側の立場にナルのかも知れないからその考え方を否定する訳じゃない。
だって、私たちも、もしかしたら街に残した予備戦力に加算されてるかも知れないよ?
迎撃は騎士団に任せてるけど、偵察とか伝令は冒険者に委託されてるでしょ。その人らが手が足りないとかの時に万が一に備えて万全の体制で居れば、必要なら呼ばれるんだから今は楽して稼ごうよ?
「なんかサラの本音が垣間見えた気がする」
「さあ、キリキリ働くよ?」
「わかった。わかったから、そう急かすな。」
キュッキュキュッキュ
「まったく、わざわざ懐に飛び込まなくても、他の依頼を受けている方がサラにとっても気が楽だと思うんだがな?」
「楽じゃないよ!?」
今、大型種中心の食料調達と効果の高い薬品素材を確保する依頼ばかりしかないでしょ。
「だから、キャラバンの護衛依頼もあるだろ、あれにを受注してしまえば、此処からサラを遠ざけられる名目も立つと思うのだがな」
「…んな、まだ始まったばかりなんだからあの人らが他の事気にする余裕ないでしょ?」
「貴族にとって並列思考は標準装備だ。パーティーで和やかな挨拶を交わしながら互いの腹を探り合い、その実昨日出会った・抱いた女・男の事ばかりに気を取られてるなんて当たり前の世界だぞ」
「そんなダメ男の当たり前を引き合いに出さないで!?」
アランは私に出会った貴族を片っ端から胡乱な目で見て歩かせたいのですか ?
「笑ってても他の事を考えてるのが普通だ。王族だともっとたくさんの事を一度に考えててもおかしくないではないか」
まあ、確かにわかりませんけど確実に言える事は一つだけある。
「それはいいから、話してる間もアラン手を動かすようにしてください」
「はい、すいません」
渋々と止めていた手を動かすアラン。
―サラのせいで皿が足りないなんて言われたら最悪でしょ?
( ̄人 ̄)しばれるに




