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マイト【10/5修正】

宵闇を切り裂く、うら若き女子の叫び声に身を起こした。


「共同トイレからだな。サランの予想が当たったか?」


「違うといいんだけどな


僕とアランは顔を見合わせ苦笑する。


サランにはあまり考えたく事だろうが、汚水の匂いに目を瞑れば、密偵や盗人にとって地下は人目につかない優秀な移動手段の一つだからだ。



「さて、どうするか」


「どうすもこうするも、まず服を着ろ」


至極まじめな顔で、ズボンからギャランドゥーを覗かせているアランを人前に出せばこの界隈に居られなくなる。


「いや、行かなくてもいいかもしれないからな」

昼間でさえ静かな通路だが、結構な数の住人が便所の方に駆け抜けていったようだ。


正義感あふれる若い兵士とか若い冒険者と野次馬が行ったんだろう。


僕らが動いても大した用はないだろうとわかってはいるが、様子くらいは見に行くべきだ。


近所づきあいがあるわけでもないから、何かあった時にわからないからね。


『《ライト》』


うす暗かった部屋が明るくなった、ライズも屋根裏から降りてくるようだ。


『サラン、ちょっと起きて?サラーン?』



「ほっぺ叩いても起きないサランにはちょっと危機感が足りない…」


「いや、わかるけどさ」


ものと一つしない、三階の主はライズが軽く叩いた位では目を覚まさなかったようでライズの眉間にシワがよっていた。


「とりあえず、全員で出る必要はないだろうから私一人で行ってくる」



なぜか、冒険中にも着けていない赤マントと白銀フル装備になったアランが階段を降りていったが、様子を見に行くだけでそこまでするか?


帰ってきたアランに問うてみたら「貴族らしい姿をしているとまわりの対応が丁寧になる」と話したが、フルフェイスの鎧一式のそれで丁寧語を話されるのは、周りが鎧を怖れてるんだと思う。


王城とか貴族の集まる場所の近くならまだしも、こんな暗い路地裏では絶対にすれ違いたくない人種ではないだろうか。

それで、結局あの悲鳴は女性が何かをされたのではなく、用を足しに行ったトイレを開けたタイミングで何者かがトイレの下を高速で通り過ぎたのだと言う。


溝鼠や小動物ではないようなので、後日この辺りの下水道の中を調査させる話で落ち着いたらしい。


下水の中を動き回れる体の小さい冒険者となると限られるけど、らしさはないが今のサランは体が女の子だから、流石にサランの指名依頼にされたりしないと思う。


しかし、以前連れられていった食堂で給仕をしていた“彼女”は生き生きとしていたな。

あれが女装した男のサランだったなんて今でも信じられない。いや、サランに会ったのが女の子になってからだし、男としてのサランに直接会ってないからアレが男の時代があった事が信じられない。


普段の言動や一人称はたしかに男の子っぽいが、それはあくまで“ポイ”だ。

王都にいた女冒険者の方が粗雑で男らしかったりする。


僕ら三人は、見た目がいい方だと思うが、あの時の男に見えなかったサランを知らなかったら、サランと今日のような軽口を叩きあう余裕はなかったかもしれない。


村の幼なじみの女は所謂ビッチだったけど、僕にとって理想的な、サバサバして頼りない女の子と時々ふざけ会ったり出来ているのは正直嬉しい。


都会の女の子みたいに不自然にくっ付いてこないし、此方から触ってもそんなに怒っていなかった。


もしかして、この距離感を維持して行けばいつか互いに支え合っていけるようになるのだろうか。


嫌われたくないから強くはでれないけど…。


ピッチに裏切られてからちょっと女の子に対して不信感しかなかったけど大丈夫、こうしてサランがいてくれた


―僕はノーマルだ。


きっと大丈夫。

(―人―)心頭滅却すればオトコもオンナ

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