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【二】宵闇と陽光

朝である。


物音と語るには大きい音に目を覚ますと、起き抜けに目にしたライズの手足はコレやばくね?ってくらい震えていた。


アルコール中毒?いや木の破片を掴んでいるからハシゴの一部が壊れて床に落下してきたらしい。


白目をむいたライズの気持ち悪さにオレの不可思議な叫びが木霊した。


“き…わっきゃ?”とか悲鳴に疑問符がついたのは、叫び声に対して遅ればせながら理性が勝った結果、叫ぶ事に失敗したらしい。


勝ったか負けたかは聞いたものの判断に任せる。


オレの中では、辛勝と言った所か…。


とにかく、キモかった。

下呂の揮発からなにからライズはロクな事をしない。


…確かにバカだ。


ライズは生きてる事がバカなんだね?


▼下げ▼


冒険者ギルドの広間は、手持ち無沙汰の冒険者で溢れていた。

依頼が剥がされた掲示板を意味もなく見つめる者や、苦情をいいにきたらしき冒険者がギルドの強面受付丈に裏口に連れてかれたりテーブルに座ってカードゲームをする男達やら、なかなかにカオスな空間になっていた。


そして、昔食堂今酒場のバイト先で、何度となく見たことある冒険者達がオレ達のいる入口を睨みつけている。


オレらが来た時は笑いながら話をしてたんだけど、オレと三人を交互に数回見た後、彼らの態度が豹変した。


某女装ウェイトレスが冒険者の中に居るからだと思われます。

ギルドマスターは、男だった過去は漏らさないなんて話してたけど、どこかから漏れて、騙されたと恨まれてるのかも知れない。

生きる為とはいえ、女装して騙くらかしてたから弁明の余地はない。


パーティー登録の為にギルドにきたけど、彼らの目つきが怖くて今すぐにこの場から逃げ去りたい。


「サランは、随分気に入れられていたみたいだな、受付の順番待ちは私だけで大丈夫だ」


気づいたらしいアランが嘆息しながら受付窓口の列にならんだ。


「だから、サラは俺らと待機だって」


「うぃ」


アランについてこうとしたら、肩にマイトに手がかかり引っ張られたので静かに従う。


大衆にガン見されつつも手近な椅子にオレだけ座らされた。


「…何でわざわざ座らせた」


「あのまま立たせといたら何か言われそうで嫌だった」


ガン見倶楽部様からですか?


「男の嫉妬は醜いだけなんだけど、なかなかねー」


「穴熊の常連さんかなんかだろうけど、なかなか根が深いね」


「うぃ」


「“うぃ”じゃないぞー」


「その“うぃ”は棄却します」


なにがなかなかなのか解らないけどとりあえず相槌を打っておいたら適当過ぎたか怒られた。

「…とりあえず、“サラ”を恨んでる訳じゃないみたいだから大丈夫だよ」


『サラちゃんを賭けて勝負しろ優男っ!』


『そうだ!俺たちにだってサラちゃんとパーティー組む権利はあるんだ』


『うるさい、黙ってろ気が散るだろうが』


「そーそー、サランとパーティーを組んだ俺らを羨ましがってるだけだから大丈夫だね」


いえ、あそこで今申請してる所が揉めてる最中で、ガン見倶楽部の面々に詰め寄られてるのに、アランの身体はビクとも動かない。

どんな鍛えかたしたらそうなるのか不思議ー。


「申請は終わった。登録証の発行を待つだけだ」


『頼む、今の申請を止めてくれ姐さん!』


『サラちゃんが、イケメンに騙される前に!』


『せめて決闘の許可をおっ!』


『せっかく仲間が出来た子に横槍なんて入れてんじゃないよ!』


淡々と手続きをする事務のおばちゃんと外野との問答がしばらく続いていた。


「…無事に申請はできたが、プレートの作成に時間がかかるらしい」


さっき“大きなカブ”みたいな感じになってたのは気のせいでしょうか?普通は全然無事じゃ済まない状況でしたが、あの状態を無事と申しますかお兄さん。


「特に妨害された訳じゃないんだ、何もされてないなら無事だろう。

王都だと刃物か魔法で来るからな、こっちみたいに口で罵倒されるくらいならいくらされても平気だ」


だから、王都はどんだけ無法地帯なんだ?


「王都は競争が激しいって話したろう?」


「依頼者の商人に気に入られて冒険者から、商人の私兵に引き抜かれる奴も沢山いるんだから、見た目を揃える位は普通にあるよ」


「そう言うのが、冒険者に戻っても仲間に入れてもらえないけどね」


商人に引き抜きされてった冒険者はハブられるメモメモ。


「だいたい、見た目だけで引き抜かれるのは大した事無いから愛人にでも収まらない限りすぐクビになるんだよ」


「…いや、それは引き抜きって女だけ?」


「中には男の愛人を囲う奴も居るらしいが、多分女商人だろう」


「ババアかババアだろうけどな」


「こっちじゃ引き抜きなんかないから、サラは気にしなくていいと思うよ」


「いや、王都からの行商なんか普通に来るんだけど?」


年に何回も来てるけど、そんな綺麗な冒険者見たときないぞ。

「莫迦だな、綺麗なのは商人が手元に置いときたいにに決まってるだろ」


「そそ、美人に囲まれたい人がなんでわざわざ手放すのさ」



「それに、地方に行くような王都の商人は、雇われか小さい商会くらいだから引き抜きするほど余裕はないだろうな」


「そんじゃ、こっちくる有名な商会は、まだ規模が小さいと?」


かなり大規模な馬車が隊列組んでくるんだけどあれが小さいのか?


「まぁ、小さいなどとは言わないが、大きな商会に所属するほど地方に来たがらないから、名前を借りて下請けとして輸送を生業にしてる商会も沢山あるが、…商会に美人が混じってても地方の男とは特に何もしないと思うぞ」


「…それもそうか」


美女とオレとのラブロマンスはない。ならもういいか。


「おい、いま明らかに興味を失っただろ」


そんな事はございませんが、

言葉に出さずに笑顔で返す。


―事務のおばちゃんが、サランなら笑っときゃ誤魔化せるって言ったし。


「なに期待してたか分かり易いな」


都会の美女との出会いに憧れるのは仕方ないじゃないか。


話題が変わらない、マイトとライズも全く効いてないじゃんかオバン。


( ̄人 ̄)手のひらを返す

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